12話 作戦会議?
「う、ううん……」
もぞもぞ、と布団に寝かされていた美少女王女こと、リリアが目を覚ますと、そこは見知らぬ天井で、同時に見知らぬ部屋だった。
王城よりかは豪奢という点では劣るが、内装に用いられている家具や壁紙絨毯などの質は明らかにこちら方が上という評価を心の内でしながら、リリアは布団から出る。
「ここは一体……」
見知らぬ部屋で目覚めたため、かなり混乱しているリリア。
何をするべきなのかを考えようとすると、ガチャ、と扉が開く。
「あ、起きましたね~」
「えっとたしか……エヌルさん、でしたか?」
「そうですよ~。ふむふむ、どうやら無事に、魔法が解けたようですね~」
「え、無事……?」
何その不穏なワード、と内心ツッコミを入れそうになる口を抑える。
無事じゃなかった場合、一体どうなっていたのか、という疑問は考えまい。
だって、怖いから。
「こちらへどうぞ~」
「あ、は、はい」
なぜかついてくるよう促され、疑問を感じつつも、エヌルの後をついていく。
道中は全く持って見知らぬ空間が常に広がっていた。
窓の外から見える景色とか、なんかわけわからなかったし。
よくわからない、闘技場に、よくわからない温泉施設に、よくわからない大きな屋敷のような施設に……その他にも色々な施設がとても心が落ち着く草原にどどん! と乱雑していた。
わけがわからない……ここはどこ? と正直混乱しそうになる頭をどうにか正気に戻しつつ、恐怖する。
「こちらですよ~」
「ここは?」
「まぁ、作戦会議室的な場所ですね~。あ、アリス様ももういますよ~」
「わ、わかりました」
なんでこんなところにいるんだろう、そう思いつつ中に入ると、そこにはなんか立派な椅子に頬杖を突きつつ、足を組みながら座るアリスの姿があった。
なんと言うか、椅子の大きさは明らかにアリスよりも一回りも二回りも大きく、似合わなさそうなのに、その雰囲気がかなりマッチしているという、不思議な状況だった。
そのアリスは相変わらず表情が薄いが、リリアが入ってきたのを確認すると、小さな笑みを浮かべ、
「ようこそ、我がロビンウェイクの基地へ。歓迎するわ、リリアール=クオン=グラントさん」
歓迎の言葉を告げた。
「あ、え、はぇ……?」
「さて、適当に座って。早速、作戦会議をするから」
「リリアール様、こちらにどうぞ~」
「あ、ご丁寧にどうも……」
エヌルに椅子を引いてもらい、そこに座る。
なんだか、動きに不自然さが一切なく、自然体でこなすエヌルにすごいなぁ、という感想を抱く。
が、一番目を引くのは間違いなくアリスだろうか。
なんというか、こう、支配者的オーラがすごい、みたいな。
(カッコいい……)
リリア、少しだけ見惚れた。
こう、ギャップ的な。
「早速始めましょう。まずは……今回の達成目標を決めるわ。その前に……これは相手が王族と国だからこその質問。だから、しっかり答えてほしいわ。リリアさん、あなたはどこまでならば許容する?」
「……それは、わたくしのお父様やお兄様方の処遇、ということでしょうか?」
「えぇ。その通り。少なくとも、善人ではなく悪人側であることは知っているわ。故に、最悪の場合は……殺すことを厭わない」
ゾクッ――!
