第11話 なんか幼馴染の手から火が出たんだけど、どうやらこの幻覚は幻覚ではないらしい。




 いや、えっ? ……え?

 はっ? えっと……え? え~~え?


 落ち着け俺。これは幻覚だ。

 少し熱かったが、それも妄想による現象の一環に違いない。

 いやそうだと信じたい。


「うわあ!本当に使えた!ねぇ使えたよ、習くん!」


 は? え? 今なんて言った?

 おふざけも大概にしてほしい。


「はい? ちょっ、冗談はよしてよ。混乱するじゃんか」


「えっと……ほら火出たよ?」


「火が出た? え? マジで?」


「本当だよ?」


 なんでそんなすぐに適応してんの?

 もっと驚くとかさないの?

 えっ? 俺が変なの? 普通の反応だよね?

 というか順応力高めなほうだよね?


[スキル『適応レベル1』を獲得しました。]


 今は通知は来ないでくれ。

 ていうかこれ妄想じゃなかったのか……

 さては感染症か何かか?

 でも人に超能力を芽生えさせる病原体なんて聞いたこともないしな……


[スキル『疾病耐性レベル1』、『免疫レベル1』を獲得しました。]


 あ。それはありかも。

 これが現実なのか分かった今では素直に嬉しい。

 ただし爆音が鳴らなければ、の話だが。


「何で沙耶はそんな順応早いの? 普通もっと取り乱すとかさ、しないの?」


「え? むしろこの状況最高じゃん! こんなことなら習に薦められたラノベとか読んでおいたらよかったなあ……」


「だ・か・ら、なんで逆に楽しんでんの?俺困惑するんだけど」


[スキル『混乱耐性レベル1』を獲得しました。]


 うるさいのは相変わらずか……

 で、このうるさいのって止める方法はないのか。

 何か取り扱いとか聞けたらな……


[スキル『叡智』を使用しますか。]


 ここは使用しておくか。

 というかなにこれ、本当のラノベとかアニメとかゲームとかのスキルなんだよな。

 マジか、少しテンションが上がってきた。

 でもやっぱりこの音は俺にとってはもううるさいものというレッテルが張られているらしい。


[スキル『叡智』を使用します。]


 いちいちうるさいな。わざわざそんなことを報告してくんなよ。

 というかこれ俺の妄想……じゃなかったわ。

 でもなあ、日常生活に支障マシマシなのは変わらないんだよな……

 ついには治療さえできないものと来た。

 これいつか発狂しそうな勢いなんですが。


[スキル『ストレス強耐性レベル1』を獲得しました。]

 

 ああ、うるさい。

 もうスキルとかいっそ入手しなくてもいいから通知を止めてくれ。


[スキル『k;@f;絵pf』はスキル『叡智』の2ランク上のを最高ランクのスキルです。またその他の保有スキルによって解除、停止することはできません。]


 はっ? 止めれないことは分かったけど。

 はあ? 何あのへんな音気持ち悪かったぞ。

 やめてくれ、マジで脳が壊れるからやめてくれ……


「どうしたの習くん?急にボーっとして。何かあった?」


 いやいや、どう考えてもあったろ。

 どんな頭してるんだこの幼馴染。


「ああ、えっとさっきの通知みたいなやつ来てただけだから。気にしないでくれ」


「あの通知何!? 私変な情報が頭に入ってきてさ! それで魔法使えるようになったの! ね! ね?」


[回答します。スキル『通知レベルMAX』、『叡智』、『五r@4kfpr』の効果によるものです。]


 その言語化できない情報みたいなやつマジでやめてくれ。

 違和感多すぎて頭が痛くなる。


[スキル『頭痛耐性レベル1』を獲得しました。]


 淡々と話しずらすのはやめてほしい。

 ムカつくしうるさいしうるさいし。


「しつこいぞ。俺だってよくわかんないんだよ。多分この通知ってスキルとはてなマーク三つ並んだやつが悪さしてるんだろうけどな。本当にわからないんだって」


「もしかしてあの声ずっと響いてたりする?」


 ここまで察しがいいと逆に恐怖だな。

 だって俺の考えていることそのままなんだもん。

 幼馴染の仲とはいえ、流石にな……

 

「ああ、そうだけど。ずっとうるさくて困ってるんだよ」


「そしたらさ、止めるとかできないの? 私は自分の意思で魔法使えるよ? 習くんもできるんじゃない?」


 こいつ自分の意思で制御できるのかよ。

 羨ましいな。あと本当に順応早すぎ、俺一応まだ困惑してるんだよ?


[回答します。現在のレベルにおいてユニークスキル以下のスキルであれば自由意思に基づき使用ができます。但しスキル『通知レベルMAX』は最上位スキルによって制御されているため意思による使用及び制御は不可能です。]


 そんな情報いいから。うるさいからやめてくれ。

 どうせ通知が止まらないなら別に聞きたくなかった。

 しかし現実は無情である。


「それならさっき試した。でも無理だった」


「習くん…ドンマイ! えっとさ、その通知ってどういうときになるの? 教えて教えて!」


「何かする度に、だ。何回かやると聞こえなくなるんだけど、回数もよくわかんないし。ただうるさいだけだからどうしようもないんだ」


「ごめん、そこまでは聞いてない」


 Oh...いきなり態度酷くね?

 さっきまでの態度と大違いじゃんか。

 いつものことだけどさ、やっぱ傷つくわ。


[スキル『精神攻撃耐性レベル1』を獲得しました。]


「とにかく他にできることないか実践してみようよ~~! ね? いいでしょ?」


 それは横暴だ。

 絶対に通知うるさくなるし、そんなことやりたくないんだけど……

 うわっ何言っても聞かない目をしてる。

 一応聞いてみるか?


「あのー俺に拒否権は……」


「もちろんないよ?」


 その瞬間、俺の鼓膜(イマジナリー)が破壊されることが、無情にも決まったのだった。


[スキル『ストレス強耐性レベル1』、『鼓膜破裂耐性レベル1』を獲得しました。]


 その通知今いらないよね? ね?


 ……あ~~俺の精神終わったわ。

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