第46話 テイルの入学試験★
テイルはメイリーと言う師匠に七年間、基礎を学び、自身でもしっかりと考えたて修行してきた。
その習慣が身に付いていたため、剣術や教養の勉強などもしっかりと習得している。
当然の如く、入学試験は受かると考えている。これは過信ではない。それくらいのモノは積み上げてきている。
しかしテイルの目標はただ合格するという事ではなく、主席合格なのだ。こればかりは容易ではないと考えていた。
(あいつは世の中には自分以上の術者がゴロゴロいるって言ってた。となると子供でも俺より魔法も剣も強い奴がいるかもしれない。でも負けられない)
メイリーは単独での大型魔獣の討伐という意味の分からないことをやってのけた。
学院の入学試験で躓いてるようじゃメイリーに相応しい男には程遠いとテイルは思っていた。
これをテイルに聞けば、別に僕がメイリーに相応しい男になりたいとかそういう訳ではない、あくまで客観的視点として云々と、また訳の分からない言い訳をするだろうが。
兎に角、テイルはこれまでの修行の成果を全て発揮するべく、気合いを高めていた。
「それではこれよりファモール国立学院の入学試験を開始いたしますので各人、準備をお願い致します。」
まずは教養の筆記試験。その後、剣術の試験と魔法の技能試験となっていた。
ただ、剣術と魔法の試験で満点を取った生徒は教員との模擬戦があるという噂だ。
真偽はわからないが教員との模擬戦までいがなければ、首席合格は難しいかもしれない。
筆記試験は簡単であった。ティーチに、
「教養が出来ないのなら、メイリーの授業はお休みだ」
と言われて頭に叩き込んできた問題ばかりが出題された。
剣術の試験も魔法だけではメイリーとの模擬戦についていけないため、鍛えていたので特に問題は無かった。
そして魔法技能試験が始まる。種目は的当ての試験である。
(的当ては確か、まず的に正確に当てる魔力制御を、そして次に的を撃ち抜く威力を見る試験だって言っていたな)
「 えー、それでは次、テイル・ステンドさん、お願いします」
「はい」
的当ては任意に魔法を選ぶことが出来る。
そのためしっかりと制御出来る、低威力の魔法を選ぶか当たれば強力な高威力魔法を選ぶかも自由てある。
そのためテイルの得意な魔法矢はこの試験に、あまり適さない気がしたテイルは、メイリーが良く使用していた魔法を使うことに決めた。
「『炎槍よ、敵を穿て』」
残念ながらテイルの炎槍は、メイリーのそれより一回り小さい。しかし12歳程度の学院生未満の子供用の的を粉砕するには、この炎槍(小)で十分であった。
これで試験は終了なので、入寮するまでの繋ぎである宿に戻ろうか悩んでいると、教員に訓練所に来るように言われる。
(これは噂は正しかったってことか。と言うことは首席を狙う前段階までは来たな)
と、ほくそ笑みながら訓練所に向かった。するとそこには先客がいた。おそらく同年代だろう。
そうなると、彼も剣術と魔法の試験を満点で合格したことになる。
「こんにちは。君も先生に呼ばれて?」
「ああ、そうだよ。初めまして。ぼ、私の名前はテイル・ステンド。宜しく。」
「えーと、僕の名前は…リリア・リュート。宜しく。」
これが生涯の友となるリュートとテイルの出会いであった。
―――――――――――――――――
テイルとリュートが談笑していると、教員が訓練所に入ってくる。
「まさか満点合格者が2人も出るとは。数年に1人くらいしか出ないと言うのに。まあ今年は豊作と言うことなのだろう。こんにちは。テイル君とリュート…君。君たちは剣術と魔法。両方のテストで満点を取った。そのため教員との模擬戦をしてもらう」
テイルが考えていた通り、首席合格者を決めるために呼ばれたのだろう。となると少し疑問がある。
「あの、筆記試験の結果は?」
「ふむ。筆記試験は一般での入試を受けようとする者を選抜するための者でこの学院ではあまり重視していません。基本的に貴族家の人たちには簡単な問題なので。」
テイルとしては違和感を感じる説明だったのだが、リュートは素直なのか納得する。
「そういうことなら。それで僕たちは貴方と戦えば良いのですか?」
「うむ。そうなりますな。では早速始めましょう。まずはリュート君から。」
教員の言葉でリュートが指定の位置に移動する。
ただ、メイリーに言われ観察眼を鍛えているテイルからすれば、教員とリュートの力量差は瞭然であった。
(大人と子供、とまではいかないが流石に勝負にならないか?)
そのため直ぐに決着はつくと思ったのだが、リュートは意外にも善戦する。
10分ほどの戦いを終えた。結局、リュートの魔力と体力の両方が切れたことによる敗北と言うことになった。
「はぁ、はぁ。魔力も体力も失くなっちゃったよ。僕は魔力量なら、かなり、自信があったのに」
「お疲れ様。それで、次は私でしょうか?」
「ふむ。そうだな。次はテイル君。やろうか。」
(リュートの体力は兎も角、魔力はかなりのモノだった。それと戦っても、まだまだ余裕そうってことは、やはり実力差があったか。なのに10分以上かけたか。)
おそらくは、瞬殺してしまっては、判定のしようがないためであろうが、それにしては善戦を演じているようにテイルには、見えてしまった。
まるで、試験官がリュートを首席にしたい意図があるかのように。
(まあ、別にどちらでも構わないか。善戦よりも勝利の方が評価は高いだろう!)
「それでは始め!『突風よ』」
自身で開始の合図を出しながら、すかさず魔法を繰り出してくる。
先ほどのリュートとの戦いでは無かった動きであった。しかしメイリーとの模擬戦を経て、不意打ち耐性を持つテイルは、回避を選択する。
「『跳躍せよ』」
「『矢よ、狙い撃て』」
上に逃げると即座に攻撃を放ってくる。しかし魔法矢ごときで今さら慌てはしない。
「『千の矢よ、撃ち抜け』」
「な、なに!」
試験官も、12歳のテイルが、回避行動を取りながら、魔法を行使出来るとは思っていなかった。
しかも、自身の魔法矢を更に強力な魔法矢で防がれた挙げ句、テイルの放った魔法矢が飛来してくるなど完全に予想外であったため、対処が遅れる。
「ふ、『防げ、風楯』」
「遅い。『分かれろ、千の矢』」
風楯はテイルも良く使う魔法なので、その効果範囲はわかっている。
そのため、その楯を上手く避けるように千の矢を誘導した。
「くっ、そ。」
「『炎槍よ』」
教員が吹き飛ばされる。それを見つつ魔法を準備しておく。すると、
「ま、参った。私の敗けだ。」
「そうですか。『解除』っと。」
教員が降参した。そのため、テイルも炎槍を解除する。
これにてテイルの勝利が決定するのだった。
しかしテイルとしては不完全燃焼であり、納得していない。
おそらく生徒という事で、教員はかなり手加減してくれていた。
テイルに対しても、威力の低い攻撃魔法しか使用してこなかったのがその証拠である。
「お疲れ様。テイル、教員を倒しちゃうなんて本当に凄いね。僕ももっと頑張らなきゃ」
「ありがとうリュート。でも私ももっと強くならないと。師匠には到底追い付けないからな」
「君ほどの腕前を持つ者がそこまで言う師匠か。会ってみたいな」
とは言え、勝利は勝利である。これなら文句無しでテイルが首席合格を勝ち取ることであろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます