第2話 ここは…

ーー「もう一杯付き合えよォ」

「いやぁもういっぱいなんで…すみません…」


はぁ。


会議が無事に終わったのはいいが、酔った部長の相手などまっぴらごめんだ。

別に部長が特別嫌いだからではない。

俺は昔からこうなのだ。

極度のめんどくさがり屋で、人と必要以上に関わるのが苦手。


ガチャン!


宙を舞ったビールジョッキが俺に向かってくる。


「すみません…!すぐに拭くものを…!」


おまけに不運だ。


居酒屋を出ていつもの寂れた路地裏に入る。街灯はひとつの通りに一、二個ついていればいい方だ。

手入れが行き届いているとは到底思えない。


「ただいまー。」

誰も居ない部屋に向かって言うのは寂しいものだな。

もう足も手も痺れてクタクタだ。

早く寝たい…。

そう思いながら服も着替えずに布団に横たわる。

疲れた体が眠りにつくのにそう長くはかからなかった。


ー深い深い森の中。

そよそよとした風が吹き、碧い葉が揺れている。

小鳥は楽しそうに空を飛び、地面は苔や新芽で覆われている。

日差しは木々で遮られとても気持ちいい。

そんな森に、俺はいた。


「ん…ん?!どこだここ…」

夢……?

いや、夢…ではない、よな。

地面のひんやりとした感触がしっかりと手に伝わってくる。

あたりは一面、木、木、木。

さっきまでボロボロのアパートで寝てたはずなのに。

今、俺は森にいる。


「…とりあえず、歩くか。」

こういう時、妙に冷静になれるのは俺の数少ない長所のひとつだと思う。

きっと森を出たら小さい村でもなんでもあるだろう。

そこで人に聞けばいい。

…問題はここが日本ではない可能性が高いということだ。

あんな植物や木は見たことがない。

というか日本にあんなアマゾンみたいな熱帯雨林は存在しないだろ。

どうしよう。

もしここが海外だとしたら。

「金持ってねぇぞ…」

金だけの問題じゃない。

言葉も話せない。

そんな心配をしながら歩き続けていると、どこからか獣の鳴き声みたいなのが聞こえてきた。


『ピューロロロロー』

「なっ…!」


ものすごい地鳴りと風で一瞬視界を遮られたが、目を開けると目の前にどデカい鳥みたいなのがいた。


「っなんじゃこれぇぇぇ!!」

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