第3話

 俺は腹に軽い衝撃を受けて目を覚ました。

 見るとそこにはマントのようなものを身に付けた猫がいた。

 ちなみにこいつは俺んちの猫じゃない。

 隣に住む幼馴染みが飼っている猫だ。


「お前なんでそこにいるんだ?」

「みゃ」


 首を動かして部屋の中を見回すが、幼馴染みの姿は無い。

 どうやらこいつはまた勝手に俺ん家に入り込んできたようだ。

 うちの家族もこの猫を気に入っているので、勝手に入ってきても文句を言わない。

 俺は健康管理も兼ねた腕時計、ニャップルウォッチを見た。

 朝の10時だった。

 昨日、遅かったからちょっと寝過ぎたようだ。


「おい、起きるから退け」


 しかし、猫は退こうとしない。

 それどころか布団をもみもみし始めた。


「おい、ちょっと待て。お前まさかそこで寝るつもりじゃないだろうな?」


 猫は俺を無視して布団をもみもみ。

 寝床を整えるのを止めない。


「おいこら。寝たいなら自分の家に帰って寝ろ」


 もちろん、そんなことを言っても猫に通じるはずもない。

 飼い主によってとても甘やかされて育ったこの猫はやりたい放題だ。

 やがてもむのを止めるとそのまま布団に体を沈めた。


「……このやろう」


 もちろん、強制的に退かす事は可能だ。

 だが、そんなことをすればこの猫は鳴きわめくことだろう。


 自分で言うのもなんだが、男子高校生の可愛げのない俺と他所のとはいえ、かわいい猫、親がどっちの味方になるかは火を見るより明らかだ。


 仕方がないので飼い主を呼び出すことにした。

 俺はスマホに手を伸ばす。

 あれ?ない?


 目を向けるとスマホが見えた。

 しかし、手が届かない位置だ。

 ベッドに入ってから置いたのだから届かないはずは無いのだが、やっぱり届かない。

 布団から身を乗り出てスマホを掴む。


「みゃ!」


 今の動きで目が覚めたらしく、俺の上に乗る猫が文句を言った、ようだ。


「起きたんなら退けよ」


 しかし、猫は俺に文句を言い終えると、またも布団をもみもみして寝床を整え始めた。


「……どうしても俺の腹の上で寝ないと気が済まないようだな」


 まあいい。スマホはゲットしたのだ。

 早速、幼馴染みに電話をかける。



 近くでコール音が聞こえた。

 ベッドの下あたりだ。

 と、誰かがすっと立ち上がった。

 言うまでもなく、幼馴染みだ。

 こいつ、俺の死角に隠れてやがったのか!


 幼馴染みは平然とした顔で電話に出る。


「もしもし」

「『もしもし』じゃねえよ!」


 幼馴染みがてへっと笑った。


 くそ、かわいい。


「じゃ、私帰るから」

「一人で帰るな!猫を連れてけ!」

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着飾る猫 鳥頭さんぽ @fumian

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