初めての通夜
西村与経
いなかった
実話 今でも意味が分からない話
中学卒業後、フリーターをしてた俺はその日も暇を持て余し友人宅で遊んでた
友人は実家暮らしだったがあまり親が干渉してくることもなくたまり場として最適だった
ある日珍しく友人母が友人を呼び俺は部屋に一人になった
すぐに友人は戻ってきたがどうも表情が暗い
俺「どうした?」
友人「◯◯のお母さん亡くなったって」
共通の先輩の母が亡くなったとのことだった
すぐに通夜に参列することになり、友人母から喪服を借りた俺は初めての通夜や喪服に変なテンションになっていた
行きはタクシーだったが当時中学卒業したての俺にとってはそれも非日常で、"喪服に身を包みタクシーに乗る友人"の写メを撮ったりしていた
思えばこれがよくなかったのかもしれない
先輩の母とは面識がなく、俺が参列して良いものか友人に尋ねた
友人「参列者が多ければ多いほど都合が良いみたい、良い家柄らしいからね」
俺「ふ〜ん」
式場につくと俺の従兄弟や他の友人たちも参列していた
先輩の親が亡くなったことに対する悲しさや落ち込む気持ちはあるにはあったが、面識のない人の死、初めての通夜、久々に会う友人たち、無知で非常識な当時の自分
あらゆる要素が俺を通夜に適した感情から遠ざけた
順番にお別れをするとのことで、俺は従兄弟や友人の後ろに並びその時を待った
一足先に友人が棺の中の故人と対面した
悲しそうな顔をしていて少し緊張が走る
知らない人とはいえ亡くなってしまった方との対面だ
遺族に一礼する
当然先輩もいた
自分の番になり棺を覗く
その瞬間俺は総毛立った
そこにはいるはずの故人の姿がなかった
怖いという感情はなく、なんで?どこ?なんで?という気持ちで頭がいっぱいになった
初めての通夜なのでこういうものかとも思ったがそんなわけがない
少し奥を覗いたがあまり変な挙動をするのもあれなので、その場を後にした
俺「棺の中さぁ、お母さんっていた?」
友人「…いたよ、綺麗だったじゃん」
初めての通夜 西村与経 @nishimurayodatu
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