No.06 四ツ社
その名の通り、4つの社が向かい合うような形で建っている。社どうしの距離は5メートル程度。それぞれ同じ形、大きさで、違いは祀られている神様が違うことくらいである。東西南北の4つの方角をつかさどる「四神」を祀っているとされる。
昔は近くの山村の住民が参拝や管理をしていたようだが、2004年頃から高齢化や過疎化により管理が及ばなくなり、2012年には最後の住民らも転居したため、それからは完全に放置状態である。
そのため、屋根は落ち、柱も折れ、西側のものに至ってはひしゃげる寸前であった。どの社にも賽銭箱がないのはもともとだろうか。危険な状態であるため、中の探索は断念した。
この四ツ社に関しては、「社にお供えした食べ物が目を離した一瞬で完食されていた」、「社の周辺の川や山中で釣りや採集を行っていたら、いつの間にか採ったものが減っていた」という話がある。この情報だけでは眉唾な話だ。
そこで釣り好きな友人に協力してもらい、四ツ社から徒歩20分ほどの場所にある渓流で釣りをすることに。釣った魚に関しては都度バケツに入れ、そのバケツは定点カメラで監視する。
開始1時間で、友人が40㎝を超えるイワナを釣り上げた。それからも友人はどんどん釣り上げ、開始から3時間経過した時点で友人の成果は7匹。一方、釣りにご縁のなかった私は竿にかかりすらしなかった。さらにその20分後、友人が8匹目を釣り上げた。無心で川の流れを眺めていた私がハッと我に返り友人の釣果を記録しようとしたとき、友人がバケツを覗いて大きな声をあげた。
魚の数を確認すると、友人が先ほど釣ったのが1匹、そしてバケツの中に3匹で、4匹減っている。定点カメラを確認したが、怪しい人物も野生動物も写っておらず、魚が減った瞬間も特定することはできなかった。
その後、ネットに散らばる同様の現象の情報を集め、整理していったところ、四ツ社から半径3km以内の場所で採集を行った場合に発生しやすい傾向にあることがわかった。これらの検証やSNSの声から、採集したものがなくなるという現象は四ツ社の性質で間違いないだろう。
廃れているとはいえ神社であることには違いないので、奇怪廃墟と呼ぶのは気が引けるが、奇怪廃墟に認定させていただく。
しかし……祭神はずいぶん、食い意地の張った神であるようだ。
追記
釣り上げたイワナは私たちでおいしくいただきました。最初に釣り上げたイワナが無事だったので友人はホクホク顔でした。
奇怪廃墟探索家・でーる
奇怪廃墟データベース 大久野 頁 @many-pages
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