第34話 最終回ドッペルゲンガー

「陽向汰、良くきけ

ワシはクリスチャンじゃ

人を裏切ったり、貶めたり、泣かせたりするのは性にあわない

だから息子の様に国々に妻がいても

彼女らから息子を引き離す事などしなかった。

ワシが知った時には既に内縁の妻と名乗る彼女らが居たからじゃ

息子は彼女らの家庭の面倒、その親迄ちゃんと生活出来るように面倒を見ていたし、今更ながらどうも出来なかった、皆息子に頼って生活していたからなぁ

ただ陽向汰の母親の千夏さんに申し訳無かった

だから千夏さんの決断を待ち彼女に従うつもりで帰国した。

息子龍樹と千夏さんの離婚が決まったが今頃、龍樹は嫌だといっておる。

何とも勝手な奴だ!」


陽向汰はそれを聞いてびっくりしていた、父親に従順だった母親をずっと見てきた

「離婚・・・そんなはず・・・」

陽向汰はポッリと呟いた


「お前が父親と同じ道を進むのを見て千夏さんは間違いに気づいて欲しかった様だ、しかし、もう龍樹への愛情はとうに無かったみたいだな

陽向汰のために我慢していたのが間違いだったと言っていた、千夏さんには長い間、我慢した人生をおくらせてしまった。未だ58、やり直せる!80過ぎのワシらから見たらまだまだ人生これからじゃ」


大吉はテーブルに置かれた日本茶をズズッと啜り上げ呟いた。

「千夏さんがどこに行ったかも分からん、多分龍樹とは二度と会わないつもりで家を出たそうだ

龍樹に話したら直ぐ帰国すると慌てておった、今更千夏さんの事を大事にしょうとしても遅い‼️」

温厚な大吉が後気を強めて言う


「陽向汰分かるか?人の気持ちは変わるんじゃよミオを今離したら二度とお前の元には帰らんのじゃろう


ミオは綺麗だし可愛らしいし若い、陽向汰よお前が女で伴侶を求めるならスチュアートかお前どっちを選ぶ?ワシならスチュアートを選ぶとおもうぞ!!だが今ならやりなおせる、お前はまだ間に合う」

項垂れた陽向汰に大吉は懇々と言い聞かせる



「ミオ本当にすまなかった、今スチュアートに気持ちが動いているのかもしれないが

オレにチャンスをくれ」


ミオは戸惑っていた、確かにスチュアートに気持ちが動き始めているのを感じていたスチュアートに対するこの気持ちは 今の所いい友達だ 時間が経つてそれ以上にならないとは言えない

彼はいい人だし・・・


ミオが黙っていると陽向汰がミオに駆け寄り手を握った。



大吉も葵も松前もウルウルとミオを見た


「こんな顔されたら、はいとしか言えない」

とミオが呟くと全員が歓喜の声を上げた

が勘違いされては困る。


「ま、待ってください陽向汰の気持ちがブレないとわかるまでは

私もわかりませんよ。」


正直言って陽向汰を諦める自信も無かった、お互いの気持ちを見極める最後のチャンスとミオも思ったのだ

これがミオにも最後のチャンスなのだ

長年の想いが実を結ぶのか?

