第4話 秋人を追放した性格最悪な男子は一瞬でざまぁされる

 秋人が転校先の高校で黒崎 美麗を助けたり、自室で義妹の凛香を甘やかしたりしていた日の昼のこと。


 秋人の転校前の高校で、彼と同じクラスに所属しており、よくつるんでいるグループのメンバーでもあった針野はりの ごうはほくそ笑んでいた。


 ――やっと秋人の野郎がいなくなったぜ。アイツがいると女子たちがみんな俺じゃなくてアイツにベタベタしちまうからムカつくんだよ。


 秋人に関する悪い噂を流したのも正解だった。アイツのことを妬んでる男は山ほどいたからな。そいつらに協力させたら一瞬だったぜ。


 ま、噂なんて全部嘘なんだけどな。クラスのカーストトップで権力のあるこの俺様が言えば愚かなやつらはみんな信じちまうからな。ひゃははは!


 そんなことを内心で考えながらも表には一切出さず、狡猾な剛はクラスの女子たちを昼食に誘う。


「今日はみんなで食堂でも行こうぜ」


 するとグループの女子たちは剛について来る。


(へへ、秋人のやつがいなくなった途端俺についてきやがって、単純な女たちだ。この調子で行けば、美沙希みさきのやつもすぐに俺になびくだろ)


 榎本えのもと 美沙希も同じクラスで、秋人を中心としたグループでつるんでいた女子生徒だ。剛が一番狙っている女子でもある。


 しかし美沙希はいつもツンとした態度をしており、剛がどれだけアプローチを繰り返してもなびくことはなかった。


 剛は、それが美沙希が秋人に対して好意を持っているからだと考えていた。


(アイツさえいなければ、すぐに秋人の次に目立ってる俺になびくに決まってるぜ。女なんてチョロいかんな)


 一週間後、そんな愚かな自信を抱いていた剛は放課後に美沙希を呼び出し「俺と付き合えよ。本当は俺のこと好きなんだろ?」とかいう自分に酔いしれたこっ恥ずかしい告白をするが……。


「はぁ? 何言ってるわけ? あんたのことなんて微塵も興味ないんだけど」


(は? 嘘だろ……)


 それでもまだ美沙希が照れからそう言っているのだと思っている剛は、さらに彼女との距離を詰めて腕を掴む。


「キモいから触んないで! てか、残り少ない高校生活バカなことに使ってないで、少しでもマシになったら」


「は? どういうことだよ……」


「あんたが嘘の噂を流しまくって、秋人を追い込んだ証拠は完全に掴んで学校側に提出したから。そのうち退学にでもなるんじゃないって言ってんの」


(は? 退学? 嘘だろ、この俺が……)


 丁度そのとき、彼の周りに大人たちが歩み寄って来た。校長を始めとした教師陣だった。


 剛は狙っていた女子に自信満々で告白したら振られたあげく、さらにその女子に自らの悪事をすべて暴かれて教師たちに連れていかれるのであった。

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