神鎮め【裏(番外編)~さいど💠すとーりぃ~】

ぼんびゅくすもりー

第1話 洗浄球 Part.1 (半手動洗濯機 ~本店で積み重なっていたアレです~)


 【神鎮め1/魂呼び子】における試験遠征先からの帰路なかば。

 ある宿での一幕ひとまく——


【まずは、前置きとして、本編をのぞいていない方や途中離脱した方への注釈。

 セレグレーシュ少年( 15歳未満?)が本作の主人公。

 アントイーヴ君(満齢 18歳)は、このたびおこなわれた試験で、後から合流しております。

 プルーと呼ばれている女性(よわいをあらわそうと思えば、幾通りかあり)は、主人公のつき添いです。彼女は別室で入浴させているので、この場にはおりません。

 あと、〝魂呼び子〟をお読みになって下さった方へ。

 もうひとりの後からの参入同行者(その年齢、数えられないこともない)は、宿を中心に、そのへんをふらふらうろついております。

 彼はそこに置いても不干渉になるので、べつにいいか……とも思いましたが、気になったので追い出しておきました——と、いうことで、この場に居ないふたりは、今回、登場しません。

 深夜とまではいわぬまでも、旅行者はだいたい引きこもって休みはじめていようかという時刻。

 この日、彼らが宿泊したのは、質朴で閑静な集落になります】


 ▽▽ 本文、まいります ▽▽



 ……わしゃわしゃ、ざばざば、じゃばじゃば……

 ごしごし、こしこし、むぎゅむぎゅ……

 ぱっしっ、ぐっぐっ……


 宿泊を決めた宿の敷地の一隅いちぐう

 雨よけの屋根が渡されている吹きっさらしの星空のもと。

 一連の作業の締めくくりとして、すすぎに利用した水が、かたわらの地面にぶちまけられる。


 ふゅっ…ぱしゃっ……


 野外で洗濯作業をすませ、濡れた衣類の小山(さほどの量でもない)をかかえて戻ったセレグレーシュは、そこでなじみのない光景を目撃した。

 

 同伴者のかたわらの床に見いだした見慣れぬ物体。

 目を離すことなく、部屋の扉をぱたんとじ、立ち位置を変える。

 そして、驚きの感情そのままに両眼をみはりながら、しまりを失いかけた口でいを投げた。


「――…それ、なに?」


「ん?」


 ふり向いたアントイーヴは、不可解そうにまばたきした。

 セレグレーシュが見ている物体に目星をつけ、かたわらにちらと視線をなげる。


「《 FabricファブリックCleanerクリーナー※1(繊維清掃人掃除機こと洗浄球せんじょうきゅう)》だけど……?」


 それと示されているのは、直径が一〇〇センチあまりの透明な球体だ。


 開口部が見あたらないのに、どうやって投入したのか。

 空洞になっている球体内部で、男物の衣類がふわりふわりと、からまることなく踊るようにゆれていた。


 球の内側そこで華麗にのたうっているのは、アントイーヴが日中、身にまとっていた衣類一式だ。

 いまは薄手の部屋着によそおいをあらためている。


「見たことない? ランドリーとか脱衣場……それに法具店本店でも見かけるだろう?」


「それの三、四倍ありそうなものなら……。でも、使っているのは見たことない」


「あれは試作品だからね。

 無料で利用許可提供されてるあたりも、体力・心力と時間があまっている人間しか使おうとしない。でも、先人のお古とか……このサイズの機具あたりの一、二世代前の規格なら、けっこう持ってる人がいたと思ったけど……」


そういうものなのそうなの?」


「そういえば君、ルームメイトいなかったね単身だったね


「うん……」


「洗濯はどうしてた?」


「あつかいが面倒そうなものは業者に出して、やすいところは自分で洗ってた」


「そうか……。せっせととり組んでいるから、(洗濯するのそういった作業が)好きなのかと思ったよ」


「べつに必要だからやってただけで……。それ、持ってないし…」


「うん。中古でもけっこうるからね。最近は、手が届かないかもしれない。

 これももとは、母のものなんだ」


「ふぅん……(高価なたかいのか。まぁ、法具はみんな高いけど)。

 じゃぁ、無料で提供しているっていうのは……」


「宿舎の脱衣場とかフリースペースを占領圧迫している中古規格ならね。

 あのへんに収容さおさめられたものも、ほとんどが利用有料レンタル活用で、使われたことのない新古品なんだけど、いくつかクリーニング業者が手放した古い規格もまぎれている。そっちは自由に使っていいんだ。