殺す、そう言ったアリスの言葉は冗談でもなんでもなく、本気だと思わせるほどの圧と殺気が込められていた。
本当に、この人たちなら本気でやるだろう、そう理解させられるほどに。
アリスが放つ殺気に、体が小刻みに震え、冷や汗がだらだらと流れ、心臓がうるさいほどに早鐘を打つ。
だが、ここで何も言わなかったらどうなるかわからない、だから、と震える体をなんとか奮い立たせ、ぎゅっと拳を握りしめて、真っ直ぐにアリスを見据えると、自身の回答を告げる。
「……正直に、言います。お父様たちが改心することは無いでしょう。可能であれば命だけは取らないで欲しいとも思いますが……もしも、それが不可能な事態に陥れば、その時は……」
「……いいのね?」
「はい。もとより、城を抜け出した時点で覚悟はできております」
「……そう。ありがとう、そして、ごめんなさい。言いづらいことを言わせてしまって」
その瞬間、包んでいたアリスからの殺気がぴたりとなくなり、同時にふっと、苦笑いを浮かべながら、アリスはリリアに感謝と謝罪の言葉を述べた。
肉親を殺してもいいか、という言葉に真っ直ぐ答えたのだから。
「では、リリアさんの許可も得られたところで、作戦を立てましょう。と言っても……大筋自体は既に決まっていて、作戦は至ってシンプル。お城に乗り込む、騎士団を倒し、愚王と王子を捕まえる。これだけよ」
「わかりやすいですね~」
「変に凝ってないのがいいっすね!」
「え、それでいいのですか……?」
「えぇ。そもそも、しっかりとした準備期間なんてないから。というより……今日の夜、作戦決行よ?」
「……え?」
作戦内容があまりにもこう、大雑把過ぎたので、リリアは思わず呆けたような声を出した。
え、ほんとにそれで? みたいな。
「いえ、だから今日の夜、王城に殴り込みだけれど?」
「…………あのぉ、作戦とは?」
きょとんとした表情を浮かべながら、もう一度説明と言わんばかりに、内容を再度言ったアリスに対し、リリアはなんか心配になってきた。
「あくまでも大筋はこれ、というだけよ。細かいところは今から考えるわ。そうね……時間的にあと二時間程度で」
「二時間で!? そう言うのって、もうちょっと時間を掛けるものではないのですか!?」
「時間が無い、以上よ」
「えぇ……」
本当にこの人大丈夫なのかな……? なんてことを思ったが、少なからずアリスの強さは目の当たりにしている。
人攫いの集団をいとも容易く撃退してのけた戦闘力は少なからず、一定以上の力量は持っているだろう、と。
「今回、わたしが訊きたいのは、夜における王城の外、及び内側の警備状況について。あとは……隠し通路の有無。それから、騎士団の兵舎やあと地下牢なんかもあればそちらも知りたいわ。要するに……知っている王城の情報が全て欲しい」
「……あの、わたくしでも知らないことはありますけど、それでもよければ」
「えぇ、構わないわ。情報が一つあるだけでも手間が減ると思えば安いものよ。情報こそ、戦闘では重要なものだから」
現代地球にて生き、尚且つ組織のトップであったからこその考え。
情報がいかに重要かなど、学校の歴史の授業で嫌というほど理解させられるし、何より組織抗争における情報収集が不足していれば負けの確率は跳ね上がり、反対に十分な情報さえあれば対策を立てられる。
だからこそ、情報は戦いにおける最も重要なファクターだと。
今回必要なのは攻め込む王城の情報。
そして今、この場には王城で暮らしていた王女がいるのだから、当然聞いておいて損はないだろう。
その情報の真偽はともかくとして、何も知らないよりかはマシ程度に考え、だが、全てを鵜呑みにするのではなく、多少は疑うつもりではあるが。
……もっとも、アリスには男性ほどではないしろ、女性相手でも嘘かどうかの判定は可能なので、そこまで問題にはならないが。
「それじゃあ、説明をお願い」
「わかりました。王城には――」
そこからは、リリアによる王城に関する情報の開示が行われた。
まず、夜の王城の警備については、内側に関しては大体廊下に等間隔で兵士が常駐している状況であり、国王や王子たちがいる空間には兵士が二十名以上は警護をしているとのこと。ただし、部屋が小さければ、部屋の外などで待機し、何名かはいつでも出られるよう、隠れているとか。
それ以外にも、魔道具による侵入者を感知する物を設置しており、常に城内を見張っている。
