7話 目的地
「――で、やりすぎた、と」
「申し訳ありません~」
「まぁ、構わないけれど……でもこれ、やりすぎよ、エヌル」
翌朝。
目が覚め、体を起こしてベッドから降りようとしたら、部屋に泡を吹いて気絶した男が転がり、それを笑顔で踏みつけるエヌルという、ある種そういうプレイ中なのか? と勘ぐってしまうほどの謎な光景がそこに広がっていた。
何事かと話を聞いたところ、どうも俺が眠った後に例の後をつけていた奴を捕獲しに行ったらしい。
ぐっすりと就寝しつつ、なんとなーくエヌルが外に行った気配は感じ取っていたが、そんなことをしていたのか。
だが、それはつまり、何もしなかったらこの男がここに来た可能性がある、ってことだろ? 厄介なことだ。
「それで? 理由は聞いたのかしら?」
「人身売買が目的みたいですね~。私も狙いに含まれていたようですが、メインはアリス様でしたよ~」
「なるほどね」
つまり、あの時の一件がこいつに見られていて、それを上に報告。
少なくとも、あのチンピラたちよりも強いこいつが出張って来て、結果エヌルに即敗北した、と。
ふむ……。
「まあいいわ。とりあえず、この男を起こしましょ。とりあえず……んー、これでいいかしら」
俺は無造作に武器種の一つ、『棒』を一つ選択すると、それを出現させる。
これには特殊効果が付与されていて、これを対象に触れさせると……。
バチバチバチッッッ!
「ぐあああああああ!?」
こうやって電撃を浴びせることができるのだ。
いやぁ、VEO時代じゃ、対象を数秒スタンさせて、微量のダメージを与える程度だったが、リアルになるとこう言う事もできるんだなぁ。
案外、ゲームじゃ使い道のなかった物も、こっちじゃ使えるようになるのかも。
「ハァッ、ハァッ……な、なんだ!?」
「おはようございます、と言うべきかしら? ねぇ? ストーカーさん?」
ロールプレイ続行中なので、口調はこれである。
正直楽しいし、なんか普通にしっくりくるので、違和感なく話せるのがなんとも……。
やはり、女になった影響か。
最悪、素は別にどうでもいいのではないか? と思わんでもないが、あれはあれで、俺の最後の男してのラインな気がするので、素を知る奴らの前ではあっちで行くから問題なし。
「まずは、そうね……エヌルに負けたみたいね?」
「ハッ、あんなもん、そこのメイド女じゃなきゃ、勝ってた」
「あ、先に言っておきますけど~、私よりもアリス様の方が強いですからね~?」
「なんだと!? こ、このガキが!?」
「そうですよ~」
いやあの、エヌルさん? 何故あなたの方が誇らしくしているのでしょうか。
だがまぁ、エヌルより俺の方が強いというのは事実だ。
少なくとも、VEOの時はな。
だが、今はよくわからん。
もしかすると、俺の知らないスキルなんかを取得している可能性はあるし、俺もブランク自体は無いが、こいつには一年の期間があるからなぁ……正直わからん。
戦う気はないが。
「エヌル、その辺りで」
「は~い~」
「さて……あなたの所属はどこかしら?」
「ハッ、誰が言うかよ」
「そうでしょうね。私も期待していないわ」
少なからず、あのチンピラの上って考えると、組織が相手と思うべきだな。
当然だが。
しかし、問題はそんな組織が果たしてVEOの時にあったかどうか、だ。
もともと正義と悪に分かれるタイプのゲームだったからな。悪の組織の残骸が何かしでかしている可能性はある。
何せ、あのゲームはそういう売買すらも可能だったからな。
ある意味リアルと言うべきか、非人道的と言うべきか……だが、実装されていたのだから仕方がない。
しかもあれ、下手な金策より稼げるから、何気にやってる奴は多かった。
なので、プレイヤーが関わった組織が原因なのか、それともそれとは無関係の組織が原因なのかがわからない。
とはいえ、今気にするべき点はそこじゃない。
まず、たった一度見られただけで、少なからず狙われるような状況になるんだ。
規模としては大きい可能性があるな。
「では、質問を変えるわ。そうね……あなたはたしか、私を捕らえて、誰かに売る、それが目的だったのよね?」
「あぁ、そうさ」
「であれば……その誰か、というのは、貴族、もしくは商会の人間、違う?」
「生憎と、顧客の情報ってのは教えられねーんでね」
なるほど……ギルティ。
「ありがとう。今ので理解できたわ」
