第3話 Treasure Dungeon
「前回の『Colorless Dungeon』は難易度ハード、いや、ルナティックとかナイトメアレベルだったからなぁ。今回は安全第一、お宝いっぱいのダンジョンにするわん」
再びのダンジョンの改装が終わったのでデバッガーとして配信を開始する。
―― ON AIR
「こんにちわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber兼ダンジョンマスター、猫乃わん太わん」
▽[魔王様! じゃないのか残念]
∈[今回はどんなダンジョンにゃ?]
◯[ところで、まだダンジョンの中じゃないの?]
「ここはダンジョンのコアルームわん。ここからもダンジョンには入れるわん。そして、今回のダンジョンのコンセプトは――」
―― 『Treasure Dungeon』
用意してきたフリップを出す。
◯[フリップw 『Treasure Dungeon』?]
▽[
∈[お宝! お宝にゃ! あれ? もしかしてダンマスってことはわん太は好きにお宝用意できるのかにゃ?]
「みんな正解わん。今回のコンセプトはお宝ダンジョンわん。ちなみにお宝を自由に用意はできないわん」
宝箱の設定としてはある程度の数やランクは指定できるものの中身を固定することはできない。
∈[えー、一攫千金お宝ウハウハは無理だったかにゃー]
◎[ダンジョンに宝箱はロマンだね。実際のところ普通のダンジョンにも宝箱あるの?]
◆[あれ? そういえばアンメモで宝箱見たこと無いな。あ、元々の『Unmemory Dungeon』で木の宝箱あったか]
「MMOだと宝箱も取り合いになりそうな気がするわん。さて、それでは実際のダンジョンに入ってみるわん」
メニューを操作して転移陣を起動する。ちなみにダンマス権限でダンジョン内を自由に転移もできるが、今回は通常の入場と同じ扱いの転移である。
軽い浮遊感の後、ダンジョン内の部屋の隅に転移した。転移先は基本的に部屋の中のどこかである。部屋と部屋をつなぐ廊下部分に出ることはないようだ。
∪[お、今日はダンジョン内が明るい。遺跡型?]
▽[前回のが眼に悪すぎたからなぁ、普通のダンジョンだとホッとする]
◯[もっとも一瞬でリスポーンしてたからあまり意味はなかったよな]
「あれ、思った十倍ぐらいは前回のダンジョンの評価が悪いわん」
やはり実質の探索時間がほぼなかったのが問題だったかもしれない。
だが、今回は前回の反省を活かしてモンスターにすぐやられることのない易しいダンジョンに調整してある。
その証拠に転移した部屋にモンスターの姿はなく、中央には複数の木の宝箱が鎮座していた。
◎[あ、あれって宝箱だよね?]
∈[た、宝箱にゃ。三つもあるにゃ]
◆[モンスターハウスならぬお宝部屋?]
「一攫千金のギャンブル性のあるダンジョンもロマンだと思うわん。まあ、浅い層だとそれほど良いアイテムが手に入るわけではないけどね」
部屋の中央の宝箱に近づき、しばし悩んだ後真ん中の宝箱に手を掛ける。
―― カパッ……パクッ
❤〚え、えぇーっ! わん太くんが……〛
◯[く……喰われたーっ!]
◆[これは、トラップ? いや、ミミックか?]
暗い、狭い、けど、なんだか落ち着く狭さだ。
「よいしょっと。いきなり当たりのミミックだったわん」
宝箱のフタを大きく開けてのびをする。
❤〚あ、わん太くん無事?〛
▽[食べられてはないな。むしろ、ダンボールに入った捨て犬?]
∴[ぬいぐるみは餌扱いになっていないとか?]
「ちょっと、もっと食べられたボクの心配をしてわん。ところで、これ、どうやって倒そう?」
木の宝箱風ミミックとはいえ頑丈そうで素手で壊せそうにはない。
◎[武器とかアイテムとかは持ってないの?]
◆[あ、そういえばローグ系ダンジョンは武器もアイテムも持ち込み不可だよな]
∴[ついでにレベルも1のハズ……って詰みでは?]
「ぐぬぬ。なんでかボクはミミックに食べられはしてないけど、普通ならここでリスポーンな気がしてきたわん」
▽[まあ、一層目からミミックは初見殺し過ぎるな]
◯[これはまたしてもコンセプトの問題w]
∪[奇をてらわずにまずは普通のダンジョンを造ってみたら?]
「うっ、あまりの正論に心が痛いわん。こうなったら、次回は普通にダンジョン探索をしながらどんなダンジョンが良いか考えることにするわん」
∈[それが一番にゃ。むしろ最初からそうするべきにゃ]
▽[あ、正論は効くからやめてあげて。ほら、本格的に捨てられた子犬みたいになってるwww]
❤〚か、かわいい、拾って帰っていいかな?〛
「今日のところはこれで終わるわん。こうなったら、次回はみんなも何かアイディアを考えといてわん。それではばいばいわ~ん」
開けっぱなしの宝箱のフタをパタッと閉めた……
―― 本日の配信は終了しました……
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