お風呂
手を引かれホテルの浴室へ向かう。 新宿もホテルはピンキリである。アメニティの充実さはもちろん、お湯が出にくいなど基本的な設備にすら影響する場合がある。しかし、この予約してきたこのホテルは、多少割高感はあるがしっかりしている。
「熱くない?」
ヤエはシャワーの湯を調節しアズマにかけた。ちょうど心地良い温度でしっかり暖まりそうな温度だった。
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、身体洗うね」
ヤエは浴室のボディソープを手に取り下半身を洗っていく。その手つきは優しくも扇情的だ。泡を伴って踊るように、しかし、赤子をあやすように。泡が弾ける度にアズマには鮮烈のような、或いは、空白のような快感が生まれる。
そのまま手は今度はアズマの胸の上を踊る。くるくるくるくると。妖精の踊りは胸の皮を肉を骨を突き抜け心臓と脳へ。それがビリビリと快感へと変換される。ヤエは自分の身体と手にソープを手に取り抱き着く形で背中を洗う。上半身も背中も強烈な快感がアズマを襲う。
ある美しい妖精は男を虜にして精気を吸い男を早死にさせるという。
今、アズマの心臓は早鐘で壊れてしまうかと思うくらいに脈打ち死んでしまいそうだった。 送り出される血液もまたはち切れそうでバチバチと音を立てていた。
「ん」
見上げるヤエは口を差し出した。本能と願望の赴くままにアズマは唇を合わせた。自分が蹂躙しているのか、されているのか。その境目はどこなのか。ヤエの舌捌きは熱が入っていると錯覚するほどの技巧だ。アズマもそれを知っているが、口や舌から伝わる快感や好きだと思う気持ちが昂奮で事実に蓋をする。
絡めた舌が口を突き抜けて水音を響かせる。その音に頭をくらつかせながら、アズマの手はそっとヤエの太ももへ。肌と泡で手がするすると動く。手から感じる
ヤエは唇を離し声にならない声を出す。
――――本当に感じているんだろうか
――――好きな子が色っぽい
――――どんな理由があろとも自分の為にこんな顔をしてくれている
――――かわいい、もっと
――――■■■い
――――もどかしい
様々な感情や想いもまた泡のように弾けて混じり合っていく。
「身体、流すね」
「っ……はい」
思考が戻ったアズマは頷いてシャワーを浴びる。消える泡を見て少しの寂しさを覚えながら排水口を見つめている。そこへヤエがコップを差し出した
「うがい、お願いね?」
うがい薬を薄めた物が入っている。プレイ前と後で出してくれるが、その前にキスをしてくれるのは自分への信頼かもしれないとアズマは思っていた。
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