「は?」
ほんと、この種族って反則じみてるよなぁ……。
だってサキュバスってさ、
「お生憎様。男性はわたしに嘘を吐くことができないの」
男の嘘は見破れるんだもんさ。
いやこれ、マジでヤバいと思う。
もともとは設定としてあるだけだったが、リアルになるとそれが設定ではなくなった。
男なら、無条件に嘘かどうかがわかる。
これはかなり強力なアドバンテージになるだろう。
だってこれ、男相手なら心理戦がバカ強くなるし。
俺、別に頭がいいわけじゃなかったから、何気にありがたい。
まぁ、一応女性も精度は下がるが、ある程度は見破れるけどな。
「マジかよッ……!」
「と、いうわけで……『誘惑』」
「なに――…………」
よし、成功。
やっぱこれ、クッソ強いスキルだな。
「あなたはこれから、そのままそこの窓から飛び降りなさい。その後、自首をするの。いい?」
「わかった……」
「じゃあ、行きなさい」
そう言うと、男は例のチンピラたちと同じく、俺の命令に従い、窓から出て行った。
「これでよし、と」
「さすがですね~」
「これくらいはね。ところでエヌル」
「なんでしょうか~?」
「あの男、妙にあなたに対して、怖がるような視線を向けていたのだけれど……何かしたの?」
捕まえてきたことと、やりすぎてしまったことは聞いたが、それにしてはやけに怯えていたような気がする。
「少々ボコ――こほん。お仕置きしただけですよ~」
「ならいいけれど」
今ボコした、とか言いかけていたのは気のせいだと思いたい。
「昨日はありがとう。ベッドの寝心地もよかったし、食事も美味しかったわ」
「いいんだよぉ、うちとしても泊まってもらえて、そうやって言ってくれるだけで嬉しいよぉ」
朝食を摂った後、俺たちはチェックアウトを済ませる。
その際、泊めてもらったことに対してお礼を言うと、おばちゃんはむしろこっちが礼を言いたいようで、笑顔を浮かべながらそう言ってくる。
「そう。……ところで、一つ訊きたいのだけれど、いいかしら?」
「あぁ、なんでも聞いていいよ」
「昨日、チェックインを済ませる際、あまり客が来ないと言っていたけれど、その理由は何?」
「あぁ、それかい」
俺の質問に、おばちゃんは困ったような笑みを浮かべながら、理由を話してくれる。
「近頃、街の外で人攫いの集団がいたみたいでねぇ。そいつらがなかなかに手慣れているもんだから、人が危ないと思って近寄ってこないのさ」
あー、なるほど、あいつらが原因なのか。
ふむ……。
「エヌル、近辺に関係者らしき者はいた?」
「いいえ、いませんよ~」
「そう、ありがとう。……こほん。女将さん」
「なんだい?」
「その人攫い集団は、もう心配する必要はないわ」
「どういうことだい?」
「……昨日、誰かが討伐して、どこかの村の衛兵に突き出していたもの」
「ほ、本当かい!?」
俺が告げた事実に、女将さんは驚きつつも嬉しそうな声を零す。
この感じ、結構問題だったらしい。
「えぇ。この娘も見ていたから間違いないわ」
「そうですよ~。見事に瞬殺してのけてましたね~」
「そうかいそうかい! それはいい情報さね! 教えてくれてありがとうね」
「気にしないで」
それに、倒したの俺だしな……。
一応、そいつらの上らしき男もエヌルが倒して、自首するようにしたし、まぁこの辺りは特にも問題ないんじゃないだろうか。
それにまぁ、ここから先はあんまり関わる気はしないがな。
例の組織、もしかすると何かしでかしている可能性があるからな……変に巻き込まれでもしたら厄介だ。
まぁ、邪魔するなら対応するけども。
「それじゃあ、わたしたちはもう行くわ。女将さん、ありがとう」
「いやいや、こっちこそ! 気を付けてね!」
「ふふ、えぇ」
二人で軽く会釈をしてから、俺たちは宿屋を後にした。
さて、それからの道のりは特に問題なんてなかった。
の~んびりとした道程だった。
いやマジで何もないのである。
途中に立ち寄った街や村も特に何か起こる事なんてなかったし、最初に立ち寄った街くらいだったよ、イレギュラーが発生したの。
だが、その先の街ではマジで何もなかった。
強いて言えばナンパされたくらいだが……あと、なんか知らんけど、エヌルよりもやたら俺の方がナンパ率が高かったんだが。
これもしかしてさ、サキュバスが異性を誘惑するフェロモン的なもん出してない? 大丈夫? すっげえ心配なんですが?
