第3話貢ぎ姫金が無い





「はぁ、年金じゃ生活がなぁ」


「70迄働かにゃならんわ!足腰立たんのに虐待に近いワ」


「時代のながれよなぁ

税金払わないと住めないようになってるし介護保険も年金から引かれるし・・・」


親子で住めば非課税世帯にもならんし子供が税金払えば非課税にはならんのだよ、年金はすくないし、かといって世帯分離したところで子供の扶養から外されてしまう。安い年金暮らし、子供には子供の生活があるから煩わせたくは無い。




「墓も買わないかんのに、死んで住む所も無いのは、長年頑張って生きて来た自分が可哀想だ」

南無阿弥陀仏 南無妙法蓮華経アーメンetc

それぞれの宗教は知らんけど

そろそろアッチの方へ旅立つ

ことが確実な老人はバスに向かって拝んでくる


鼻水をチョロリと垂らしながらポケットに何回使ったか分からない

丸めたティッシュでブビーと鼻をかむキタネーしかしコレが年寄りに

できる僅かな節約だ。



「そうそう若い時に貯めていなかったから、金でも買っておけば

足しになったか、子供育てるのに金は右から左、貯める余裕なんて

無かったサー」


「そうそう食う、食わせるで精一杯」


「苦労する為に子供育てたようなもんサー、苦労したのに金くれと言えば知らん振り

親は朝から晩まで働いたのは学費の為なのになァ…」


「いやいや子供は子供の生活があるんサー」




そんな話を聞けば

石川啄木の働けど働けど我が生活楽にならざり ぢっと手を見る

の文章がミオの頭の中をかけぬける。


「ふぅー、この足さえ丈夫ならなぁ 働けるのに!」


そんな老人クラブの泣き言を聞きながらミオは、やはり陽向汰とは離れたがいい

と思った、学費は親持ちだが安くは無い、それにバイトのお金は

ほぼ全額陽向汰の必要な物を買うため消えて行く


通帳に入った分は直ぐ引き出す、ミオの手に渡るのはATM で引きだす時だけ。


大学一年、二年で貯めた預金を陽向汰のプレゼントに回して無い

消えた。



ミオはお茶かけご飯

沢庵300円のを買い細かくスライス

1ヶ月切り分けて冷凍庫


納豆ご飯、栄養は必要節約してる訳じゃ無いのに無理やり節約


「ビール買っておいてノンアルな!」

日向汰が言う

ゲゲッ「また?」


いい加減にしてほしいと思うが惚れた弱み、何度も日向汰から離れる決心をしては元通り

相変わらず下僕生活


「飯頼むわ、今日

ステーキが食いたいモチロン国産な!!! 高い霜降りサシが入ってないとワカルヨナ」

その度スーパーへ駆け込み食材を買う🛒肉に関しては陽向汰おすすめのデパート陽向汰は一銭も出さないし、このままだと ハァーッ


40年後バス停に座りブツブツ嘆く自分の姿が見える。

このまま陽向汰に良いように家政婦にされそうだ、一生絶対タダ働き‼️分かっているが逆らえない!



暫くすると陽向汰からのぉー鬼電

┣¨‡┣¨‡!!

出るか出ないか悩みながらも何時もの癖でポチあ"あ"あー


お"押したーァ

すると耳が敗れそうな声が激音で聞こえて来る。


「おい💢

俺がチョコ嫌いなの知ってるだろ

甘々な奴食えねーんだよ💢生意気にチョコなんかわたしゃがって💢、卵アレルギーに卵渡すのと同じだぞ!」


「え⁉️

チョコアレルギーだったっケ?」


「んなわけあるか!

俺が頼んだのは金のネックレス

チョコじゃあ、ナイ💢

パンフ見ただろ

ミオ覚悟しての事か?」



ミオは怯んでしまったが

「う、うん」

ココで返事しないと又決心が揺らぐ

そう思うと頷きながら返事した。


「覚えてろぉムカつく💢

ミオの癖にぃー💢」

とガチャ切り



「終わった‼️」


妙な寂しさとギュッと縛られた紐を解かれた解放感がヤバかった。

自由の代償は仕方がない


又走り出したいくらい、自分がどうしたらいいか分からない

残ったエネルギーを分散しないと自分が壊れそうだった。





「クッソォォォォォ!!」

陽向汰はミオに裏切られたようで

何とも言えないモヤモヤを拭いきれなかった。


「何でナンダヨーゥ!!」

携帯を睨みながら陽向汰は悔しがった、ネックレスが欲しい訳じゃない従順なミオが欲しかった、従順な

証がネックレスだったのだ無理しても頑張ってオレの為にバイト掛け持ちで必死になって買うその想いが欲しかった。


陽向汰の為に頑張るミオが欲しかった。




金持ち息子のワガママ💰

ミオから言わせればアホとちゃうか!



