第2話 洗浄球 Part.2 お試し企画 ~可能性を秘めた優れもの——…はじめに入れた個体が悪かったのか?  いや、最大の原因は……(利用要項は、よく読みましょう)~


【ペットをで洗ってはいけません。

 油断すると侵入されることもありますが、もってのほか。シャレにもならんです。

 これはあくまでも、フィクションでございます——と、いうことでよろしくお願いいたします😿

 いや……小話の中のそれは、いちおうペット用です🙀】


 ▽▽ 本文、まいります ▽▽




「――…。本気かいなの? まだ、一度も使ったことがないんだよ?」


「この子、きれい好きなの」


「うん、だろうね……(猫はたいがいそうだし。意外に、どこだろうと寝転がるけど……)でも、かわいそうじゃないか?」


「個室はなかなか空かないし、共同のところにいっしょに連れていくと、みんなに嫌がられる……(この子、連れて、脱衣場の近くを通るだけで、微妙な目で見られるようになっちゃった……)」


「う、うん、そうか……(たぶん、その……いつかの風呂場騒動の延長らしい事情は、前にも聞いたけど)。でも——だからね…。君が講習に出る合間にでも、サロンここに寄ってあずけていってくれれば、こちらで……」


「それ、七日続けたでしょう? そしたら、警告が入ったの。このまま毎日続けたら、わたし割りあての月間の予算(生活費用面/教材費用は別口)〝上限超過オーバーするよ〟って。これ…。使うのは無料なんでしょう?」


「…うん。安全確認できて軌道にのるまでは、そうだけど——(とり入れたはいいが、使うのは気がすすまないから当面は、心力行使料金のみの〝おためし希望者企画〟にして……。それで、なにか問題が起きたら、製造元むこうに責任おしつける方向でいこうって、オーナーが)……。

 でも、きれい好きだからって、あまり洗いすぎるのも人間が手を出し過ぎるのも良くないんだよ? そのの負担になる。猫は自分で毛づくろいグルーミングするしね…。

 ダブルコートの中毛種中毛だけど、毛玉だまになりにくい、さらっとした毛質だ……。多めにかよしても、週一くらいの頻度ひんどで来てくれれば……」


「……(なんだろう……説得されてるみたい。ほんとは使わせたくないのかな…?)――これ、安全じゃないの? 〝うに〟と〝うこっけい〟とかいう鳥は、だいじょうぶだったのでしょう?」


「うん、まぁ。製作元には、そう聞いてるけど……」


「……ねえ。やるならさっさとはじめたら? それ(を)洗わずに帰ったら、あなた、また夜明け前に起きだしてお風呂はいることになるよ? そいつだって、待たずに勝手にぬけ出して、お風呂、行っちゃいそうだし……」


 いっしょに、ここを訪れていたルームメイトに行動をうながされると、少女は腕の中にいた小柄な猫を所定の場所におろした。

 そのカッパーレッドの瞳をのぞきこんで言い聞かせる。


「だいじょうぶだからね、プロム。きれいになるからね? 拘束なんてしないから、じっとしてるんだよ?」


 周囲に視線を泳がせている愛猫に、状況を危ぶんでいるような微妙な表情しぐさが見えた。

 少女は、その灰色の毛並みをぐりぐりとでて、あやしてから、こころもち身を退いた。


 透明な立体球が密封されると、内部に残された猫が、しゅたっと四肢を立てるのが見えた。

 閉じこめられた灰色の生きものの小脇。

 そのが入っている本体を模して小さくしたような、球体が転がっている。

 その利器の活用にさいし。対象物の顔面を保護する目的のもとに付属ふぞくされた無色透明な備品だ。

 そのとき。その物体を視界に見て意識したのは、中にいるだけだった。


 猫の飼い主(少女)が《心力》を注ぎはじめ——

 じゅわじゅわ側面から湧きだした泡が、その球体内部で踊りだす。


 めったには鳴かないなのだが……。


 手根ポゥひたす水流と水滴にとりまかれたその猫は、背中に〝むわしゅわ〟と泡をなすりつけらたことで脚を乱すと、さほどなく、ぐっと四肢を丸めた。

 そして、あるふさふさのしっぽをふりまわしながら、地響きのようなうなり声をあげたのだ。


「うぬなななぉおおおお……——~ぉぅ……」(←…NO……かもしれない)