やはり、サキュバスはリアルだと少々厄ネタになりかねない気がする……。
ま、まぁ、大丈夫だろう。うん、大丈夫……大丈夫だよね?
そんなこんなで歩くこと数日、俺たちは遂に目的の場所――アルメルの街に到着した。
「着いたわね。えーっと、ここを統治しているのは……たしか、エルゼルドだったかしら?」
「そうですよ~」
「ちなみに彼、一年の間はどんな感じだったの? というより、他の人たちとか、一年前と違いはないの?」
「そうですね~、彼は風貌こそなんと言いますか~、不良? でしたっけ~? そういうものですけど、根は真面目で優しいですからね~。街の住民からはかなり慕われてますよ~」
「そう。ならよかった」
エルゼルドを作ったのはたしか……あぁ、思い出した。マッスル権蔵だったな。
あいつはたしか、武闘派だったがマジでいい奴だったんだよなぁ。
普通に気配りができるし、空気も読める。それ故、結構リアルではモテてる、という情報をどこからか聞いたことがある。
まぁ、さすがに住みは全然違かったけどな。
「それにしても……ふふ、随分とのどかな街ね。子供が走り回っているのがいいわ」
目の前できゃっきゃと子供たちが走り回っている光景を見て、俺は微笑みを浮かべながら感想を零す。
「彼、子供が好きですからね~」
「えぇ」
エルゼルド、それはマッスル権蔵というロビンウェイクのプレイヤーが作り出したNPCだ。
イメージとしては着流しを来た不良っぽい男子高校生、だろうか。
まあそんな感じ。
基本的に運動部の後輩みたいな奴なのだが、子供好きで、普通にいい奴なのだ。
普段はちょっとこうぶっきらぼう? に見えるが、根が優しいのでかなり慕われるタイプと言えよう。
「たしか、エルゼルドが住む屋敷は向こうだったかしら?」
「はい~。早速行きますか~?」
「んー……とりあえずいいわ。今すぐというわけでもないもの。それに、わたしも少しこの街を見回ってみたいわ」
「かしこまりました~。では、まずはあちらへ行きましょうか~」
「えぇ」
さて、リアルだとどういう感じかね。
「あら、これは?」
「たしか、駄菓子、でしたか~? エルゼルドが頑張って作ったみたいですよ~」
「へぇ~、彼そんなことをしていたのね」
まさかの駄菓子の開発と来たか。
そういえば、あのゲームは何気にNPCとの会話ができたからな……その際、ノリでマッスル権蔵が駄菓子のことを言ってたっけか。
その際に、子供受けがかなりいいお菓子、と言ったもんだから、それで開発したってとこか?
