第7話 金髪ギャル VS クールビューティー
篠川 真希が秋人の頭をなで回し、彼の素顔を見てしまった日。この日の最後の授業は体育だった。
午後からは雨が降っていたためグラウンドが使えず、体育館で男女ともバスケットボールを行うことになっていた。
秋人が振り分けられたチームは一番に試合を行った。実は運動神経がよくバスケットボールも得意な秋人だったが、彼は極力目立たないように努めていた。
もしも転校して来たばかりでぽっと出の秋人が活躍してしまったら、また転校前のように嫉妬を受けてしまうおそれがある。しかも今回は男女共同の授業であるため、男子はみな女子の前でカッコつけようと必死だ。
彼が転校前に同じクラスだった針野 剛のような、マウントを取りたがりで女子から気に入られることばかり考えているような生徒がいた場合、また転校前と同じことの繰り返しになってしまうかもしれない。
そのような考えから、秋人は平均以下の動きで試合を終えた。
それから様々なチームが順番に試合をしていき、授業開始から半分近くの時間が経過した頃……。
「おっ、この対戦は熱いぞ!」
「このクラスでトップを競う美女同士の戦いかよ!」
現在試合をしているコート内には、それぞれのチームに篠川 真希と黒崎 美麗がいた。
2人はクラス内でもトップクラスで可愛いと言われている女子生徒である。
真希は明るい性格と誰にでも話しかける気さくさから言わずもがな男子人気が高い。
美麗は孤高な性格からクラスで浮いてこそいるが、やはり圧倒的な美貌と、ミステリアスさから男子人気が高い。
しかも2人とも運動神経が抜群なため、この試合は実質真希と美麗の一騎打ちだった。
「黒崎さん、今日はやけにアタシに対抗意識燃やしてんじゃん」
「…………別に」
実際、美麗は無意識的にであったが真希に対抗意識を持っていた。やはり、彼女が秋人と気軽にスキンシップしている様子を朝に見てしまったせいだろう。
美麗もかなりの運動神経だが、中学までバスケットボール部に所属していた真希には敵わなかったか。真希がドリブルで美麗をすり抜けようとする。
……しかしその瞬間、真希は視界に体育館の端に居た秋人の姿をとらえた。
「……!」
今朝のことを思い出し、真希はほんの一瞬隙を与えてしまう。それを見逃さず、美麗がボールを奪った。そしてそのまま敵の生徒たちの間をいとも簡単に突き抜けていく。
体育の時間だからだろう、美麗は普段おろしている髪をポニーテールにしており、鮮やかな黒髪の尻尾が左右に揺れる。
そしてそのままスリーポイントシュートまで決める。そこで試合は終了! 美麗のチームが一点差で勝利となった。
「「「うおおおおおおおぉ」」」
会場内で歓声が上がる。
美麗は縛っていた髪のゴムをほどくと、涼しい顔でそれを振り払いながら真希の横を通り過ぎていった。
(くっそ、油断した……てか、アタシなんでアイツの顔なんて思い出して……)
真希がそんなことを考えている一方で、自分の存在が二人のモチベーションに影響しているなどと微塵も思っていない秋人は……体育館の端でスポーツ飲料を飲みながらボーっとしていた。
「隣いい? 転校生クン」
そんな秋人の隣に、1人の美少女が座って来た。
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