第9話 秋人を追ってきた転校生のツンデレ美少女

 秋人が新しい学校に転校してから1カ月近くが経過した頃。


(まずい……これはかなりまずいのです……!)


 柏木 凛香は焦っていた。


 最近、義兄の秋人が綺麗な女子生徒と一緒にいるところをよく見かけるからだ。しかも、ひとりでなく複数の女子生徒である。


(やっぱりいくら見た目を陰キャっぽくしてもお義兄様の魅力は隠しきれないのか……このままでは、凛香がお義兄様を独り占めできなくなっちゃう!)


 そう思い、凛香は帰りのホームルームが終わるとすぐに教室を出て、2階へと向かった。2階は、2年生である秋人が所属しているクラスがある。


(へっへっへっ、今日は部活も休みなのでお義兄様と一緒に帰るのですぅ)


 秋人の教室へとたどり着くと、まだクラスではホームルームが行われていたようだった。


 しばらく廊下で待っていようと思い、スマートフォンを操作しているとひとりの女子生徒が凛香の隣で教室をのぞき込んでいた。


 猫のようなつり上がり気味の瞳をした美人顔。明るく染めた髪はサイドテールにしており、短いスカートから伸びる長い脚には白のニーハイソックスを身につけている。


 彼女は凛香に気付くと問いかけて来た。


「ねぇ、あんたこのクラスの誰か待ってんの?」


「そうですけど……」


「待ってる間に聞かせて。2年で結城 秋人っていうイケメンがいるはずなんだけど、知らない?」


「……!」


 凛香はふと思い出す。秋人が再婚前は結城という苗字だったことに。


「知っ、知らないです~」


(また美少女です! またこんな綺麗な人がお義兄様を……!)


 そんな心理からか、とっさに嘘をつく凛香。


「ふ~ん、そっか」


 しかし、だからと言ってその女子生徒が諦めるはずもなく、再び教室をのぞき始める。


 もちろん凛香は知らないが、その女子生徒は秋人の転校前に同じクラスで、秋人を追って転校してきた榎本 美沙希である。


「あの~おに……っその秋人さんとはどういう関係なのです?」


 そんな彼女のことが気になってしまう凛香は再び声をかける。


「はぁ? 別にっ、たっ、ただ同級生だけど……?」


(ぜっ、絶対ただの同級生じゃなさそう……! なんかめっちゃ照れくさそうに頬を赤くしてるし!)


 と、そんなやりとりをしているうちにホームルームは終わっており、凛香たちが気が付いた頃すでに秋人は反対の扉から教室を出て行ってしまったのだった。

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