反対に、外の警備は内側ほど厳重ではなく、門の前に十名程度、建物自体も高い城壁が存在するため、そこまではいない。
しかし、城壁内に存在する芝生エリアには罠や監視用魔道具などが設置されているので、侵入するにしても難しいとのこと。
続いて、隠し通路。
隠し通路は、城内の至る所に存在し、中でも王族が深く関わるような部屋やエリアなどにも存在し、リリアも全てではないがいくつかの位置は知っており、そこからの侵入は一応可能である。
騎士団の兵舎は、城内ではなく、王城のすぐ傍に建てられており、兵士たちはそこで暮らしている。
だが、そう言った者たちは半ば無理矢理騎士団に所属させられている国民であったり、奴隷の身分に堕とされた者たちが押し込められているような物なので、かなり衛生面が良くない。
反対に、やたら偉ぶるような者は王城内におり、しかも贅沢をしており、そこまでとはいかずとも別の場所にそこに準ずる者たちが住む兵舎も存在する。
最後に地下牢。
こちらは王城というより、王城と兵舎の中間にあたる位置の地下に存在するとのこと。
リリア自身も行ったことは無いので伝えられている情報でしか知らないが、かなり酷い場所であることは副団長を通して知っている。
以上が、リリアが開示した王城の情報だ。
「なるほど……となると、隠し通路から行くのが隠密をする上では必須かもしれないけれど……んー」
「どうかしたんですか?」
「いえ……リリアさんは家族からどのような印象を抱かれているかわかる?」
「え? そうですね……少なくとも良い印象は無いかと」
「その理由は?」
「なんと言いますか……わたくしの身内はその、人を使い潰してこそ王族であり貴族、みたいな信条があり……わたくしは基本的に反対だったので、あまり、という感じです、ね」
「……へぇ? なるほどなるほど……使い潰す? それが、あの愚王共の信条なのね?」
「ひっ! そ、そそそそ、そうです!?」
突然悪魔の如き笑みに空間が軋みそうなほどの殺気を放つアリスに対し、小さな悲鳴を漏らしつつも(同時に別の意味で漏らしそうになったがなんとか踏みとどまった)、同時にやたらびくびくしながらも肯定。
それに、ふぅん? と悪魔の如き笑みをさらに深め……殺気を消した。
「……とりあえず、殺すとして」
「殺す確定!?」
「いえ、人を使い潰す愚者に生きる価値無し、がわたしの信条だもの」
死ねばいい、と最後に小さな言葉で付け加えたが、リリアには聞こえなかった。
「……まぁ、抹殺するのは一割冗談として」
「あれ、抹殺に変わっていませんか!? しかも、残りの九割本気じゃないですかやだー!」
「ふふ、女はお茶目な方がモテるのよ?」
などとウインクしながら言っているが、この美幼女、中身は男だし、表情が薄いせいで普通に片目を瞑っているようにしか見えない。
中身男なので。中身男なので!
「お茶目のレベルが鮮血に染まっている気がするのですけど……」
「気のせいよ」
抹殺はおかしいような、と思ったが言わなかった。
「冗談はさておき……リリアさん、王城内の見取り図のようなものはある?」
「あ、流すのですね……えーっと、侵入者を出さないようにするために、そう言った物は無く……」
「ならいいわ。となると……まぁ、少し反則じみているけれど……エヌル」
「いつものですか~?」
「えぇ、いつもの、よ」
「かしこまりました~。では……《遠視》《メモリアライズ》。できましたよ~」
アリスの意図を汲んだエヌルは、すぐさま何かのスキルを二つ発動、するとエヌルの手元に何枚かの大きな紙が出現する。
それを広げて見せると、そこには王城の見取り図が描かれていた。
「なんですかそれ!?」
いきなり意味不明な物が生み出されたことに対し、リリアが思わず叫ぶ。
そりゃぁ、いきなり自分が住んでいた場所の見取り図が虚空から現れれば驚くし、叫びもするだろう。
あと、未知すぎるスキルだったので。
「リリアール様が住んでいたお城の見取り図ですね~」
「そういうことを訊いたのではないですよ!?」
「落ち着いて、リリアさん」
「アリスちゃん……」
「今のはエヌルが得意とする、二種のスキルにより敵地の建物情報を一瞬で手に入れられる技術よ」
「わたくしが情報を開示する必要ありました!?」
