第2話 Colorless Dungeon2
転移陣から足を踏み出すと部屋に居たモンスターがこちらに気づく。
―― ポヨンポヨン
黒いボールのような塊がその場で跳ねている。
∈[黒いにゃ。新種のモンスターかにゃ?]
∴[いや、多分モンスターも色がついてない状態で見えてるだけかと……]
※[はぁ?! どうしてそんなところをいじれるの??]
―― ポヨンポヨーン
少しずつ近づいて来た。
「これは、どうみてもポヨポヨだわん」
もっとも、モンスターの分布設定をしたのはボクだから出現モンスターはわかっている。このダンジョンの一層目はポヨポヨしかいない。
◎[『ポヨポヨ』ってあのスライムみたいなやつのこと?]
◆[こっちの周辺ではあまり見かけないけど、所謂スライムはアンメモでは『ポヨポヨ』だな。誰かさんのせいで]
∈[水辺で見つかってるけど、結局【いいね】数でポヨポヨ優勢にゃ]
アンメモではプレイヤーが初討伐のモンスターには名前をつけることができる。
なお、ポイントを払うことで他のプレイヤーも命名は可能だ。複数の名称がある場合にプレイヤー投票的な【いいね】数で表示の優先度が変わる。
「さて、まずはモンスターの鑑定が大事わん!」
モンスターをじっと見つめて鑑定を行う。鑑定自体はスキルではなく標準装備になっている。
不確定名:◯い不定形
説明:鑑定されていない不定形の
ダンジョン内で一意な名称を設定することが出来ます。
「はうっ?! 不確定名が更に伏せ字になってる?」
◯[草w 丸い不定形かもw]
∴[色をつけない設定で伏せ字とか
「これは……、さすがに難易度が高すぎわん。先に調整したほうが良いよね」
―― 「Hey! メルリン、鑑定表示は伏せ字にしないで、そのまま表示してくれる?」
簡単な変更なら音声アシスタントを使用したほうが早い。家で使用している音声アシスタントと同じものらしく違和感なく使用できている。
―― わかりました。設定を調整します……
不確定名:青い不定形
説明:鑑定されていない不定形の
ダンジョン内で一意な名称を設定することが出来ます。
「なおったわん」
◯[なおるんだぁ。音声アシスタントで修正可能とは]
※[何その便利アシスタント。私も欲しい]
▽[そういえば、青いポヨポヨが稀に水を飛ばしてくるって本当?]
「レベルが高いと魔法が使えるわん。そこらにいるポヨポヨでは使えても水滴レベル?」
∈[そうなのかにゃ。ところで、このダンジョンのポヨポヨのレベルは何にゃ?]
出てくるモンスター設定にレベル指定は……、あれ、あったかな?
―― モンスターのレベルは現在ランダムになっています。
「えっ、ランダム?」
『౩ధ౸ౣఘౡౘద౯ఇఇ౻౨ౚౣం౬౨』
音声アシスタントの声に一瞬気を取られたボクの耳に良くわからない音が聞こえた。
▽[あ、わん太、まえ、前!]
◎[ふくらんだ?!]
∈[にゃにゃっ! 魔法陣にゃ!]
大きく
「えぇーっ!! ちょっとレベルいくつわーん?!」
―― 99レベル、現在設定可能な最大値です。
魔法陣からあふれる赤い炎がダンジョンを埋め尽くした。
あ、エフェクトは色が付いてるんだ……
◆ ◇ ◆
❤〚わん太きゅん、おつかれー〛
◆[即リスポーン?]
◯[結局、さっきはどうなったの?]
ダンジョンのコアルームに戻ってきた。このダンジョンに設けられたダンジョン管理用のコアルームだ。
「99レベルの赤いポヨポヨの炎系の魔法に焼き尽くされてリスポーンしたわん」
▽[あれっ? 青いポヨポヨじゃなかったのか]
∪[『青い不定形』であって『青いポヨポヨ』ではなかったね]
◆[火の魔法を使ったからやっぱり赤いポヨポヨなんじゃないかな]
「それじゃあ、反省会するわん。今回の『Colorless Dungeon』はどうだったわん?」
∈[いや、どうだったもないにゃ。ボツにゃボツ!]
▽[一層から99レベルのダンジョンはさすがに勘弁してほしいな]
◯[そもそもモノクロなダンジョンも眼に悪すぎる]
「まさかのコンセプトからの全否定! 99レベルは……設定漏れわん」
確かに見づらかったし、色で種類を判断するポヨポヨとの組み合わせは面白いと思ったんだけど……
「むう、即デスした身ではなんにも言えないわん。それじゃあ、このコンセプトはあきらめるわん」
▽[それがいい。実装されてしまうと辛そうだ]
∈[次はどんなダンジョンにするにゃ? もちろん次を作るんだよにゃ?]
∪[宝箱一杯のダンジョンとか良くない?]
「宝箱かー。それは良いわん。お宝いっぱいダンジョンで考えてみるよ。それでは、今日はこのへんでばいばいわ~ん」
◯[おやすみわ~ん]
❤〚ばいばいわ~ん〛
∈[おたから楽しみにゃ]
―― 本日の配信は終了しました……
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