ふぅむ、さすがと言うかなんと言うか……。
リアルになると、こいつら結構好き勝手やりまくってる疑惑があるな。
「お、いらっしゃい! 嬢ちゃん、何か買ってくかい?」
駄菓子屋を覗いていると、店主らしきおっちゃんがにこやかな笑顔で話しかけてきた。
「えぇ、折角だからいくつかもらっていくわ」
「お! なんにする?」
「そうね……とりあえず、この肉焼きさんと三色ガム、あと……カツモドキを二つずつもらえる?」
「なら、120エニーだ!」
「はい、ちょうどよ」
「まいど! ほい、品物だ」
「ありがとう」
物を受け取ったら、俺たちは駄菓子屋から離れ――
「くっそー! 全然当たんねぇ!」
――ようとしたところで、何やら何人かの少年たちが集まってわいわいしているのが視界に入った。
「これ、ほんとに当たりがあんのかよー」
「当然だぜ? 小僧共ー。このエルゼルドが導入した店や商品に当たりを入れない、なんてことはしねーぜ!」
ん? エルゼルド?
俺と同じことを思ったようで、エヌルも少し驚いたような表情を浮かべながら、子供に交じって聞こえてきた男の声を発している人物を見つめる。
そこには、紺色の着流しに片腕を突っ込んだまま、楽しそうな笑みを浮かべて少年たちと話しているうちの幹部の姿があった。
「エル兄ちゃんずるいよ!」
「「「そうだそうだー!」」」
「ずるいとは心外だなぁ、小僧どもよ。だがしかーし! 男とは、常に自分の力でどうにかするもんさ! それとも、お前たちは男じゃないと言うのかな?」
「なにをー!? じゃあ、俺もう一回やる!」
「おれも!」
「ぼくも!」
なんともまぁ、微笑ましい光景だこと。
子供たちと接するのが楽しいのか、エルゼルドはずっと破願しっぱなしだし、子供たちも不満を言いつつも、どこか楽し気な雰囲気を纏っている辺り、本当に慕われているらしい。
うーむ、せっかく会ったんだし、ここは声をかけるべきか。
それに、もとよりエルゼルドのとこに行く予定だったしな。
よし。
「エルゼルド」
「ん? 今の声、いやいやまさか……って、うええぇぇぇぇ!? た、たたたっ、大将じゃないっすか! え、ほ、本物!?」
俺に気付くと、エルゼルドは素っ頓狂な声を上げ、驚愕に表情を染めた。
「えぇ、わたしはつい最近のことだけれど、あなたからすれば一年ぶりね」
「ほんとっすよ! うわー! うわーー!! マジっすか! いつ戻ったんすか!?」
そう話すエルゼルドは、ものすごい嬉しそうな表情を浮かべていた。なんか、犬みたいだ。
「数日前よ。あなたは変わらず元気?」
「そりゃぁもう! ってか、大将に任された土地なんで、病気や怪我なんてできないんで!」
「そう。さすがね」
改めて、俺はエルゼルドを見る。
作ったのはマッスル権蔵だが……あいつ、何気にこういう不良風なイケメンを作るのが上手いんだよなぁ。
実際、エルゼルドは見てくれは強面で、いかにも不良! みたいな顔立ちをしてはいるが、よくよく見ると、かなりカッコいい。
目つきとか鋭いけどな。
外見年齢は高校生ほどで、肌は浅黒い。
着流しを身に付けており、その内側に除く体はよく見れば引き締まっており、所謂細マッチョと言う奴だ。
髪型は少々ぼさっとしており、マッスル権蔵曰く、天パだそうだ。
うん、まぁ、不良風という部分をコンセプトに作ったらしいが、なんと言うか……浪人が近い気がするな、エルゼルドは。
「いえいえ! ってか、エヌルさぁ、大将が帰って来てたんなら教えてくれてもいいと思うんだけど!」
「それはすみませんね~。アリス様が帰ってきた次の日には、一緒に移動していたものですから~」
「うっわ、ずるいなー」
「ふふふ~、私は側近ですからね~」
「そりゃそうだけどさぁ……」
おー、NPC同士の会話だ。
別になんてことない会話なのに、俺は今感動している。
だって、俺たちが作り上げたNPCがお互いに会話してるんだぜ? ゲーム時代もなかったわけじゃないが、なんかこう、ちょっとパターン化されたような感じだったしなぁ。
