第2話 神子との出会い
翌朝、雅史は早起きした。前日の緊張から解放され、新しい日の始まりに少しの希望を感じていた。朝食の時間、彼はダイニングへ向かう。テーブルには既にいくつかの席が埋まっている。彼は空いている席に腰を下ろし、周りを見渡した。
その時、彼の目に飛び込んできたのは、昨日庭で歌っていた女性、神子だった。彼女は窓際の席に座り、何かを静かにつぶやきながら、パンを少しずつ口に運んでいた。彼女の周りには、柔らかな空気が流れているように感じられた。
食後、職員の佐藤さんが雅史に声をかけてきた。
「雅史さん、もう神子さんとは会った? 彼女も音楽が好きなんだよ。」
佐藤さんは神子を指差し、雅史に紹介してくれる。緊張しながらも、雅史は神子の方へと歩み寄る。
「こんにちは、昨日は歌、聞かせてもらいました。素敵でした。」
言葉を選びながら、雅史は彼女に声をかけた。神子は少し驚いたような顔をした後、優しい笑顔を見せる。
「ありがとう、あなたが新しく来た雅史さんね。音楽、好きなの?」
「はい、作曲を少し…。」
会話はゆっくりと進むが、二人の間には共通の興味があることがわかった。神子の目は輝いていて、雅史の音楽に興味を持っているようだった。
その日の午後、神子は雅史を庭に誘った。彼女はアコースティックギターを持ってきて、雅史に一曲弾いてみせる。
「これ、私の好きな曲。君にも聞いてほしいなって。」
神子の歌声は、昨日聞いた時と同じくらい心を打つものだった。雅史は、音楽が二人の間に特別なつながりを作り出していることを感じた。彼は自分の作った曲を神子に聞かせることを決心する。
「僕も作曲してるんです。今度、聞いてもらえませんか?」
神子は大きくうなずいた。彼女の反応に、雅史の心は温かいもので満たされた。まだ緊張は残っているが、このグループホームでの生活が、少しずつ楽しみになり始めていた。
二人の出会いは、予期せぬ形で始まったが、音楽という共通の言語が、彼らを徐々に近づけていくことになる。
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