 でもたしかに…——。どれもかなりの癖モノらしいから、手を出そうとする人はいないかもね。

 宿舎によっては使用を禁じていたと思うけど、君のところは(たしか)……利用を申し出れば断りさえすれば、使えるはず(許可を求めた者の実力にもよるけど……)」


「なにが問題なの?」


「素材が燃えたとか、変質したとか……。入れてはならないものを入れたことによるボヤ騒ぎ。

 ひどい時には機具が破裂したりね……。

 まぁ、は、うまく使、布団とか……緞帳どんちょう、タペストリー、絨毯じゅうたん――大物も洗えて乾燥までこなせるすぐれものなんだけど、性能が高い高性能なだけに、あつかいに難があって……。

 このレベルの(乾燥機能を備えていない)規格と違って、あの規模サイズのものは、変形・隠蔽いんぺい不可なのにくわえ上(に)、動作も燃費も最悪なんだ。

 暴走したり異常反応エラーおこしたりするから、作動中は放置もできない目も手も離せない

 ここ数年、あれの問題点を改善しようと製造元が試作品をせっせと放出し続けていてね。もう欲しがる者もいない人気もないから、《本店》もあれの置き場にこまってる。

 《法具ほうぐ》にも、素養や技術力で造り手を選ぶ職人専門職によるものがあるんだけど、これもそのひとつで……。

 その彼らが開発費用と時間の捻出ねんしゅつに価格・生産調整するものだから、この種類の機具全般の価格高騰こうとうしてる。

 まぁ、ないならないで、どうにかなるもの(※2)だけど、便利だから要望引きも少なくないし……さすがに黙ってもいられなくなったのか、このところはしきりに先導師らと《天藍てんらん (※3)》のあいだで企画交渉が交わされている。

 古くてもいまここにある~この~規格はいま、金貨三枚はする……これでもいくらか下がったんだ。

 (それはそうと…)この遠征中はどうしてた?」


「どうって、なにが? 自分で洗ってたけど?」


「プルーの洗濯物洗いものも君が(洗ってるのかい)?」


「彼女は手筈がある集落人里で、まとめて人に依頼してた…――(頼まれもしなかったし、そんなの向こうも嫌がるだろ。仕上がりにうるさそうだから、要求されてもたぶん、そうすることを勧めた。長く足を止めてもいられなかったから、乾かす手助けくらいはしたけど……)」


「それでよくわからない荷物が増えるんだね…(――めてるのは気づいていたけど、外部に依頼してるとまではそこまでは気づかなかったな…。彼の手がいて…そっちに意識が向くまでの機会待ちなのかと…)

 ――そうだ。君も使ってみるかい?」


「いいのか?」


「うん。多少、要点を外そうと使えるいけると思うよ。

 この道具と作業にはこれにはこれの七つ道具というものがあってね……。

 汚れの程度・種類によっては、(用水もふくめて)どれも必須というわけではないんだけど…――

 まずは、適量の《水》…ただの水でもいい。

 雪や氷、湯でも泥水汚水でもいけるけど、《由宇可水ゆうかすい(※ 法具のひとつ/各解説は後述こうじゅつ)》の方がなにかと融通ゆうずういて効果も高い(時間も短縮できる)。

 ——汚れの傾向に応じて分離分解効果をしめす~対応する~固形物キューブや溶液……。

 素材の柔軟性・耐久性・消臭効果を補強調整する法具もの

 作業中、内容中身を見せたくない時にもちいる迷彩——。それに…あとこれは、どこまでも気分の問題なんだけど、洗ったものの香りづけに……」


 🌐🌐🌐


 その頃、法具店本店では——…


あら、ようこそいらっしゃい。こんな時間に売り込み営業? とうとう、完成したの?」


「いや……。いまひとつみたいなんだ……」


【※ この訪問者は、亜人にして《天藍てんらん》とよばれる一派だけど、その方面の言語は使いこなせない個体になります。

 口調が少し男子っぽいけど、小柄な女子です。

 以下、描写・形容ともあらかたはじく対話形式でまいりますので、影絵ならぬ不詳人物モードでどうぞ】


「それなら、どこか(の)寮か個人場所を融通してひきとってもらって(煙たがられるでしょうけれど)。

 ここに持ってこられても邪魔だから」


月間月に(の開発)と従来規格じゅうらいきかく、一対三(の割合で製造するとり組むことで)で話がついているはずだ!」


「(それは)店でとりあつかうという取り決めコトではなかったでしょう。こっち関わってタッチしていない(要望・苦情は述べたけどね)。

 ——出足が鈍かろうと需要がありそうなものは多少無理してもひき受けたりするけど、在庫散乱しているものを置けるようなスペースはここにはないの」


「欲しがる人間がいないとは限らない――そのへんにまた積み重ねればいいじゃないか。

 オブジェとしてもなかなか……」


 ……ナカナカじゃ

 見てのとおりいりません間にあってます

 それのために 場所をもうけようと思えば、配置換えが必須なの(四本目を立ちあげる行程なんて、計画すら考えたくない)——

 でも…まぁ……かさばるものではあるけれど、空間のレンタル料金ショバ代、はらうというなら考えないでもないか(な)」


「いや、そんなゆとりは……」


「もしくは——…売れるところ売れ筋を特価で提供してくれるなら検討しないでもない…


「むぅぅ……その商談には乗りたくない。

 乗りたくはないが……。……考えさせろ」


OKはい、検討するのね。ゆっくりしていくなら飲みものでも出そうか? 出直すのなら、その所持品をお忘れなく♡」


「こんなに多機能なのに……使えないやつが悪いんだ……」


高価なものこういったもの造ってるあつかってると感覚が狂ってくるかもしれないけれど、費用と効果コスパ買い手一般の反応とレベル(も)考えて、有用性がありそうなあたりでお願いします」





