第27話 天童家☆
学校が無い土日は、基本的に家に籠もってゲーム三昧の芽衣だが、そんな彼女には珍しく、土日共に予定があったが。
土曜日は、『魔法演舞』の予選でほぼ一日潰れてしまい、日曜日の今日は、凛のお母さんにお呼ばれしたので、凛の家に来ていた。
普段なら誰かに呼び出されてもゲームを理由に断る事が多い芽依だが、凛のお母さんには色々と世話になっているため断るわけにもいかなかった。
凛の家に到着すると直ぐに凛の母親である鈴に抱きつかれる芽衣。そういうのにスキンシップに慣れていない芽衣は抵抗する。
「鈴さん。止めてください。苦しいです」
「おめでとう。それによくやったわ芽衣。流石、咲月の娘ね」
「大袈裟ですよ。まだ本戦に出場が決まった程度ですし」
「そんなこと無いわ。本当に我が子のことのように嬉しいわ」
「えー、それ我が子の前で言うことかね。ねぇ芽依」
鈴は芽衣の本当の母親である咲月と、小さいときからの親友であり、咲月が他界してからは本当の娘のように可愛がってくれていた。
その縁もあり、芽衣と凛は小さい頃からの仲なのだ。
「アイツは咲月がいなくなっちゃって、恋愛に微塵も興味が無くなって。金目当ての女に、家政婦雇うのと大差ないしって感覚で結婚した時はぶん殴ってやろうかと思ったけど。そんな親に育てられたのに芽衣は本当に凄いわ」
「おお、それは凄いな」
客観的に聞くと自分が凄く思える芽衣である。と同時に父親の駄目さ加減も底無しに思えてくる
「自分の理想とか、咲月への弔いとか色々な思いがあってあのゲーム作ったんだろうし、それが評価されないのがショックなのもまあ分かるけど…それでこんな可愛い子放ってどっか行くのは違うわよね」
「まあアホだからな。基本的に。でもあの義母さんと縁が切れたからブラマイでプラスですよ。今自由に好きなこと出来て楽しいですし」
「やっぱり2人の子供ね。」
「それにしても、あのゲームが母さんへの弔いってのは初めて聞いたな。母さんって私とか父さんみたくファンタジー好きだったっけ?」
「あ、ああ、まあそんな感じ」
どことなく歯切れが悪い鈴であった。
こうして久しぶりの再会を終え、お呼ばれした要件を聞くことになった。お祝いの意味もあったが、それと共に魔法演舞で活躍した事による周囲の反応の話であった。
「私は、職業柄色んな魔法使いを見てきてるけど、空間魔法を彼処まで使いこなせる学生は知らないわね。それは同僚や上司も同じように感じてた」
鈴の職場は日本に数箇所しか存在しない魔法技術開発所である。
そのため魔法に関しては芽衣以上に造詣が深い。そんな彼女から見ても芽衣の技術は卓越していた。
「私が知り合いだって自慢してたら、それを聞きつけた人事部の連中がスカウトしたいって言って来てさ。まあ芽衣がそういうの嫌いなの知ってるから断ったけど、もしかしたらそう言う勧誘が増えるかもしれないから気をつけてって話」
「えー。面倒だな。まあそんな物好きが多くないことを願うしか無いか」
心底面倒そうな表情を見せる芽衣。転生世界でも今、面倒な状況に陥っているのに、現実でも面倒に巻き込まれてしまった。
「そうね。でも折角良いことがあったんだから、今日は『魔法演舞』本戦出場を祝ってぱーっとお祝いでもしましょう。ケーキとか買って」
「えっ、ほんと。ラッキー」
「あんたのお祝いじゃないわよ。あんたは買い出し行ってきなさい」
「えー。まあいいや。芽衣、一緒に行こ」
「あっ、こら。芽衣はゆっくりしてていいの。あんただけで行ってきなさい」
「いえ、私も行きます。凛だと余計な物まで買ってきそうですし。」
「…そうね、お願いするわ」
「なにそれ! まあいいや、いこ芽依!」
少し憂鬱な気分になりかけた芽依であったが、天童親子に囲まれてお祝いされたことで、リフレッシュすることが出来たのであった。
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