それでも、かなりパターンはあったけどさ。
「なーなー、エル兄ちゃん」
「ん、おうなんだい、小僧共ー」
「この姉ちゃんたちだれ? なんでたいしょーって言ってんの?」
おー、子供らしい質問だ。
まあ、普通に考えりゃ、なんでこの街のトップが、こんな幼女を大将って呼んでるんだろう、なんて疑問が出るのは当然だよな。
俺だって逆の立場だったらそう思うし。
「ん? あぁ、そりゃあこの方は俺よりも偉い人だからな! 俺が敬うのは当たり前なのよ!」
「えー? エルフの姉ちゃんならわかるけどさー、こっちの姉ちゃんがエル兄ちゃんよりえらいってほんとかよー?」
いやまぁ、俺どう見ても子供だしな、ビジュアル。
でも、メイド服を着たエヌルの方が上に見えるとはこれいかに……エルゼルド、お前……。
「まあな! つってもまぁ、会うのはかれこれ一年ぶりだけどな!」
「えー、姉ちゃんエル兄ちゃんと会わなかったのかよ?」
「けんか? けんか?」
「喧嘩じゃないわ。色々あって会えなかったの。でも、一年も会えなくなっていたことは申し訳なく思っているわ。エルゼルドも苦労を掛けたわね」
「いやいや! こうして会えただけで儲けもんっすよ! つーか、やっぱ大将は変わってないっすね!」
「それはそうよ。わたしの容姿は基本的に不変だもの」
サキュバスの特性の一つ、基本の姿は死ぬまで変わらない。
つまり、老いることがないのである。
とはいえ、体が大きくならないのかと言えば……そんなことはないんだけどな。
「すっげー、エル兄ちゃんがエル兄ちゃんよりちっちゃい姉ちゃんにペコペコしてる」
「初めて見た」
「でも、お姉ちゃんすっごくきれいだね!」
「ふふ、ありがとう。僕」
「「「~~~っ!」」」
おや、ちょっと軽く微笑んだだけで顔が真っ赤になった。
ふぅむ、これはもしや……。
「そういえば、自己紹介をしていなかったわ。初めまして、坊やたち。わたしは、アリス。そこにいるエルゼルドの……そうね、雇い主よ。よろしくね?」
にこっ、と普段はあまり表情が出ないアリスの体だが、少なくとも意識することで表情を動かすことは簡単にできる。
あくまでも、普通のリアクションが難しいだけで。
いやまぁ、素で接している時はある程度表情が出るが。
さて、そんなこんなで、無表情に近い俺ことアリスがこうやって意図的に笑顔を浮かべるとどうなるかと言えば、
「「「「(ぽー)」」」」
子供たちが赤面して見惚れるのである。
そりゃあ、サキュバスだしね。
なんつーか……俺さ、なんでか知らないんだけど、普通にサキュバス的誘惑ができるっぽいんだよなぁ……やっぱあれか、本能的に刷り込まれてる感じなのか?
やばい、サキュバスに蝕まれそう。
おっと、それ以前に目の前のことが大事か。
「まぁ、雇い主ってのも間違いじゃないっすけど……どっちかっつたら、上司じゃないっすか?」
「でも、あなたの真の意味での上司はマッスル権蔵でしょ?」
「そうっすけど……あの方は、上司というより父って感じっすからね。やっぱ、大将がトップなんで、俺はしもべっすよ」
「ふふ、そうですね~。我々にとっては、あの方たちは父であり母ですからね~。その点を抜きにすると、アリス様は我々が最も敬愛する存在であり、我々はしもべになりますね~」
「あなたたち、しもべを連呼しないの。子供によくない影響を与えるわ」
「「すみません」」
「ふふ、よろしい。……さて、坊やたち。わたしたちは少しエルゼルドに用があるの。借りてもいいかしら?」
「あ、う、うん! いいよ!」
一人の少年が承諾の言葉を言えば、他の子供もうんうんと遅れて頷く。
うーむ、罪作りだねぇ、アリスは。
いや、俺だけど。
「それじゃあ、行きましょ。坊やたちも、元気に過ごしなさい」
「「「「はーい!」」」」
うんうん、いい返事だ。
子供たちの返事に対して満足げに頷くと、俺たちは一度エルゼルドが住む屋敷へ向かった。
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