第15話 VS上位龍、其の一
「うわ、、、エグ、、、」
僕は冒険者ギルドにて魔石を換金した。大迷宮に初めてアタックをしてたくさんの魔石を手に入れたので換金したのだが、これがとんでもない額になった。
ちなみにだが、今日はあの上位龍討伐レイドの当日である。昨日の時点でハルマさんが冒険者ギルドにポスターを張っていたが、どうやら上位龍は正式にS級に認定されたらしい。
まぁそれはともかく、階層主であるブルーミノタウロス以外のすべての魔石を売っぱらった結果、手に入った金額は脅威の1200万ゴールド。どうやら15階層以降はB級以上の冒険者しか危険度的に立ち入れないため、15階層以降の魔石は高く売れるのだという。そのため、馬鹿げた金額になった。
「そろそろ、槍も買い替えるか〜、、、」
僕は冒険者ギルドの椅子に座り、焼き鳥を食べながら呟く。僕は思ったのだ、ブルーミノタウロスとの戦いで魔剣とか魔槍とかの特殊効果のある武器があればもう少し楽に勝てたのではないかと。てか、高位の冒険者は皆魔石を使った武器を使っている。
(丁度ブルーミノタウロスの魔石も手に入ったし、お金も余裕ができたからオーダーメイドでもやってみようかな。)
僕がそんな事を考えていると、冒険者ギルドの扉が開く。そこには、見慣れた赤髪の小柄な戦士、ハルマさんがいた。
「よし、人数は大分揃っているな。」
ハルマさんはいつもの爽やかで、よく通る声を響かせて周りを見渡す。その時にハルマさんと一瞬目が合う。
「少し前から告知していた通り、今日はS級の上位龍討伐へと向かう。俺が今回声をかけた冒険者はみな上位龍と戦えると俺が判断した冒険者だ、あまり緊張せずに行こう!」
僕は周りを見渡す、だいたいの人数は20人と言ったところだろうか。しかし、その全員がある程度の強さを持っている冒険者だ。その中には、あの黒髪茶眼の女の子もいる。
「上位龍はソムニウム南東の森の奥にて巣を作って籠城している。既に何人もの冒険者が奴に喰われた、だが殺された冒険者たちのお陰で少しの情報がある。」
ハルマは全員を見ながら、そう話を続ける。風の噂で聞いたが、彼はこの迷宮都市ソムニウムにおいて最強の冒険者らしく、誰も彼がリーダーシップを取ることに異論を示していなかった。
「今回の
冒険者たちは真剣に耳を傾けて、討伐対象の話を聞いている。ただ一人を除いて。
「ハルマ、なんで私も呼びつけたの?」
「もちろん、君が強いからさ。」
「うち、冒険者じゃないんだけど?」
黒髪茶眼の女の子は、ハルマに冷徹な視線を向ける。おいおい、この子冒険者じゃないんかい。
「まぁまぁ、俺とボーロの仲じゃないか。」
「これでも忙しいんだけど、、、」
「それに、これは必要な事だ。」
ハルマは真面目な顔で、ボーロと呼ぶ女の子を見つめる。二人は知り合いなんだろうか?
「ふん、まぁ良いよ。」
「ありがとう、それじゃみんな、この後各自準備できたら南東の森へと出向くよ。」
ボーロさんが不服そうに了承すると、ハルマは全体に指示を飛ばす。その後は何故か、僕の方へと近づいてきた。
「頼りにしてるよ、シオン君。」
「ハルマさんに言われると違和感しか無いですね、僕よりも強い人がもう一人いるじゃないですか。」
「あぁ、ボーロの事ね。彼女は確かに強いよ、俺よりも遥かにね。だけど今回ばかりはそう簡単には行かないよ。」
「なんでですか?S級のモンスターと言えど、ハルマさんもS級じゃないですか。」
僕が率直な疑問を口にする。というかS級のハルマさんよりも強いボーロさんが居るのにそんな警戒する必要あるのか?
「今この街には、上位龍なんかよりも凶悪な連中がいる。俺はそいつ等が乱入してくると睨んでるんだ。」
「ッ!?悪魔教、ですか、、、」
「へぇ、アイツ等を知ってるなんて博識だね。奴等が本腰入れて邪魔してくるなら俺一人だとふつうに負けかねないからね、だからボーロも呼んだんだよ。」
確かに、下っ端っぽいデュランがあれだけ強いのに幹部とか出てきたらヤバそうだ。
そんなこんなで、一抹の不庵を抱きながらも上位龍討伐の準備をする僕たちであった。
✳✳✳
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「いやいや、あの人本当に化け物じゃん、、、」
ソムニウム南東にある森、割と広大な森林を歩いていると僕はそう感じた。
だってさ、ハルマさんが先頭を歩いていると普通なら襲ってくるモンスターたちが萎縮して襲ってこないんだよ?今のところ戦闘してないよ?本当にこの人化け物だと思う。
「皆、そろそろ危険地帯だ。警戒して。」
ハルマさんが冷静さを保ったまま、普段とは違う凛々しい声で皆にそう伝える。
ちなみにだが、この場にいる冒険者は全員がB級以上だ。A級も何人かいるけども、大体のA級やS級は大迷宮の奥深くへ遠征しているためそもそも上位龍の脱出を知らない。
だがそんな状況でも、冒険者達は自信に溢れていた。それは一重に、ハルマという存在が大きいのだろう。彼ほど自信を持たせてくれる、絶対に勝てるという確信を持たせてくれる指揮官は居ないだろう。
一歩、また一歩。森の中を歩き進めていくと段々と空気感が変わってきた。上位龍に近づいている証拠だ、雰囲気が殺伐としてきて、静かになっている。
(動死領域、新たに習得した技術のお披露目と行こうか。)
僕はハルマの後ろをついていく。そしてある一瞬、一人の冒険者が小枝を踏んで音を鳴らす。そして最先頭のハルマが少し木々の無い開けた場所に出る。
その時。
『グオオオオオオオ!!!!!!!』
激しい雄叫びが、上空から鳴り響く。冒険者たちが一斉に上を振り抜くと、そこには灰色の鱗を全身に纏う巨大な龍が滞空していた。コイツこそが、上位龍の一体、『鋼鉄龍ハクロウ』である。
「回避!!!!」
ハルマの叫びが上がった瞬間、僕たちの立っている地面が鋼鉄へと変化する。そしてその鋼鉄の地面から強烈な魔力を感じるとほぼ同時、鋼鉄の地面は変型し鋭利な巨大棘となり腹部を狙ってくる。
「ぐあぁっ!!??」
「ぐふっ!?」
僕は冷静に槍で棘を切り落としたが、他のB級冒険者はそうは行かない。あまりにも速すぎる奇襲によって2名の冒険者がすでに致命傷を負ってしまった。
『グオオオ、、、』
警戒するような声を上げながら地面に着地するハクロウ、その縦型の瞳孔を持つ白銀の瞳は確かな殺意を抱いていた。
「行くぞォォォ!!!!!」
ハルマが全身を赤い謎のオーラで包み、戦斧を引き抜いて走り出す。鋼鉄龍ハクロウとの戦いが幕を開けた。
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