「当然。この組み合わせは何も制限が無しに使用できるものではないわ。まず一つ、調べたい場所の全体像を視認すること。次に、その建造物の情報を一定以上持っている事。最後に、記憶力と想像力が優れている事。これらがなければ不可能な技術なの」
「そ、そうなのですか……?」
ここで軽く説明だが、エヌルが今し方行った組み合わせというのは、本来は建物の見取り図を生成するものではない。
まず《遠視》は遠くの物を見るためのスキルであり、これは場所をほとんど問わない。
しかし、視たい場所が遠ければ遠いほど魔力の消費は莫大な物となるし、そもそも使用中は常に魔力を消費するので、結局魔力が高くなければ十メートル程度が関の山なのだ。
あと、この《遠視》は基本的に視点を移動させることはできず、できるとしても別の場所に視点を転移させ、その一点を見ること。
どのような状態か簡単に言えば、普通に自分の目で真っすぐ見た光景しか見られない状態、なのである。
続いて、《メモリアライズ》は、使用者の脳内にある情報を紙にプリントアウトした状態で生成するためのスキル……ではないが、今回はこのために使用しているので、そのためのスキルだ(ここでは、そういうことにしておく)。
ここで言う情報とは、記憶だったり、自分が考えた文章であったり、絵などだったりする。
つまり、エヌルが今し方行った行為というのは、まず《遠視》により城の全体像を把握し、建物の情報と合わせて城内を、優れた記憶力と想像力を元手に見取り図を製作する、というかなりイカレた行為なのである。
実際、リリアが情報を開示しなければ、見取り図はかなり適当な物になっていたため。
理由としては、情報が無いとピンポイントで部屋を視ることができないから。
「ふむ……わかりやすい。さすがね、エヌル。あなたは頼りになるわ」
「わ~い~! アリス様に褒められました~!」
「うわー、いいなー、エヌル。俺も褒められたいっすよ、大将」
「あなたはこの後活躍してもらうから。その時に」
「よっしゃ! 約束っすよ!」
「えぇ、もちろん」
「……」
なんか、思っていた悪の組織と違う……とリリアは思った。
少なくとも、自身が知る限りでは、一年前まで活動が活発化していた組織、それも悪の組織たちはかなりこう、悪人ばかりで、略奪行為はするし、人攫いも何気にするし、酷いと奴隷商なんてやっていたくらいだ。
なのに、この組織はどうもトップと部下たちとの関係性がかなり良好で、今回の一件だって悪の組織ならば漁夫の利を狙えばいいものを、自身が支配する街の住民たちが攫われたことと、何より気に食わないから、が今回動く理由だと言うのだから、一体どこが悪の組織なのかわからなくなる。
そこまで考えたところで、リリアは一年前まで動いていた組織たちの中に、悪の組織であるにもかかわらず、滅多に悪行をしないトップが不明の組織があったということを思いだす。
たしか、秘密組織が治めていた地域を奪うか、もしくは悪徳貴族が治める土地を襲撃してはその地域を奪ったり、商人を襲ったりと、全てが問題のある場所ばかりを狙った組織だったと。
もしかして……と、そこまで思ったが、言わなかった。
なんか、無粋な気がしたので。
しかし、かなり頼りになる人たちであることはわかった。
「……んー」
「アリス様、どうしたんすか?」
「いえ、極大威力の魔法で吹き飛ばした方が早いのに、と思っただけよ」
「ちょっ、アリスちゃん!?」
「やらないわよ? 今回は救出すべき住民たちもいるはずだから」
もっとも、一年の間に攫われた人たちが全員そこにいるかは不明だけれど、という言葉は飲み込んで。
だがしかし、アリスとて無関係の人間を害する気など全くない。
というか、絶対にやってはいけないルールとして定めている。
だが、それは裏を返せば無関係の人間がいない状況であれば……ということでもあるのだが。
「とはいえ……狙うべき人物は計四名。団員たちは……まぁ、虐げる側に回っている者たちは捕らえるとして……それ以外は、分担作業かしら?」
「では、私は王子たちの方に回りましょうか~?」
「二人になるけれど……まぁ、エヌルなら問題ないわね。頼んだわ」
「お任せくださ~い~」
「じゃあ、俺は騎士団長を狙うっすね。あとは、騎士団長に賛同する奴らもセットで」
「恨みを晴らしてきなさい」
「了解っす!」
