第30話 強敵を求めて★
いつもは荷物の輸送の合間に行っている魔獣狩りを1人でするためにやって来たメイリー。
4歳児としては動ける方ではあるが、魔法で強化したとしても、前衛として動けるレベルではなく、完全な後衛職であるメイリーにとって、魔法発動までの時間を稼いでくれる前衛がいない狩りは、かなり危険である。
しかも今日は、いつものそこら辺に出没する小型の魔獣狩りではなく、ガンルーが以前、調査している区域内において、旋風狼級の中型以上の魔獣をメインにと考えている。そのため発見出来れば、中型魔獣との戦闘もあり得る。
そんな過酷な探索なのに、連れて行ける知り合いもいないのは、やはり5歳までは冒険者活動が出来ない弊害ではある。とは言えメイリー程の魔法使いの前衛を務められるのは、最低でもガンルーレベルではないと難しいので、今回は1人であった。
(ガンルーさんは今、ライム領を離れて、レイグ領の近くの調査をしてるって話だし、いるとしたらライム領とステンド領の境目くらいか? まあそこら辺を中心に回ってみよう)
この頃、旋風狼を始め、今まで出現していなかった地域での魔獣被害が出ている。
もしかしたらこれは何かしらの異常事態の前兆なのかもしれない、という期待を抱きつつ探索を始めた。
この探索はメイリーの趣味が多大にあるが、一応家の手伝いも兼ねているので、価値のある薬草や小型の魔獣も狩りつつ大物を探す。
(こういう時、空間魔法を覚えて良かったと思う。前世の私はよく空間魔法を知っていたな)
空間魔法、『収納』を発動して別空間に素材を詰め込んでいくメイリー。
この収納空間はある程度の大きさの生物を入れると、その生物の動きに空間が耐えきれず壊れて、空間中に入っていた物が飛び出してしまうため、基本的に生物は収納出来ないが、それ以外に大した欠点も無く汎用性が高い。
メイリーとしても、これから強敵と戦うかもしれないのに荷物を背負いながらではやってられないのだ。
そんな感じで素材集めをしつつ、奥の方に進んでいくと突然、芽衣の強化した五感が何かを捉える。大物の予感がする。
「気付かれないようにと『闇よ、姿を隠せ』『風よ、纏え』」
闇魔法で自身の姿を消しつつ、風魔法を使って音と匂いの対策も済ませ、その何かの方に近づいていく。
ある程度の距離まで詰めた所で光学魔法『望遠』で相手を視認する。すると、
「えーと、風狼が、3匹。それでおお、旋風狼が1匹、2匹。いいね。じゃあ早速…わぉ、やばいなアレ」
小型魔獣の風狼3匹と中型魔獣の旋風狼2匹。これだけでもここらの辺の領地にとっては災害レベルの大事である。
しかしメイリーがそれを遙かに上回る存在を見つけてしまう。
中型魔獣の中で五本の指に入る魔獣の1匹である暴風狼を。
(風狼と旋風狼だけなら倒しきる自信はあるが、暴風狼は流石に予想外だな。さてどうしようか)
メイリーは悩むふりをする。
結論は既に出ている。探して求めていた以上の大物を見つけたのだ。もとより撤退等という選択肢は存在していない。
「勝てるかどうかはわからない。けどぶつかってみるか」
メイリーは、万が一にも狼たちには見付からないよう、慎重に接近を試みるのであった。
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