第17話 「未知との遭遇なんてしたくないです遠慮しときます」と祈っても、考えられる一番最悪な目に遭いそうな予感がするけどきっと気のせいだ。




 は? いやいや、は?

 叡智に一度話を邪魔されたから話を戻そう。

 簡単に言うと信じられなかった。

 でも……ただのニュースだし。

 も、目撃だろ?

 発見じゃ、ないんだろ?


 まだ救いはある。

 いや絶対にあり得ない。

 こんな展開あり得るはずがない。


 こんなものが有り得てしまったら大抵の現代ファンタジーが予言書扱いされるカオスな世界の始まりだ。

 だからこれはデマ情報、デマ情報だ……


「どうして考え込んでるの? あ! また通知音でもしたんでしょ!」


 ドヤ顔でこちらを見つめてくる。

 残念ながらそうじゃないのだよ。

 いつもは鋭いのに今日はそうでもないらしい。

 

「いや、多少しか聞こえないよ。」


「ならどうしてボーっとしてたの?」


「世界平和を祈ってたのさ。」


[スキル『祈祷レベル1』を獲得しました。]

[スキル『祈祷レベル2』に統合しました。]


 通知がボケ始めた。

 叡智に意思があるなら絶対にこの通知にも意思あるだろ?

 面倒くさいんだけど……


「それ、絶対に嘘。」


 ……冗談だって伝わらなかったのか?

 結構ベタなやつ言ったつもりだったんだけどな……

 あ、ヤバい怒らせちゃったか?


「私ね……魔法使えるんだよ〜〜?」


 その脅しマジで怖いからやめろよ。

 魔法?は?ふざけるのも大概にして欲しい。

 そう思っていたら沙耶の手元から冷気が漏れてきた。


「え?本当に使うのか?冗談は止してよ……あれは冗談なの!ごめんって謝るからな?」

 

 それでも沙耶は動作をやめない。

 どうやら許すつもりはないらしい。

 誰かなんとかしてくれよ……

 

[スキル『魔力障壁』を発動します。]

[スキル『同時展開』を発動します。]


 その瞬間、沙耶の手から冷気が俺に向かって放たれた。

 俺ここで死ぬのか……騒音で苦しんだあとで?

 そんなのあんまりだ。

 それと同時に俺の前に何重もの青いガラス?のようなものが現れた。

 少しずつそのガラスのようなものが割れていく。

 え?俺大丈夫なの?

 と思ったら残り1枚のところでその冷気の線は止まり、消えていった。

 ふぅ。助かった。

 まさか叡智に助けられるとは思わなかった。


[進言します。個体名:三倉沙耶は魔法の使い方について理解したばかりであり、力の調整がうまくいくレベルにまで昇華していません。よって挑発と捉えられる発言は個体名:三倉沙耶の前では控えるべきです。]


 はい、すみませんでした。


[スキル『冷気耐性レベル1』を獲得しました。]


 ……今ので台無しだよ?

 分かってる? 叡智さん。

 そこにボケ突っ込めてくるのはやめてくれませんかね?


[回答します。今の通知はスキル『叡智』によるものではありません。]


 あ、はいそうですか……すみませんでした。

 

「大丈夫!?習くん……ごめん……」


 沙耶には悪気はないらしい。

 でもそれが余計にたちが悪い。

 そもそも人に向かって魔法を放つなよ。

 普通に考えてみろ、怪我じゃ済まないぞ全く……

 

 ただでさえ疲れてるっていうのに命の危機を感じさせるんじゃ……


[スキル『生命維持レベル1』、『危機回避レベル1』、『危険察知レベル1』、『生命探査レベル1』を獲得しました。]


 だから思考を分断すんなって。

 うるさいし、思考は分断してくるし本当にやめてほしいものだ。

 ついでに煽ってくるとまできた。

 ふざけんなよマジで。


「さっきから反応ないけど本当に大丈夫!?えっと……どうしよお~~習くん死んじゃったよお~~」


 頭の中でぐちぐち主に叡智に向かってグチを漏らしていると沙耶は俺を殺してしまったと思ったらしい。なんで?鼓動してんじゃん。息あるじゃん。普通に考えればわかるだろ。


「勝手に死んだことにすんなよ。」


「良かった……良かっだよ……」


 そんなんで泣くなよ。

 そもそもお前が攻撃してこなければ済んだ話だからな?


[警告。警告。敵性反応あり。敵性反応あり。]


 は?敵性反応?どこかのチンピラと間違えたんじゃないか?

 ちょうど目の前に柄の悪そうな人いるし。

 

[回答します。殺気を含んだ完全な敵性反応です。]


 いやいや冗談はやめてくれよ。

 そんなわけ……


 はっ?なんだよあれ。あんな大きさの鳥見たことないぞ。

 少なくともコンビニくらいの大きさはある。

 朝からこんな目に合うなんて災難なんてどころの話じゃないぞ。

 クッソ。せめて沙耶だけでも逃がさないと。


[スキル『空間魔法レベル1』を発動します。]

[スキル『危機回避レベル1』が発動します。]


 って沙耶は大丈夫か?無事か無事なのか?


[回答します。個体名:三倉沙耶は無意識にスキル『転移魔法』を発動させ近くのコンビニのトイレに転移した模様です。]


 最後の情報いらない……っていうかこれどうするべきなんだよ。

 逃げるか?逃げるしかないのか?逃げるしかないよな。

 本当に昨日も今日も意味わかんね~~よ!


「おいっ、叡智何とかしてくれよ!」

 

[回答します。……魔力が枯渇しています。ほかの対策案を作成中……完了しました。傘で殴りましょう。]


 お前もわけわかんないこと言うなし。

 本当に冗談を言ってる場合じゃないぞ。

 これ命の危機だぞ。分かってんの? おいっ!


 ……クソやるしかないのかよ。

 あんな巨体に効くとは思えないけどもうヤケだ。

 言われた通りに傘で殴るしかない。


「おっらああーーー!ヤケくそだああーー」


 怪鳥は俺に向かって鋭い突進で向かってきた。

 その瞬間、今までの記憶が俺に一気に流れ込んだ。

 あ、これ絶対に無理だ。走馬灯ってやつだもん。

 ………俺、死んだわ。


[スキル『走馬灯』を獲得しました。]


 死に際でふざけんじゃねーよこのくそ通知!


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