第3話 デレデレな義妹を甘やかす夜
「秋人くん、今日は転校初日で疲れただろう。よかったらこれも食べてくれ」
転校した日の夜、秋人は母の
最初は新しい父親ができることに緊張していた。しかし啓介は穏やかで優しく、今も彼を気遣って皿を彼の近くに寄せたりしてくれている。
美冬は秋人が幼い頃から女手一つで彼を育ててくれた。母親がこのような素敵な男性と新しく幸せに過ごしていることを秋人は心から嬉しく思った。
食事や入浴を終えると秋人は自室に行き、ベッドに寝転がった。
(ふぅ……やっぱり自室で休むのが一番だな。それにしても今日はあんなことがあるとは)
秋人は帰り際、昇降口で起こった出来事を思い返していた。
(黒崎さん、俺の名前覚えてくれてたんだな……)
他人に一切興味を示さなそうなイメージだったので秋人は意外だった。
――こんこんっ。
と、そんなことを考えていると部屋の扉が優しくノックされる。
「はーい」
秋人が返事をすると、お風呂に入った後だからだろうツインテールをほどいた凛香が顔を覗かせた。
「凛香、どうかしたのか?」
「えへへ、転校初日でお疲れかと思って、凛香がお義兄様を癒しに来ました」
秋人が体を起きあげると凛香はベッドに近づき、そのままダイブして彼に抱き着いて来た。
「ちょっ、凛香……!? こっ、こんなことしていいのか……」
「いいんです! 凛香とお義兄様は
(それはそうだけど……)
いくら兄妹と行ってもつい最近まで他人だった男女なのに……と思ったが、秋人は抗うことが出来なかった。
凛香は年下とは言え高校生の女子。しかもかなり女性的な魅力のある体つきをしている。さらに今は部屋着のTシャツにモコモコしたショートパンツという格好で、色白で肉付きのいい腕や太ももも丸出しだ。
サラサラな髪から仄かに感じるシャンプーの甘く心地よい香り。全身に伝わってくる体温。
(こっ、これはやばい……)
ドキドキと心臓が高鳴って行くのを秋人は感じた。いくら義妹とは言え、女性として見ないことなどできるはずがなかった。
しかし、やはりこうして甘えられると同時に妹としての愛らしさみたいなものも感じる。秋人はできるだけそちらへと感情をシフトさせるべく、彼女の頭をなでてみた。
「うにゃぁ……」
すると凛香はまるで飼い主に懐く猫のように甘えた声を出す。
「えへ、えへへへへへへぇ~。お義兄様ぁ」
(可愛い……)
それからもしばらくデレッデレな義妹を、秋人はなでて甘やかすのだった。
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