第10話 ツンデレ転校生の襲来と、それぞれの美少女たち

 転校してきた美沙希と義妹の凛香が教室の外で会話をしていることに気付かず、秋人は今日もホームルーム終了とともに一瞬で教室を出た。


(転校して来てから1ヶ月くらい経ったけど、当初立てていた計画とはかなりずれてきちゃったな……)


 秋人は陰キャぼっちとして、誰とも関わらずに静かに過ごす予定だった。それがなぜか、クラスで目立ってるギャルやクールビューティーな美少女や謎の多いボクっ娘に興味を持たれてしまっている。


(まぁ、それでも今のところ、転校前の高校に居たときのような状況には発展しそうにはないからいいか)


 秋人は転校前の苦い記憶を思い出し、それを振り払おうと首を振る。


 しかし転校前の高校にいい思い出のない秋人だが、実はひとつだけ気になっていることがある。


(榎本さん元気にしてるかな)


 それはまさに、今日転校して来ている榎本 美沙希のことだった。


 周りの生徒達が嫌がらせをして来たり、秋人を避けたりする中、美沙希はそう言った行為を一切してこなかった。それどころか、1人で過ごしている秋人に声をかけて来たり、嫌がらせを止めようとしてくれたことすらあった。


 実はそれは、美沙希が秋人に好意を抱いているがゆえの行動なのだが……彼女はリアルツンデレで秋人に対して圧倒的な塩対応ばかりしていたため、彼は一切そのことに気が付いていない。


(まぁ、榎本さんは正義感から行動してくれただけで、俺のことはあんまり好きじゃないと思うけど……)


 しかし美沙希が秋人に好意を抱いていること、そして転校前の高校で彼の無念を晴らしてくれたことを秋人が知る日もそう遠くはないだろう……なぜなら、転校してきた美沙希がすでに秋人を探すべく積極的に動き始めているのだから。


 ◇


「ねぇ、このクラスに結城 秋人ってイケメンいない?」


 秋人がすでに教室を出ていることを知らない美沙希は、ホームルームが終わった彼の教室に乗り込んでくる。凛香も後ろからついて来た。


 しかし、クラスメイトたちは首をかしげている。そんな中、クラスで目立っているギャルの篠川 真希がバッグを肩にかけて歩いて来る。


「結城 秋人って名前の生徒はウチのクラスにはいないよ」


 柏木 秋人ってイケメンならいるけど……と、そのあとにボソッとつぶやく。


(おかしい、2年のクラス全部回ったはずなのに……)


 母親の再婚で秋人の苗字が変わっていることを知らない榎本 美沙希。


(秋人って名前イケメン多いんかな)


 秋人が母親の再婚で今の苗字になっていることを知らない篠川 真希。


(なんかすれ違ってるけど、どっちもお義兄様がイケメンなこと知ってるうぅぅ)


 そしてその両方を知っているが、義兄を独り占めできなくなる危機にさらされてそれどころじゃない柏木 凛香。


(結城 秋人と結城 秋人か……これはまた、彼の謎に何か関係ありそうだね)


 なにかを察し、遠くから面白そうに観察している雪花 碧、


(はぁ、1ヶ月経ったのにまだ柏木くんに1回もメッセージ送れてない……)


 一方で、黒崎 美麗はひとりしょぼんとしていた。

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