第21話 魔法演舞予選 前☆

 凛から受け取った資料をパラパラ捲ったり、ゲームで遊んだり、ゲームをプレイしたりしているうちに、『魔法演舞』予選会当日を迎えることとなった。

 会場には県内の学校から選抜された選手たちと、予選会を観戦しようとする多くの客が詰めかけており、とても混雑していた。

 応援に来てくれた凛と一緒に会場に到着した芽衣は、受付を済ませる。


 凛の気合いが入りすぎていた結果、早く着きすぎてしまったため、選手控え室ではなく、凛と一緒に観客席で時間を潰す芽依。


「出場選手を5つのグループに分けて各グループ上位3名と、各グループの4番目で一番成績の良かった者、あわせて16名を予選通過者とする。だって。本戦への出場人数って何人なの?」

「4人だよ。予選の決勝は模擬戦闘が多いけど、毎年普通の1対1じゃ無いから分かんないな」

「予選に時間を掛けすぎても良くないと思うな。もっと楽に決めて欲しい」


 予選の予選があることに軽く絶望している芽衣は、開会式が始まる直前まで凛と喋っていた。


 開会式は、お決まりのようなお偉いさんからの有難い御言葉が終わり、やっと競技説明が始まる。


「まず予選リーグの競技は、魔法による妨害ありの『箒』レースです。5個のグループに分かれていただき、各グループ3位までと各グループ4位の中で一番タイムが早かった16名が勝ち抜けとなっています。

続きまして決勝リーグでは、予選のタイムから4名ずつ振り分けその4名での『魔法模擬戦闘』を行っていただき、勝ち残った各1名、計4名が『魔法演舞』本戦へと進んでいただくことになります。競技説明は以上となります」


(予選がレースで決勝が4人でのバトルロイヤルか。まあ決勝はともかく、予選は何とかなりそうだな。)


 VR機器の数の関係で、各グループ順番に予選を行っていくようで、芽衣は、第1グループに振り分けられた。

 特に緊張などしないタイプの芽依としては、直ぐの出番は有難い。


 色々な魔法競技に定石が存在するように、この『箒』レースにも定石は存在する。

 逃げ切りと追い込みの二種類である。魔法妨害を食らわないように序盤から独走を狙うか、終盤までは目立たない位置で耐え、魔法妨害を極力受けないようにしてラストスパートに賭けるかである。

 ただ、逃げ切りを狙う人は少ない。それは、学校の代表として来ているため、『飛行魔法』を覚えている選手も多く、レース展開は基本的に拮抗するため、序盤から独走を狙うと目立ってしまい、妨害の集中砲火を食らうためである。 

 しかし芽衣は凛の資料をパラ見した程度であり、そんな定石は知らないため、最初から全力を出し、とっとと終わらせるつもりである。


「それでは『魔法演舞』県予選、第1グループのレースを開始します。選手の皆さんは開始位置についてください!」

(まあ、アレがあれば何とかなるでしょ。…まあ支給された『箒』の性能は不安だけど)


 

 プロの魔法競技等は『箒』などの道具も注目ポイントであるが、『魔法演舞』では道具による不公平を失くすため、支給された『箒』を使う。

 ただ、量産品の『箒』を支給するため、普段よりも低スペックな品となってしまうのであった。

 

 開始のカウントダウンが始まる。


「3、2、1、レディーゴー!」

 「『飛行せよ』」


 スタート合図と同時に一斉に飛行魔法を唱える選手たち。

 他の選手たちが周り見て、誰が最初に仕掛けるか様子を伺っていると、一気に飛び出した者が1人、芽衣であった。

 この瞬間、最初の標的が決定する。


「おーと、スタートダッシュを図ろうとした選手が、これは北高校の鹿島選手だ。しかしこれは見逃せない! 各選手たち、妨害の魔法を放つ。鹿島選手、集中砲火だ。これは逃げ切れない!」


 芽衣の飛び出しを察知して魔法を放ってくる選手たち。各々示し合わせたかのように放った魔法の包囲網に、誰もが逃げ場は無いと思った。しかし、


「『距離よ、縮め』」


 芽衣が消える。他の選手たちは一瞬、魔法を受けすぎて、失格となったと考えたが違う。

 彼女はあの状態から避けきったのだ。


「な、なんと、鹿島選手。回避しました。今の魔法はもしかして!?」

「はい。空間魔法ですね。魔法が迫ってくるプレッシャーの中で、低スペックな『箒』を用いてあれ程の精度で空間魔法を使うとは。学生のレベルではないですね」


  解説者の言う通り、芽衣は空間魔法によって回避したのだ。そして芽衣の作戦では空間魔法を使ってそのまま逃げ切る作戦であった。

 レースは、スタートダッシュを決められ、空間魔法と言う飛び道具がある芽衣に追いつけないと判断した何名かの選手が、周りに妨害魔法を仕掛けだした。

 最早、芽衣を除いての模擬戦のような状況であった。

 そのため芽衣は特にピンチも無く独走状態でゴールするのであった。


  

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