 ともなく。


 ——ぐぉぅずささぁあぁっ……っと。


 濁音をおびた破裂音がさく裂し、

 あふれだした泡沫ほうまつぬるい水滴——それに粉々になった破片が飛びちって、その建物の二階北側の壁と屋根の一部が大破した。


 🫧🫧🧼🫧🫧


 〝容疑者(←明記しながら取り消し線を引いてあらわしたい…)〟ならぬ事件関係者は……


 若き? トリマー(年齢不詳/外見年齢・人間換算で 十七歳くらい? 男子/亜人系。猫種もひき受けるやり手)。


 フリスティアという名の(まもなく 十一歳になる)少女と、そのルームメイト( 十三歳 女子/すみません。はじめトリマーの彼と後者ルームメイトは、背景的な人物設定だけで、名前は未設定です。必要になった時には考えます……💦💦💦)。


 それに、フリスティアが飼っている中毛にして、二股しっぽの灰色猫——プロムナード(一歳になるやならずやの子猫のような体型だが、推定 五歳 ♂)。

 瞳はカッパーレッド。背中にそって白い毛並みのラインが、ふわふわ感の増してゆく二本のしっぽの先まで、すっと入っている(完全一致もしていないまんまでもないがらの配分がそれを思わせるからってスカンクあつかいしたら、彼に嫌われます。知性が高いのです)――…



「……申し訳ない……(めるべきだった……)」


 従業員ゆえに現場に居合わせ——…

 接客にあたっていた少年トリマーが、みずからの甘さと監督不行きとどきをびた。


 事件関係者と向き合っているのは、たまたま近所にいて、誰より早くこの場に駆けつけた黒髪の麗人だ――(後に先導師陣に名を連ねることになる女性。マヒアグラシア当時 十八歳/《天藍てんらん理族りぞく》)。


「まぁ、完成品として納品されたのなら、壊れたり手放したり埋もれたりしなければ、いつか誰かが試すことになる。(あつかいがどうあれ)順当じゅんとうなところでしょう。怪我ケガがなさそうで、よかったじゃないなによりよ

 …――入れたのは、そのね……」


「はい……」


 地面に落ちてけるような小声で応じた少女フリスティアかいな。ちんまりと収まっているグレイッシュブルーの中毛猫は、のんびり自身の肩のあたりの毛並みをめて整えている。


「念のため、ペットセンター※に行って、診てもらいなさい」


 飼い主である少女が、無言でこくりとうなずく。

 そこで、となりにいたルームメイトの少女が、こころもち身を乗り出して、力いっぱいに主張した。


「それがいいと思います! ふつうじゃないから、あんな目にあってもあんなんなっても無事平気なんです。やっぱりきっと、妖威よういの一種です。

 わたし、(そいつは)〝猫の皮かぶった猿か野人の化けもの〟だと思います! おかしいの。毎日のようにお風呂に入りたがるし、神出鬼没なの入ってくる

 わたし、見たんです! ふだんは猫の手なのに、手足の指が……人の指みたいに〝びよぉ~ん〟ってびて、猿みたいにぶらさがったりするのを……だし、ぜったい、化けているの! キリ(※ フリスティアの通称のひとつ)は騙されてるのっ!!」


「……。これは、ペットトラブルだったりするの?」


 投げかけられた疑惑に、フリスティアが、はっと顔をあげる。


「いえ! ……ケンカしてないです。この子プロムを洗おうと思ったの(は)自分わたしです……。この子(は)、ただ、すごくきれい好きで。シャンプー好きで……。そんなに毛も抜けないし……(でも、浴槽にも入りたがるから、みんなに嫌がられて……)。それで……(うう、違うと言いたいけど、やっぱり、それもこれもペットが原因の隣人トラブルなのかもしれない)。ごめんなさい…。

 借金になっちゃうんでしょうか……?」


「うぅん。そうね…(ずいぶんと派手に壊れちゃったけれど……)。でも、その心配はないわ。あなたたちは、ここの教え子なのだし、こちらでなんとかする」


 マヒアグラシアは、損壊した建物を仰ぎ見ながら、さほど熱心とも思えない気のない吐息をこぼした。


(使ったのが子供でも、はじめて外部で起動した結果がこれじゃぁ、製造元どこかの責任問題にもなっちゃうかなぁ……)