寂しく過ぎる桜の季節

それから又若葉の季節を過ぎ陽向汰とは終わったかのように季花には見えていたが季花は騙されない。



そして夏も中盤を迎える頃花火大会が催される夏の名残りを惜しむかのように河川敷はウチワを持った家族連れ、カップルで大握会いに混じって🐙たこ焼 トウモロコシ 焼そば

等のB級グルメの、香ばしい匂いが お腹を襲う仲 突然尖った甲高い声で呼び止められた。


「ちょっとアンタ」

季花は叫んだ!


俺は友人と浴衣を着て、夏祭りに行っていた、俺を呼ぶその声に。


何人かで振り向くと林檎飴をカリカリ、いやギャリギャリと噛み砕きながら 俺を睨む女がいた。

ピンクのアサガオ柄の浴衣を着て髪をアップにした女、アイツは季花だ。


小柄で華奢な可愛い系の彼女

友人は大学が別だったから知らないがミオの友達だ、いつも俺に意見する女‼️


「またか?

わりぃ、俺ら彼女待たせてるんだワ」

俺が言うと仲の良い友人の優人(まさと)が足を一歩踏み出して


「わりぃね、又連絡してよ

今日は、先客があるからサ」

すまなそうにポリポリと頭を搔く

そんな奴らに呆れた顔をした季花は呆れて物申す。


「は?なんだコイツらナルシストかよ」

季花は上から下まで舐めるように見ながらジロジロ

知らない人から見れば感じ悪いオンナ



「じゃ」

爽やかに手を振り立ち去ろうとするヤツら

何も気にしない彼等

高身長、高学歴、イケメンな四人の目の先には


浴衣を着た4人の女の子が

イケメン4人に気づいて手を振っている、彼らにも彼女らが見えたのだろう

4人とも彼女らを見て足を踏み出した


あの子達なに?

ハッキリ言ってチャラ男の何処が良いのかワカラナイ


顔は確かにイイが遊び人だからか

見てくれはかなりイイ


スーッと鼻で息を吸って 季花はイケメン4人に叫んだ


「オミャイラもう、ミオを

振り回すなー

おミャイラは、アホか!

オミャイラぐらいの面構え、ドコソコ

居るワ、アホ」


バッと4人はまた季花を見る


「じゃあな、ナルシスト軍団」

季花はフンッと鼻から息を飛ばし踵を

返して、背中を向いたまま叫んだ

季花はイケメンじゃなくてゴツイ男が好みだから揺れない


「ああ、そうそうミオには彼氏紹介するから、つきまとわないでね陽向汰君

アンタらとちがって

ちゃんとした人をね!!」

と捨てセリフを吐いて季花は立ち去ったが


「きゃあ優人 真彦、尚也、陽向汰ー」♡


の声にかき消され4人に届いたかは疑問 季花はヤレヤレと首を振る

ミオも陽向汰の見てくれに惚れちったのだから彼女らと同じか!

しかしながら彼女らと違うのは、ミオが本気と言う事、体を張って尽くすと言う事


今日も映画館の便所掃除を頑張ってアイツの為にウンコと日々たたかいながらアルバイトに励んでいるのに💢

アイツ(陽向汰)は女と今時のグループデート?は?は?はぁー💢


季花は頭から湯気が出そうな程怒りで顔を赤くした。

我慢出来ずミオに電話する。

「ミオ、便器に汗垂らしてる場合じゃないよ

アンタのツバメ浮気してるから

早くコッチ来い‼️」


「え!季花 花火大会だよね

今からじゃ無理だよ」


「何言ってんの 車で来れば30分よ」


「えっえっまだ仕事残ってるし」


「アンタが便器のカオ洗ってるのに

アイツは女の子の顔舐めてんだよ

良いの」


「・・・・え、デモ」

ミオは戸惑いながらモゴモゴと呟く


「あ〜いらっく」

季花は案外気が短い


「・・・無理、仕事ほっぽり出せない、信用も無くなるし」


「は?そもそもアンタが便所掃除してるのは何故よ」


「え、陽向汰の9月20日の誕生日のプレゼント買う為よアッ シマッタ😣」

ミオは思わず口を抑える


「あーそうだっけね

ナルそんな事だと思っワ

どーせ高いの頼まれたんでしょ」





「で、いくら❓」

腕を組みつつ季花は呟く


「いくら?するの💢」


「・・・え!!」

しどろもどろな声のミオに季花は電話でも容赦なく詰め寄る


「いくらなの?」



「え、えっと・・・

50万。のにマルしてあったからホントはクリスマス用だったけど急にそれは無理だし

だから隣の20万のにした、デザイン似たような物だったし精一杯届く金額だったから」



「・・・ちょっとしたネックレスだよ」



「は?」


「え?バレるかなぁ20万のにするけど まあそのくらいしたと思う」


「・・・・」


「アンタ利用されすぎじゃない

アイツからなんか買ってもらった

事ア、ル、ノ?

しかも20万大金じゃん、は、は?アホ!」




シ━━━━━━━ン




沈黙が流れ季花が口をだす。









「アンタ 本当に大丈夫?

