第53話 呼び出し★

テイルからの手紙には前段として学院生活の近況報告がずらっと書いてあった。

 そう言った無駄な部分を流し読みしていくとようやく本題にたどり着く。


(待ち合わせ? こっちの予定も聞かずに?)


 手紙には、明日の昼頃に会いたいと言うことと、待ち合わせの場所が書いてあった。

 別に明日は、特に用事もないが、もしメイリーに用事があったり、遠出をしております手紙を見れなかったらどうしていたのか。


(返事は…テイルの住んでいる寮は関係者以外立ち入り禁止らしいし、面倒だな。まあいいか)


面倒になったメイリーは、取り敢えず明日、指定された場所に行ってみることにした。

翌日、指定された店に到着すると、


「いらっしゃいませ。予約の方でしょうか?お名前は?」

(豪華すぎる店だな。そう言えばテイルも一端の貴族か)


 予想よりも遥かに豪華な場所への呼び出しであったことに驚くメイリー。いつも生徒として雑に扱っているため失念していたが、テイルも貴族の子息、待ち合わせも高級店になるのである。


 流石にこのような高級店に、メイリーのような子供、しかも冒険帰りのためとても貴族には見えないような格好なため、従業員も不振な目でメイリーを見つめていた。


「えーと、メイリーです。予約かどうかはわからないですがここを指定して来たのはテイル。テイル・ステンドです」


その名前を聞いて、従業員が名簿を確認する。

 幸い、名簿には、名前があったようだ。


「申し訳ありません。メイリー様でございますね。テイル・ステンド様方は、もうお部屋にいらっしゃいます。一番奥の個室ですので、こ案内いたします」

「はぁ。どうも」


従業員に案内されテイルが待つ個室に向かうメイリー。


(…方か。手紙には書いてなかったが、複数人いるってことか?)


  手紙には書かれなかった同行者の存在に警戒心を抱いたメイリーが空間把握を使う。

 すると、テイルがいる部屋の中には、テイルを含め5名もの人物の反応があった。テイルが侍女を連れてきたとしても知らない人物が3人はいる計算になる。


(嫌な予感がするな。面倒ごとに巻き込まれる予感だ)


 嫌な予感はしつつも、ここで帰ればテイルは困るだろう。仕方ないので部屋の中に入るメイリー。

 するとそこにはテイルとテイル付きの侍女、そして見知らぬ少年と、それを護衛するかのような騎士風の男性2名が入室してきたメイリーを見つめる。

 そしてテイルが嬉しそうな表情を浮かべながら話しかけてきた。


「おお、メイリー。久しぶりだな」

「お久しぶりですテイル様。まあ挨拶はいいので、状況説明からよろしくお願いします」

「そうか。まあまず座ってくれ。」

「わかりました」


 少年の護衛2人はメイリーを見た途端、警戒心を高めたようなので、下手な真似をして警戒心を煽りたくないメイリーは、素直に席に着く。

 

 少年の方は、来客自体は聞いていたようだが、メイリー、と言うよりもメイリーのような少女が来ることまでは聞かされていなかったようで、とても驚いた様子でメイリーを凝視していた。


「テイル様、此方の方々は?」


 不躾な視線に晒され居心地の悪いメイリーは、手っ取り早く用事を済ませようと考える。

 するとテイルは何故か答えずらそうに視線を反らす。


「えーとだな」

「いいよ、テイル。君が信頼している師匠なんだろう」

「リュート様!」

「いいんだ。話さなければ始まらないだろ? 失礼、僕の名前はリュート。ファモール・リリア・リュートだ」


 予想だにしないと名前にメイリーは驚く。

 メイリーのように一般の市民は名前しか無い。そして貴族であるテイルには姓が存在する。そんなテイルよりも、更に名前が長くその姓が、特別な者しか名乗ることを許されない『ファモール』であるという事実を加味すると、自ずとこの少年の正体が分かってしまう。


「なるほど、王族か」


 メイリーの予想どおり、 面倒事での呼び出しであることが確定したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る