第22話 魔法演舞予選 中☆

 予選、第1グループからプロの魔法競技者でも中々に使い手のいない『空間魔法』という大技が飛び出し、会場のボルテージも一気に高まる。

 妨害を受けずに進んで15分から20分ほどは掛かるような距離を、芽衣は『空間魔法』を併用することで、5分弱でゴールしてしまったのである。会場中大喝采である。

 残念なことにVR空間にいる芽衣には、その歓声は届かなかったが。

 

「あの、他の人たち、まだまだ時間が掛かりそうなんですけど、ここで待っていなきゃ駄目ですか?」

「え、えーと。ちょっと待って下さい。確認します」


 芽衣がゴールして少し経ったが、レースは妨害合戦となっており、まだまだ他の選手がゴールする、気配は無い。

 待ち惚けをくらう芽依は、流石にしびれを切らし待機していた運営に質問する。。

 運営も想定外の事態に困惑するが、すぐに本部へ確認を取ってくれる

 

「今、確認が取れました。お疲れ様です。鹿島さんは、本戦出場が決定しておりますので、それまでは自由に待機していて下さい。」

「はい。ありがとうございます。」 


 芽衣はその言葉に従い、観客席で待つ凛の元に戻るのだった。

 結局、大混戦の第1グループは、芽衣が観客席に戻ってからもまだまだ続き、最終的に途中で抜け出した男子が2位。最後まで妨害合戦に付き合い、結局第1グループの全選手を薙ぎ倒した女子が3位をもぎ取り、4位以降がいない泥仕合となった。


 多少のアクシデントはあったが、無事決着が付いたため、続いて第2グループのレースが始まる。

 凛によれば何人か注目選手がいるようなのだが、正直あまり興味も無いので早めの昼食を取っていると、同じ学校の代表選手である柏木先輩が近づいてくる。


「ああ、柏木先輩どうも。」

「久しぶりだね鹿島さん。凄かったよあの空間魔法。学生であんな精度で使いこなせる人初めて見たよ」

「そうですよね。私も芽依が空間魔法の勉強してるのは知ってたんですけど、あんなに使えるとは知らなかったです。」

「えーと、そちらは?」

「あ、初めまして。柏木先輩。私は天童凛です。芽衣の一番の親友やってます。」

「よろしくね。天童さん。」

「凛でいいですよ」

「そうか。凛さん?いや凛ちゃん。私のことも琴音で良いよ。芽衣ちゃんもね」


 琴音と凛は何か波長が合ったのかどんどん打ち解けていく。そのやり取りに興味はない芽依は、スルーを決め込み昼食を食べ続ける。


「琴音先輩は第5グループでしたよね。ぱっと見有力選手はいなさそうでしたね。」

「そうだね。突出した選手がいない分、混戦になるだろうね。でもそれなら私にもチャンスはあるだろうから、頑張るよ」

  

 その後、第2、第3、第4グループのレースは、特に波乱の展開も無く、凛が注目していた有力選手が順当に勝ち上がって来た。

 そして琴音が出場する第5グループのレースはある意味で、大混戦なレース展開となった。


「なんと、これは珍しいレース展開。ある意味第1グループと真逆の展開です。妨害有りのこのレースで妨害の魔法が一切発動されていません」

「ほぼ全員が逃げ切りを選択したことで、妨害魔法を選択した一部の選手が置いてかれ、それ以外の選手での純粋なスピード勝負! これはこれで見応えがありますね!」

「はい。多くの選手が逃げ切りを選択したことで、妨害魔法という速度をロスする戦法が使えなくなるというこの展開。珍しいですね!」


 突出した選手がいないとは、殆どの選手が感じていた。そのため妨害合戦で混戦となるよりも、スタートで差をつける方が勝機があると考え、逃げ切りを選択する選手が多く、本当にただのレースとなってしまった。


「へー。そう言う事もあるのか。」

「そうだよ。珍しいけどね。」


 結局、琴音は健闘したが4位。グループとしては勝ち上がれなかった。

 しかしスピード勝負となったレース展開が功を奏してタイムによる繰り上げでの決勝進出を決めることが出来たのであった。

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