▽▽ 後記注釈 ▽▽


 なにげに汚水をぶちまけましたが、彼らがもちいる洗剤の類は自然に還るものです。

 住民が捨てるポイントを決めている場合もあるので、所によっては、はばかれる行為ではあります。


(いちおう洗剤で泡立っているあたりは、所定の下水口に廃棄しているのではないかと……。

 なぜ残りもそこに流さなかったのか――

 いささか行儀が悪いですが、たんに、ここで彼にやらせてみたかった場面映え? 狙いのパフォーマンスです💦

 もしかしたら管理が不充分で、排水溝が小枝やわらやなんやらで詰まり加減だったのかもしれませんねぇ(笑))。


【※ 1 《 FabricファブリックCleanerクリーナー》は、むりくり私製かばん(英)語です。(≓洗濯機ウワッシングマシーン

 繊維製品全般専用で、衣服にも限らないので、こちらにいたしました。

 いっときの遊興からこじつけてみましたが、出しても日本語表記にすることが多いと思います(これらは、お店で積み重なっているものと違って、縮小・隠蔽いんぺい所持が可能です)。

 ちなみに殺菌・除菌性能も備えるこれは、靴や革製品、合成繊維やぬいぐるみの類もいけます。

 ひっくるめて《洗浄球》と呼ばせますが、金属・鉱物・陶器類や漆器類に木製品、野菜・果物類など、洗う素材によって専用機が存在します。

 それぞれ、横文字表記化しようと思えば表現が違ってくるのでしょうが、現段階では考えてなかったりします/今回のは、ほんの出来心です】


【※2 その利器(洗浄球)がなくとも、従来の手法で洗えばいいのです。《法印(※4)》をもちいることで対処することもできる。

 手で洗うにせよ、棒や板を使うにせよ、法具を持ちだすにせよ、いずれも着手する者の腕前によるのですが、型にはまった処置よりは細々としたケアが可能になります。

 (こりだすと作業工程も増えますので、手間ではあります)】


【※3 《天藍てんらん》は、それら特殊な道具《法具ほうぐ》を製造する一派の呼称です。

 瞳の瞳孔の色(群青色なので天藍石から)とその特性から、《天藍てんらん理族りぞく》と呼ばせております(理族は造語)。

 《法具士》とも呼ばれますが、彼らのほかに、その肩書き(法具士)でよばれる人間の一派(カナイと呼ばれる一族)もございます。

 《天藍てんらん理族りぞく》とされるのは、特定の亜人(力ある存在の類と人間の混血種で、その特種な資質~法具を造る上での特性~を備えた者)のみです。

 この物語内における《法具ほうぐ》は、仏具ぶつぐにあらず。特異な効果をそなえる、利器・道具・素材になります。魔法道具とも言える。

 活かせるか・使いこなせるかどうかは、適正に左右されます】


【※4 《法印ほういん》は、法具によって築きあげられる方式。

 術式の完成形の総称。

 数ある法具の性質を利用して、陣形なり作用なり、構成を組みあげることで目指す効果を現実にするのが、《神鎮め※5》《法印士※5》《法印師※5》《法印使い》などと呼ばれる彼ら使い手の特殊技能にして専門】


【※5 それらの肩書きで呼ばれるには、それぞれ条件が存在します】


 以下は、その条件。

 必要なさそうですが、参考ていどに置いておきます。


 《神鎮め》は、力ある存在との《きずな(契約)》の成立(技術的に未熟だろうと契約が成った時点でこれとされる)。


 《法印士》は、その道の正規の修了資格。


 《法印師》は、その道の指導者資格(法印士もふくめ、ちまたにはそれらを自称するかたりも……なかには条件を満たしていなくても、それに値する能力をみせる例外があります)。


 《法印使い》は、その道の素養をみせる玄人くろうと素人しろうともひっくるめた呼称です。《法具》を活用する才能があり、そこそこ使えればそれとされます。

作中ここでは、法具それらに影響をおよぼせる素養・才能を《心力しんりょく》としています。霊力とはまた異なる資質のあつかいになります)

 


 ——くどくどと、申し訳ないです。おそまつさまでございます。

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