第42話 たった一日で気が狂ってしまいそうな目に遭っていることに不条理を感じるのはおかしくないよな?。




「あのー……ただ頼むだけですと申し訳ないので……契約でもしませんか?」


 沙耶が出されたお菓子を食べ終わるのをボーっと待っていたところ、そんなことを言われた。

 何? 契約?

 またよく分からないことになるかもだしな……

 やめといた方がいいかもな。


「契約することにデメリットはないハズですよ。私と契約しても精々加護持ちになるくらいですから。加護持ちのあなたなら特に何かが鳴り響く心配はないと思いますがいかがでしょうか」


 ……そうかな?

 それなら別にいいけど……

 契約のメリットってなんだろう。


[精霊や魔物、悪魔や天使などと契約するメリットは複数あります。第一に召喚時に必要な魔力が絆レベルによって軽減されます。第二に召喚時の詠唱が不要になり、契約した対象の個体名を呼ぶだけでの召喚が可能になります。第三に契約した対象の常時召喚が可能になります。そして最後に召喚に代償が必要な対象と契約した場合、必要となる代償が限りなく軽くなります。例えば、代償に生贄が必要な場合、生贄の髪の毛や皮脂などで済むようになります。以上四点が契約するメリットとして挙げられます。]


 髪の毛の次に皮脂とか言われたら不快になるからやめて欲しいのですが?

 あと、うっs……


[スキル『常時召喚』、『生贄サクリファイス』を獲得しました。]


 連携コンポという攻撃で俺を苦しめるのやめてくれません?

 それ、いつもより苦痛だから。何? 俺を殺したいの?

 普通に殺気を感じてしまうのは気のせい?

 俺は別に殺されるようなことしてないのに……理不尽だ。


[スキル『連携レベル1』、『連携攻撃レベル1』、『殺気察知レベル1』、『殺気レベル1』を獲得しました。]


 ……はあー。


「……習くん、あれこれ考えずに契約したら? 私も精霊と契約してるんだしさ! ね! になろ!?」


 沙耶が言うと心配になってくる。

 本当に大丈夫か?

 大丈夫じゃない感がすごい。

 本当に大丈夫なんだろうな? な?


「私が保証しましょう。もし契約すると決めたなら手を出してください。契約しないと決めたのであればその限りではないですが……」


 なんか落ち込んでる?

 あ……俺普通に嫌がってたもんな。

 ごめんなさい。

 本当に害はないみたいだし別に良いよな。

 ……それなら契約しようか。


「分かりました。契約させてください。」


 そう言って俺はウンディーネ様? さん? の前で手を差し出した。


[システムメッセージです。『四大精霊:水精霊ウンディーネ』と個体名:鈴村習の契約が完了しました。]


 確かに、俺が嫌な通知と叡智は鳴らなかった。

 やっぱりウンディーネさんは信用もできるっぽい。

 まるで叡智ポンコツとは大違いの有能で、気遣いもできると、交換してくれないか?


「あはは……」


 あ、すみません。

 つい本音が……いや心のなかでだけどね!?


「別に構いませんよ。全然気にしてないので」


 沙耶とも交換して欲しい。

 もういっそ全部ウンディーネさんで良い気がしてきた。

 チェンジで!

 って変わらないよな。中々に不条理さを感じた。


「ありがとうございます。それでは帰りますね……沙耶ぁ〜帰るぞ。もう多分朝だろ? 早めに戻って寝よう。」


「そうだね〜〜饗してくれて本当にありがとうございましたー!」


 敬語もぎこちない。

 まあ沙耶だし。敬語が使えただけで驚きだ。


「それではこれで失礼します。本当に何から何までありがとうございました。」


 まあ、死にかけた原因だから少しの恨みはあるけど。

 でも饗してくれたことには変わらないし、迷惑をかけたのも事実だ。

 むしろ俺をイジメる気が無かったってだけでありがたいくらいだ。あれ? 俺感覚鈍ってるな……


 そうして俺達はそれぞれの家に帰った。

 転移魔法で。……感覚がバグりそうだ。

 

 いや、ね?

 だってよく考えたら転移とか頭おかしいじゃんか。

 あらゆる交通手段を考えてもコスパが良すぎる。

 何より無駄にエフェクトがでかい。


[スキル『特殊演出レベル1』を獲得しました。]


 珍しく空気だけは読めてるって思ってたのに。

 通知はやっぱり空気は読めないらしい。

 俺を苦労させる気が見え見えでしょうがない。

 やっぱりウンディーネさんとチェンジして欲しい。

 そうしたら絶対に生活が楽なのに。


 コイツらのせいで余計な苦労ばっかなんだよ。

 だって今日一日だけでどうかしてしまいそうだったし。

 断言できる。気が狂いそうだったと。

 これは不条理といっても過言ではないし、むしろそれより悪いくらいだ。

 どうして俺はこんな目に……そんなこと考える暇があったら休むか。


 ……着替えて寝よう。これ以外にやりたいことないし。

 どちらかといえば、めちゃくちゃ疲れてそれ以外にやる気が起きないのが正解か。

 ともかく俺は寝る。決定事項だ。


 あ、でも帰ってきてから体洗って無いじゃんか。

 このまま寝るのはちょっと嫌だな……そうじゃん!

 スキル使えばいいだけだったわ。

 こういうときの為のスキルだったんだな。

 実用性があって何よりだ。



 ……って俺スキルに毒されてきてるじゃん。

 もしかしたら感覚バグり散らかしてるのでは?

 まあ、今入ってるの見られたら怪しまれるかもしれないし取り合えず状況が状況だし。

 

「『脱衣』、『身体洗浄』、『乾燥』、『着衣』……これで良し。もう寝るとするか……『睡眠』…………」


 そうして時刻は午前6時を回り、どう考えたって朝だと断言できる時間にようやく俺は眠りについたのだった。



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