第3話 共鳴する心

数日が経過し、雅史と神子の間には、日々の小さな交流を通じて自然と会話が生まれるようになっていた。二人の関係は、まるで静かに成長していく植物のように、少しずつでも確実に根を下ろしていた。


ある日の午後、雅史は勇気を出して、自分が作った曲の一つを神子に聞かせることに決めた。彼は、これまで自分の作品を人に見せることが少なかったため、内心では大きな不安を抱えていた。しかし、神子には自分の本当の姿を見てほしいという願望もあった。


彼らは庭にある小さなベンチに座り、雅史は携帯から音楽を流し始めた。彼の曲は、メロディが美しく、どこか切なさを含んでいた。神子はじっと曲に耳を傾け、その表情は真剣そのものだった。


曲が終わると、神子は少し間を置いてから、静かに言葉を紡ぎ始めた。


「雅史さんの曲、心にすごく響いて…。こんな風に感情を形にできるなんて、素敵だと思う。」


雅史は神子の言葉に心からの感謝を感じた。自分の内面をさらけ出すことの怖さと同時に、受け入れられる喜びを知る瞬間だった。


「ありがとう、神子さん。あなたの歌声にはいつも励まされているんです。」


そんな雅史の言葉に、神子は嬉しそうに笑った。


その日を境に、二人はさらにお互いの音楽について話し合うようになった。雅史は神子に作曲のプロセスを教え、神子は雅史に歌の心得を語る。音楽を介したコミュニケーションは、彼らの間の障壁を次第に取り除いていった。


一方、グループホームでは、二人の交流が他の住人たちにもポジティブな影響を与え始めていた。音楽の力が、コミュニティ全体を明るくし、人々を一つにしていくのだった。


夕食後、職員の田中さんが提案した。


「雅史くんと神子さん、次の集まりでみんなに演奏を聞かせてくれないかな? 二人の音楽、とても素敵だから。」


二人は少し驚いたが、その提案に心からの喜びを感じる。これまで個々に楽しんでいた音楽を、これからは共に、そしてみんなと分かち合う機会が訪れたのだ。

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