はたまた微塵に砕け散るのかミオもズルズル行くのは嫌だった。

一か八かの人生をかけた勝負に出た、陽向汰がまた裏切ったのならそれまでだ。


人の人生はお釈迦様が瞬きを1回繰り返すまでに終わってしまうと聞いたことがある

確かに人生を振り返るとアッとゆう間だった、これからの人生も歩んで行くうちは長いだろうが過ぎてしまえば瞬きくらいに短い。そんな人生を大事に生きたいのは

ワガママでは無い、ミオも言い分がある

ミオの人生なのだから



「ありがとうミオ

大事にする。」



「勘違いしないでよねっ

選ぶ権利が私に回って来たんだから

嫌になったら白紙にもどるんだよ」


「それでもいい」


陽向汰は今本当に反省して居るようにミオには感じられた。



「もう1回だけ」

短く呟いたミオの言葉を陽向汰は重く受け止めた いよいよ崖っぷちに立たされた事を

身に染みて分かったのだろう。

陽向汰の母親が陽向汰に出来る最後の躾に踏み切った事を大吉は感謝するのだった


「ちょっと出て来る」


大吉は松前に目配せをすると松前もすっと立ち上がり「お供します。」

と呟くと部屋を出て行った。


ホテルのロビーで松前と大吉は腰を

下ろす。



「桜待たせたな」



「おじい様お久しぶりです」


ソコに松前から呼び出されたスチュアートが桜を見て呆然と立ち尽くしていた。



「おお、スチュアート、ダンスパーティーのパートナーじゃが、ワシが連れてきてやったぞ、ワシの妻の姪っ子の娘の桜じゃ」


大吉は姪の娘の桜をミオの補欠として呼んでいた事は松前しか知らない。


髪は長い黒髪、市松人形に似た可愛らしい笑顔を放つ桜がピンクの振袖を着てスチュアートを待っていた。


「OhーJapanese ヤマトナデシコ」

スチュアートは目を見張り小さな声で呟いた。


スチュアートはミオが陽向汰の彼女になった事を松前からの電話で聞いて

落ち込んでいたが、ミオとすごした日にちも浅くそれほど深刻になるほど深い関係でもなかっからか諦めも早かった。



スチュアートは黒髪のサクラを気に入ってしまった。

桜は23で大吉が可愛がっている姪の娘だ

ミオ同様変な男に捕まっては困る、その点スチュアートは日本ひいきで、武道もたしなんでいる。此方に永住してもいいとさえ言ってくれた


「合格!!」


桜もスッカリ男前の背の高いスチュアートに一目惚れしたようだ

頬をほんのり染めてうれしそうにしている。


「後は葵だけか!!」

その呟きを聞いた葵は



「いやいやオジジ 俺は後2年は

勘弁して欲しい。」

と身をふるわせた


「陽向汰の様に本当に好きな子がで来たらオジジに話してまとめてもらうよ」


そんな不完全燃焼の様な葵に大吉は釘を刺すように言う。

「分かった後2年だな

ワシも生きてるうちにお前の子もだきたいんじゃ そうしないと死ねんのだ

皆が安心して幸せになるのを見届けないと成仏できん、たのんだぞ」


葵はヘラヘラしながらはいはいと答えた。

大吉の切なる願いを軽く受け止めるが大吉に勝てるはずもない。

大吉はどこかにいる葵の嫁に思いをはせながら1枚硝子に写る青空をみあげる。



「ママ、バアバから

電話」




「おせんたくほしてるから用 件きいて」




「今マッ🍔に居るからなんか要る?だって」



「私バアバに早く会いたい」

末娘の雅が言うと


「じゃあ結花、恋花と雅とバアバとジイジを迎えに行ってらっしゃい。

あ、昼はあなた達はマッ🍔でいい?