いやいや重症だー」


季花は呆れながら

oh my gotーーー



「あ、あのね季花、私が彼にプレゼントしたいのよ

付き合ってるワケじゃないし、私がやりたいからやってるの

陽向汰は悪く無いん」

陽向汰をかばうミオに

はぁ💢?

ブッツーン ツーツツー


「あーぁもう知らない!」と通話ボタンを押す。

季花は呆れてしまうミオはMなんだろうか?

お金に麻痺してしまっている。

そもそもそのパンフを見せて来たのは陽向汰じゃん、ミオなら必ずプレゼントすると見越しての事だなんてヤツ


ミオにとって季花はお節介なのだろうか?多分そうなんじゃなかろうか

だったらほっとくべき、痛い目に合わない限りミオは目が覚めないだろう。

一度離れた様に見えたがミオは弱い

寂しくて堪らなくなる

陽向汰はそれを知っている。



「うーん後10万か?」



気付けば8月終わりセミの声もツクツクボウシに変わり道にはアブラ蝉の

死骸がポッポッと落ちている頃


後20日で陽向汰の誕生日がやってくる、ミッチリ、シフトに入り掛け持ちすれば

10万はスグ稼げる然し体調があんま、良くない、お腹が急に押し付けられるような痛みにかわってきたミオには持病がある


ネットで調べたりしてヘルニアの

症状に似てる、病院へ行くべきか

いやいや痛み止めでカバーするべきか?

入院なんかになったら困る

余分な金がとぶ



ミオはジッと前かがみになって痛み を耐えた、2時間くらいしたら、あの痛みは?

ってくらい落ち着くのだ、生汗がタラタラ髪の毛を伝い首筋に落ちてくる


「あと、あと少し」

ジッと我慢する 30分くらいで落ち着いたトイレに座り 生汗をふきながら、会社に電話して早引けする



痛みが和らいだらサッサと今だ!!

って感じで片付けをして帰る

歩きながらも車が見えて車に到着するとホッとする シートを倒して横になる


「はぁはぁはぁ」

暫くしたら繰り返し襲ってくる痛みは消えたが、グルンとお腹の中で何かが回った

多分💩

コンビニで氷を買って水分補給

ガリガリガリ

冷たい氷が口の中で砕けて気持ちがいい、冷や汗いっぱいかいたからワンKのマンションへ急いで帰る

氷はご馳走に思えるほど、


「美味しい」



やっとミオは一息つけた気がした

大量の氷を食べて飲料水をがぶ飲み

この後はトイレで水道水を満タンに捻ったように菊の花からドバー

ドバーの大量な水グソ💩

そしたらスッカリ良くなった

これは定期的に来る症状だ。




誕生日前日

結局三万不足、負けてくれないかと

直談判、しかし三万の壁は厚かった結局キャッシングに手を出し

三回払いでカードローンで借りた



「ヤッター」

借金したがミオは金のネックレスを買えて大満足


「ウフッ、陽向汰喜ぶかなぁ

絶対喜ぶし」

プレゼントは贈られた方より贈る方が嬉しいのは、相手にゾッコンな証拠、世に言うLoveとlikeの違い

相手はlikeでもミオは重症なLoveなのだ。


まだまだ暑さも残るが確実に朝夕は

過ごし易い。




陽向汰から連絡が来た。


「ミオ、今日分かってる?

俺のプレゼントは間違いなく買えた?」


ほら来たとミオは顔が綻ぶ


「うん、モチロン」


「おっ流石じゃん

じゃあ後、料理10人分頼むワ

何でも良いけど、唐揚げと酢豚と

小籠包は外さないでな

イタリアン系も、ラザニアは優人の好物だからコレもヨ・ロ・シ・ク」

陽向汰は今日がミオの給料日と知っている、使ってやると決めている。


「え?あ、ヨロシクって私と

ご飯に行かないの❓」



「ん?御飯?誰と?」

ミオの質問に陽向汰はアッサリと応える。


「そ、そんなぁ」

ガックリと肩を落とすミオの記憶は


「ごめん陽向汰こんな高いの買えないよ

代わりにさ温泉とかどう?


嫌なら北海道なんか行きたいよね、ね、ね!!」



「おっ イイネ」

なんて言葉を期待したミオだったが陽向汰は呆れた顔をして



「努力シロよ


温泉なんか年寄りばかりだろ

北海道だって普通に別荘あるし

行きたい時行ってるシ」


「ゲッそうな・・・んだ」

気落ちしたミオに不敵な笑みを浮かべ陽向汰は言った。


「2人でオレの誕生日祝おうぜ、ハタチだから人生の節目だしだからさガンバレよミオ


飯行って何処かのバーで飲もう

ミオに介抱してもらえるから

呑むぞー🍻」

そんな陽向汰の発言に思う所があった。


あ!!そうか‼️二十歳は特別な誕生日だ

一生に一度、七五三 以来の節目の年

コレが終わると60の還暦まで祝いは無い、そう考えると力が沸いた 陽向汰の御祝いなんだ

、頑張らなくちゃー

そうかそうか楽しみーぃ2人でご飯、初めてじゃん、嬉しいーぃ

な気持ちだったハズ



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