「それならわたしは……国王の首を狙う事にしましょう。後は……悪人を軒並み潰し、善人はそのまま逃がす……いえ、その前に逃がした後の場所が必要ね……エヌル」
テキパキと誰が誰に対処するのかを指示出ししていくアリスだったが、ふと逃がし場所が無いことに気付き、エヌルを呼ぶ。
「はい~」
「あなたの転移の魔法って、自分だけしか使用できないものなのかしら?」
「私が使うのはそうですね~。もともと単独での行動が多かった物ですから~、大勢向けの転移魔法はまだ習得途中でして~」
「習得をしようとしているの?」
「はい~。いつか、アリス様方が戻ってこられてもいいように、私が移動用の魔法を習得しておこうかと思いまして~」
転移魔法が使えれば、とも思っていたが、考えてみれば護衛は隠密状態でいることが多かったし、と思い直してみれば使えない方が不思議ではないだろうと考え直し、同時に習得しようとしているのは素直にありがたいと考えていた。
というか、やっぱ優秀だな、と。
「少なくとも、今日中には不可能、ね……」
「あ、一つだけ方法がありますよ~?」
「え、本当に?」
このままだとかなり負担が増えると考えたところで、エヌルが何でもないような感じで方法があると言って来た。
「はい~。たしか、アリス様は《複製》が使えましたよね~?」
「えぇ、そうだけれど……」
「それなら、例の転移魔法陣を複製し、その行き先を私が書き換えれば一発ですよ~」
「書き換え、できるの?」
「問題ありませんよ~。0からの構築はまだ不可能ですが、行き先の書き換え程度でしたら十分で」
「問題なし、ということね。……でも、本当にあるかどうかはまだ確定したわけじゃないわ。先ほどの《遠視》には映っていたの?」
「ゴリゴリにありましたよ~。本来は妨害用の魔道具を設置していたのでしょうね~。ですが、ハイエルフの私にかかれば合ってないようものですよ~。少なくとも、クルン様や探☆偵様くらいでないと~」
「あー……たしかに、あの二人が製作する物は強力ね……」
苦笑いを浮かべながら、そう答えるアリス。
リリアには何を言っているのかがわからず、小首を傾げた。
「となると、城内に侵入した後、わたしとエヌルは魔方陣までは一緒に行動。エルゼルドは兵舎を抑え、わたしたちは魔方陣の制圧。……あ、でも、考えてみれば書き換えの必要はない、か。イグラスがいるから」
「あ、そうですね~。なら、今回は不要で~」
「えぇ。それなら、侵入後は全員バラバラに行動した方が早いわね」
「そうっすね。俺も、その方がやりやすいっすよ」
「私も負担が無くなるのならば楽ですね~。あ、ですが、リリアール様はどうしますか~?」
「そうね…………今回は私と一緒に行動してもらいましょう」
少しだけ考え込む素振りを見せた後、アリスは自身と共に行動するように話す。
「あ、アリスちゃんと……?」
「えぇ。仮に副団長を助けたとして、相手は見ず知らずの私たちをすぐに信用するかどうかは別問題。それなら、あなたを連れていた方が余計な手間を増やさずに済む。……もちろん、あなたには怪我一つ負わせないと約束するわ」
「……あの、てっきり断られるのかと思っていたのですけど……」
「どうして? もとよりあなたの依頼。ならば、言い出したあなたが最後まで責任を背負うのは当然のこと。だから、あなたも行くの。安心して、先も言ったようにあなたはいるだけでいいから。怪我なんてさせないわ」
遠回しに、一人だけ安全地帯にいるのは許さねぇからな? とアリスは言っているのだが、リリア的にはカッコいいと思ってしまった。
無表情なのに、当然のことように話す姿や、少女にしか見えない目の前の娘が組織のトップだなどと普通は信じられないだろうが、明らかに強そうな人たちを従えている姿はどうしたって彼女の強さを教えられる結果にしかならないわけで……あと、乙女心的に、絶対に怪我をさせない、という一言がマジでぶっ刺さったので。
「わかりました。よろしくお願いいたします」
「えぇ、任せて。……さて、侵入経路だけれど――」
ここからは、細かいことを話し合い、そして目標としていた二時間きっかりに作戦会議は終わり――。
「……殴り込みを開始するわよ」
「「おー!」」
――たった三人(+一人)による王城落としが始まる。
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