色鉛筆の赤くん

むらた(獅堂平)

色鉛筆の赤くん

 あるところに、十二色の色鉛筆たちがいました。

「やーい、お前の母ちゃん、真っ赤かー」

 黄色くんと黄緑ちゃんが赤くんを馬鹿にしていました。

「なんで、そんなこと言うんだよ。酷いよ」

 赤くんは拳を振り回して、黄色くんにぶつかります。

 

 バキッバキ

 

 黄色くんは三つに折れてしまい、死んでしまいました。

 黄緑ちゃんが叫びます。

「い、い、いろえんぴつごろしー!」

「うるさい! 黙れ!」

 赤くんは黄緑ちゃんを力一杯殴りました。

 

 パキッ

 

 黄緑ちゃんはふたつに折れ、死んでしまいました。

「ひいい」

 それを目撃した緑くんと水色くん。水色くんは青ざめているようですが、元々の色と変わらないのでわかりません。

「みーたーなー」

 赤くんは追いかけ、緑くんと水色くんも真っ二つにしました。


「あれ、黄色くんや水色くんたちはどこ?」

 青くん、紫くん、橙色くんがいなくなった色鉛筆たちを探します。

「どこ行ったんだろ? 目が覚めたらいなくなっているし」

 その時でした。落とし穴がパカッと開き、三色鉛筆は落ちていきます。

「ふはははは」

 赤くんが作った落とし穴の罠でした。なんということでしょう。

「喰らえ!」

 赤くんは手に持っていた石を三色鉛筆に次々と投げつけます。しばらくして、鉛筆たちは折れ、動かなくなりました。


 画用紙で作業をしていた桃色ちゃんと薄橙くんが様子を見に来ました。

「あれ? 誰もいない?」

 黒くんと茶色くんはまだ画用紙で作業をしています。他の八色が色鉛筆ケースにいないことを不審に思いました。

「もしかして、何か悪いことが……」

 桃色ちゃんが眉をひそめて言いました。

「なんだよ。悪いことって」

 薄橙くんは薄い色がさらに薄くなりました。怖いのでしょう。

「ねえ。黒くんと茶色くんを呼んで、一緒に行動したほうがいいんじゃない?」

「そ、そうだね」

 桃色ちゃんの提案に薄橙くんは頷きました。


 画用紙に戻ると、驚きの光景がありました。黒くんと茶色くんが真っ二つに折れ、倒れていたのです。

「黒くん! 茶色くん!」

 二色は同時に叫び、近寄ります。

「ダメだ……。死んでる」

 黒くんと茶色くんの芯を確かめましたが、芯動は感じられません。

「くそっ! 誰がこんな酷いことを」

 薄橙くんが悔しそうに画用紙を叩いた時、

「俺だよ」

 赤くんが登場しました。

「どういうことだ?」

「こういうことだよ」

 赤くんは力一杯殴りつけます。


 ボキッ


 薄橙くんはあっさり一撃で死んでしまいます。

「さあ、最後はお前だ」

 赤くんが近寄ってきます。桃色ちゃん大ピンチです。


 *


 *


 *


 人間の子供が画用紙にちらばる色鉛筆を見つけ、不思議そうに首をかしげています。

「あれれー、ちゃんとしまっていたはずなのに」

 色鉛筆を集めます。赤以外はすべて折られていました。

「どうしよう。ママー!」

 人間の子供が人間の大人を呼びました。

「どうしたの、ぼうや?」

「あのね。色鉛筆が折れちゃっていて」

「あらあら。それじゃあ、この色鉛筆たちは捨てて、新しいのを買いましょうね」

 大人がにっこり笑うと、子供も嬉しそうに笑います。

「じゃあ、一本だけ折れていない色鉛筆あるけど、これも折っちゃうね」


 バキバキッバキ


 赤くんはあっけなく死んでしまいました。

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色鉛筆の赤くん むらた(獅堂平) @murata55

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