 事実関係を聴取ちょうしゅし精査するにあたって——

 この騒動における不備が明らかにされるのは、翌日になってからである。



 ……として、とりあえず、今回は終了といたします。

 テキトーでごめんなさい(これでも、いちおう、それなりに整えたつもりです)。



 非常に重要なところ? を、ひとつ。

 プロムは♂だけど、純粋にお手入れ好きなだけです。

 のぞき目的で、お風呂場へおもむくわけではありません。飼い主依存対象が女子なので、そうなっているだけです(宿舎事情を書くと長くなるので、そのへんは省略)。

 妖しいものがあたりまえのように存在する世界なので、雌雄の違いを意識して毛嫌いしている女子も少なくないようですが……フリスティアのルームメイトが疑いをかけているように、プロムはただの猫ではありません。

 彼は、一日一回、身ぎれいにして、毛並みのお手入れができれば満足なのです(入浴行為はその延長で、するようになっただけです。脚がつかなくても、彼は器用に浮かんで湯面に顔をのぞかせます)。

 毎日シャンプーするなんて、大切な被毛の負担になってしまいそうですが、彼の場合は問題にならないのです。

 あくまでも、フィクションの中の生きものです。

 彼のありかたを深堀りすると、予定している一部方面のネタバラシになっちゃいますので、このへんにしておきます(【神鎮め】における主人公君から見たら、あくまでも側面方向ですが……)💦



【※ 〝動物愛護ペットセンター〟は、対象がペットの時のみ多用されがちな通称になります。

 この組織にペットサロンはあっても、鳥獣専用のクリニックは存在しないので、人類系以外その方面の医療行為が必要になった時は、飼育物(植物以外)を総合的にとりあつかう研究所めいた施設をたずねることになります。

 〝(畜産)試験場〟〝(飼育)トレーナーセンター〟〝飼育専〟〝鳥獣専科〟など、場合や気分によって呼称が変化しがちなその施設の正式名称は、地味に〝飼育舎しいくしゃ〟です(かつては中央付近《南の園庭界隈かいわい》にあった飼育小屋獣舎/厩からの継承です)。

 その管轄領分としてありながら、牧舎ぼくしゃ・鳥獣小屋、生簀いけすなどは、独立させたかたちで、個別に存在します(収容もしきれないので、放牧されがちですが)。

 清掃や動物臭など、もろもろの問題は、法印使いが解決いたします(ご都合主義ですね(笑) いや、そんな中に事故は起こります)。

 法印士の資格がなかろうと、それなりに長く従事・精進すれば、その部門のプロになれたりします】



【——あとこちらは、〝魂呼び子〟から見ての出来事になります。

 対象が、なにやら混じっていそうなこともあって、入れてはいけないものを入れた結果のように伝わっておりますが、実際は専用の利器によるもの。

(サイズ変更までは叶わぬまでも、本文であげているように、海胆ウニおよび若鶏による生体利用検査はパスしております/失敗したとしても、素材に問題が出ていなければ、調理してみんなで食す方向で行われました)。

 この段階ではペット用(小動物専用)ですが、人体に使えるようになれば、介護医療に加え、工夫をこらせばリラクゼーション革命を起こしそうな夢の製品規格(使うを好むか好まないかは人それぞれです)。

 つまるところ、この騒ぎは人災だったわけですが、(手順をちゃんと踏んでも、中の猫がおとなしくしているとは限らなかったのですが……)

 それを手掛ける職人たちの興味と熱意はすでに他にむけられていて、てきとうに受け流されもしたので、半世紀が経過した現在もお蔵に入ったままにされております。

 それでも技術者・研究者とはあくなき人種もの。思いたてば、いずれはきっと……(きっと、目と鼻と口と耳を保護する手段も変わってくることでしょう。どうでもいいっちゃ、どうでもいいので、表に出すか出さないかは悩みどころですね)。

 ——もちろんこれは、必須動作要員心力行使者の代物です】


 余談ですが……。マヒアグラシアは、名を出していないだけで、本編の老師陣の集まりの中に、まぎれて出演済だったりします(べつに彼女と識別されんでもよいような、ほんの、ちょいセリフですが…)。

 〝メア〟じゃないあたりです。

 メアも彼女も、【神鎮めの3】で、出番待ちしている状態にあります。

 フリスティアは、もうひとつ先になります(かなり印象が違うはずです)。

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