第8話 幸運の魔法★
メイリーの姉、リリーが『真実の眼』というスキルを授与された。
このスキルの効果は相手の嘘を見破るという、単純だが強力なモノであった。特に商人にとってはかなり有用なスキルである。ライルも地味であるが『暗算』スキルによって、商売の効率化に一役買っており二人ともこの商会に必要不可欠な存在になり得るだろう。
将来、商人になるつもりはさらさら無いメイリーにとっては、願ってもない状況であった。
リリーが『真実の眼』というスキルを授かったと言う噂が出回り、そのお陰もあって商売は順調である。
これならばメイリーが、家を出て行くことになっても家族が困ることは無いだろう。
(良い展開になってきた。これなら体を鍛えたり魔法の勉強をしていても文句は言われないだろう。)
とメイリーの思惑通りに進むかに思われたが、なかなか人生はそう上手くいかなかった。
スキルでリリーのように良スキルを授与される者は希少である。そのためメイリーの両親はリリーのスキルによって、自身の商会の運気が良い事のアピールを積極的に実施した。その結果、姉のリリーが、スキル授与の前日にメイリーに魔法を掛けられた事を喋ってしまったのだ。
メイリーが当時、生後半年ほどの赤ん坊であったことを知っている人たちは、冗談として受け取っていた。
しかしメイリーの事をよく知らない人や、そんな冗談のような話にも縋りたくなるほど、切羽詰まっている人が、メイリーに魔法をかけて貰うように頼んでくる事があった。
「娘はまだ1歳にもなっていません。確かに魔法は使えますが、それがスキルに関係があるかは」
「それでもいいんです。一人息子のスキル授与なんです。出来ることは全部…」
頼まれたのが、お得意先であった事もあり、両親は仕方なく引き受けた。
メイリーも自分の明るい未来のために商会が上手くいった方が良いので、引き受けた。
するとメイリーの魔法をかけられた男の子はリリーには劣るモノの、かなりの良いスキルを授けられた。これで終わりだと思っていたメイリーだったが、このことが噂となり今まで半信半疑だった人たちがこぞってメイリーの魔法を求めるようになってしまったのだ。
(運気上昇系魔法が上達してもな。今は魔力の向上と攻撃魔法の習得に努めたいんだが。)
幸い、もう直ぐ1歳となり口答での意思表示が可能となってきたメイリーは、前世でもノーと言える人種だったので、両親に説明した。
「あれは運あげる。でもいっぱいは無理。」
「そうか。じゃあ人数を絞るしかないか。」
幸い善良な両親であったため、商会に有益な人の頼みで特別に魔法をかけるという事に決定した。
ただ断れない頼みと言うのはいつでも存在する。
それはメイリーが1歳の誕生日を迎えてすぐのころであった。この街の領主が自身の子供にメイリーの魔法をかけるように依頼をしてきたのである。
成功すれば勿論、領主に恩を売れる絶好の機会であるが、失敗すればこの街で商売がしにくくなるだろう。領主の息子のスキル授与についての依頼と言うのは、そのレベルの依頼である。
そんな重大な案件を1歳になる娘に任せなくてはならない事態が来たのだった。
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