手抜き過ぎだけど」



「うん、いいよーマッ🍔がいい」


「陽向汰おじいちゃんもハンバーガーすきだよ、イギリスで何時も食べてたもん。」


陽向汰とミオの息子陽太の嫁 愛佳は

そう言って洗濯物を干し終わると

娘達の居るリビングへと向かう


空は青く洗濯日和

ベランダには来客用の布団と家族5人分の布団がズラーリと干してある


庭にはシロツメクサが一面に生えて

夫の陽太が草刈り機を操縦して汗をかいている。


娘達は愛佳から1万円を受け取ると


「はい、決まり事を言ってみて」


愛佳が言うと


「走らなーい、車に気をつける」


愛佳の家からマック🍔 🍟迄は5分だ

走らなくても直ぐにつく

キャアキャアワイワイ言いながら娘達は出発した。



「陽太ーアイスコーヒーよ」

陽太はタオルで汗を拭きながら愛佳の

所へとやってきた。


「母さん達着いたのか」

陽太がアイスコーヒーを愛佳から受け取りながら聞いた


「そうだって皆で迎えに行ったわよ

今日はマックとお肉を焼くわ

お義母さん料理上手だから又教えてもらおう」


「愛佳の作る料理だって負けないくらい美味しいよ」


「お祖母様の小料理屋で会った頃は

何にも作れなかったわ」


「ああ、爺ちゃんも呆れてたなあ

味噌汁にラーメン入れて食えってオレに出してきたなーハハハ」


「そうそう、アレは酷かったね」


「デモ文句言うあなたに

作らないやつが文句言うなってお義母がズルズルと食べてくれて

うん、ホントの味噌ラーメンね

あ、味噌汁ラーメンか、野菜を小さく切れなくて長く切ってしまった私をせめたりしなくて

泣きそうな私を笑わせてくれたよね」



「それから俺より仲良くなったなー」


「うん感謝してる

ヤンキーだった私を拾ってくれたもの」


アイスコーヒーを飲み終わると


「あと少しだからビールも冷やしといてね」


こくりと頷く愛佳に微笑むと夏を直ぐ前にした庭には青草の香りと家庭菜園の夏野菜達が花をさかせ始めていた、

支柱を立てたキュウリの黄色い花の付け根には1センチ位のキュウリが着いているのを微笑ましく撫でる、陽太は青い空を見上げ汗を拭く。



「ア、ジイジの車だ

末っ子の雅が指をさした」


その先には白いセダ〇が止まっていた

その横にも同じ青いセダ〇が止まっていた。

その先には年季の入った軽自動車が止まっていた。


「こんにちはー」


小学校の挨拶運動で生徒会長をしている結花が癖がついてしまったのか

老夫婦に挨拶をする


「ハイハイお利口さんね

こんにちはー」


老夫婦も挨拶を返す


「ミオ、ヤッパ入れ歯が入ると発音がいいな、寝るまで外すなよ」



「えーおばあちゃん入れ歯?見せて見せて」

雅が興味深々に聞くと


パカッと外して見せた

「凄い👏すぐはめれるの?」

パカッ又はめて見せてくれた

「凄い👏連打でできるの?」


パカッ、プカッ、パカッ、プカッ


「凄い✨」

「おばあちゃんの歯

ロボットみたい」

3人はおばあちゃんの入れ歯早付け技に大拍手


「もう、帰るぞ

調子に乗って落とすなよ

バーさんなんだから運動神経も婆さんなんだぞ」



その一言におばあちゃんは

「はいはい」

「じゃあ、またね」

と手を振って車に乗り込んだ


「バイバーイ」

そして人懐っこい娘3人は店に入っていった。


「可愛らしい子だったわね

他人な気がしなかったわー」

冬華は「そうか」

そう言いながら娘らを優しい目で追った。



「バアババアバ」

ジージ、ジージ」

ジイジとバアバを見つけた三姉妹は

2人に飛びついた。



「バーバお昼も買ってきてってママが言ってた」

と1番大きい子が1万円札を出した



「結花、それはママに返しなさい

もうタップリ頼んであるから

いらないよ!」

お爺さんはニコニコしながら呟いた


ズーズーと、隣り後ろの席から

氷を吸い上げる音がする


「フフッ暑いものね、氷ガリガリしたくもなるよね」


バアバは20代後半位の女の子を見て笑う。


「さあて、行くか、」


陽向汰は紙袋の中のハンバーガーの匂いを嗅ぎながら、

「熱いうちに孫や愛佳や陽太達に食べさせよう」


と持ち帰りの袋を抱え店を三姉妹と出た。


「どっかで見た様な風景だわ」

ミオが呟く。


ミオは一足先に出たさっきの同い年くらいの彼女を思い出しながら呟いた。


あんま考えないようにしょう

そう彼女は気づいてしまった。

さっきすれ違った彼女は昔バス停で出会ったことがある、そして隣後ろに居た彼女、あの彼女は私の20代後半のあの時の私で、この店に入る時振り返った彼は冬華だ、そしてわりと綺麗な歳をとつた女性、バス停てあった彼女も冬華と人生を共にした方の私だ


こんなことある❓

ピューンと季節離れの北風が小さな渦を回しながらミオの顔を撫でた


私の人生は正解だったのかな?

陽向汰との人生を歩んできた。

だって陽太や嫁や孫達に囲まれて今は幸せだ




オジジ様は今はイギリスの墓地に生涯愛したオババ様といっしよに眠っている。松前さんは琴音さんと東京にいる。

あのダンスしパーティは盛大だった陽向汰と私1晩中踊ってその日にむすばれた。

桜さんとスチュアートも東京でくらしている

陽向汰の母千夏さんは、農家に嫁いでいた。

陽向汰の父親が全力で探し当てたとき、相手の連れ子達と中睦ましく笑って食事をしていた、取り皿に入れられた唐揚げや煮物、おばあちゃんおばあちゃんと呼ぶ血の繋がらない孫達にハイハイと答える義母


2人は家を彼の長男にあずけ人里離れた土地にログハウスを建て2人で住んでいたホルスタインを1頭ゴールデンレトリバーとチワワ

鶏を🐓5羽、猫を2匹を飼い

幸せにくらしていた

時々訪れる彼の子供たちの家族とたのしそうに家庭菜園と言うには広い土地で野菜を作り、母親お手製のケーキやピザでお茶をしていた。

陽向汰は昔、オズの魔法使いやブレーメンの音楽隊の動話やムーミン、アンデルセン童話を良く母親が読み聞かせしたりビデオを見せてくれたことを懐かしく思った

きっと母は父親がくれた何不自由ない暮らしよりも今の土臭い愛情溢れた生活を望んでいたのだろう

父親はガクリと肩をおとし母親の前には出れなかった

そしてイギリスに帰って行った、父親なりの選んだ人生

そんな小さな父親を見たのは初めてだった。

それから何年も桜の季節を見送り

今、私達はイギリスと日本を行ったり来たりの毎日、オジジ様は眠るように逝った。

穏やかな最後だった、オジジ様が心配していた葵も今は沢山の孫がいる

彼なりに幸せのはずだ


ドッペルゲンガーなんて信じないがあながち嘘とはいいきれない。

「ミオ帰るぞ」

車から陽向汰と孫が私を呼んでいる

そしてハンバーガーの店を後にする見覚えのある軽自動車が見える、短いような長いような人生がミオにはみえる。過去現在未来



ミオも青空を仰ぎ本当に人の一生って

短い、私達も歳をとるはずね

「夏でもないのに暑いわねー」

と青空を見つめミオはつぶやいた。





最終回になってしまいました

レビューや、応援ありがとうございました。












🍓🍍🌽🍇🌶🍎

毎日読んで下さりありがとうございます応援フォローも頂き凄く力になりました。

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ありがとうございます。

又頑張ろうと元気になります。

又暇潰しに読んで下さいねByルミン

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都合のいい女の間違った育ち方 ルミン @rumiko35211

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