6話 最初の街と怖いエルフ

 そんなこんなで道中プチイベントが発生したが、その後は筒なく道中の街に到着。


「今日はここで休憩を取りましょ」

「かしこまりました~」


 街の中なので、俺はロールプレイ中である。

 さすがにこの見た目で、素のしゃべり方をしていたらちょっとアレだからな……。


 俺のキャラづくりのコンセプトがそうだったからか、普通に表情が薄いんだよなぁ、この体。

 別に表情が完璧になくなっているわけじゃないけどさ。

 素の状態だと多少はマシなんだが、それでも表情は薄い方だろう。


 うーん、まぁ、その辺は仕方がないのかもしれない。


「宿屋、宿屋……あ、あそこはどう?」

「いいですね~。あちらにしましょうか~」

「えぇ」


 というわけで、いい感じの宿屋を見つけた俺たちは、その宿屋へ入る。


「いらっしゃい! おや、随分とまぁ、可愛らしいお嬢ちゃんたちだねぇ、お二人様かい?」


 宿屋へ入るなり、恰幅のいいおばちゃんが俺たちをいい笑顔で出迎えた。

 おー、なんか、すっごいテンプレ的女将だ。なんかちょっと感動する。


「えぇ。一泊、お願いできるかしら?」

「あぁ、いいとも! 最近はなかなか人が入らなかったから嬉しいよぉ」

「そうなの?」

「まあねぇ。あ、お嬢ちゃんたち、食事はどうするかい? うちは酒場もやっていてね。ウチに泊まるんなら、割引するよ」


 ほう、割引とな。

 金に余裕はあるが、正直運営資金についても考えなきゃいけないから、地味にありがたい。

 できる限り節約せねば。


「そうさせてもらうわ」

「はいよ! じゃあ、二人で4000エニーだよ」


 ふむ、意外に安い。

 俺はアイテムボックスモドキから4000エニーを取り出すと、それをカウンターに置く。


「これでいいかしら?」

「えーっと……うん、大丈夫だね。じゃ、これが二人の鍵ね」

「ありがとう。エヌル、行きましょ」

「かしこまりました~」


 さて、どんな部屋かね。


「……随分と気品があったけど……貴族様なのかねぇ?」




「へぇ、なかなかいい部屋ね」

「そうですね~。値段の割には、品質がいいようですよ~」


 通された部屋へ入ると、なかなかに良さげな部屋が俺たちを迎える。

 広さはそこまででもないが、かといって狭いというわけでもなく、むしろ庶民な俺からすればかなり落ち着く空間と言えよう。

 イメージとしてはあれだ、小学生くらいの兄弟が一緒に使う部屋の広さくらい。


 今日は俺とエヌルの二人だけで寝泊まりするわけだ。

 ふっ、普通の男ならば、エヌルという超美女を相手に、エロいことを妄想したり、興奮したり、眠れなくなったりするだろうが……生憎と、俺はエヌルにそんな感情が向くことはないだろう。


 それはなぜか。

 だって俺、こいつの制作者だぜ?

 言ってしまえば、父であり、母みたいなもんだ。


 つまり、俺がこいつ……というか、ロビンウェイクのNPCたちに向ける感情ってのは、親心みたいなもんだしな。


「ところで、アリス様~?」


 さて、と息を吐いたところで、エヌルの目がいつもより鋭くさせつつ、俺に話しかけてくる。


「……えぇ、わかっているわ。いるわね」


 外にいる奴に悟られないよう、俺は一瞬視線を窓の外に向け、すぐに目の前に戻す。

 いるな、一人。


「いかがなさいますか~?」

「んー……放置でいいんじゃないかしら?」


 エヌルの質問に対し、俺は何もしないという選択をした。

 いやまぁ、マジで必要なさそうだし。


「いいんですか~?」

「えぇ。だって、あなたがいるもの」


 俺が必要ないと言った理由は、エヌルの存在である。

 一応、俺もVEO内では上位プレイヤーだったのだが、今はまだアイテムボックスモドキのせいで微妙に慣れ切っていないし、武器種だって一種類しか使用していない。


 だが、こいつは別だ。

 もとよりブランクなんてないし、一年の間一度も戦闘をしていないなんてありえないだろう。

 あの基地、合言葉無しじゃ正規の方法での侵入は無理だが、穴を掘れば普通に入れるなんていう欠点がある。


 まぁ、さすがにそんなことをする物好きはいないだろうが。

 それに、外に一度もでない、という事もなかっただろうからな。


 もとより、エヌルとイグラスの両名は強い。

 あの二人を突破したプレイヤーって、マジで少数だし、なんだったらうちの組織にいたプレイヤーも負け越しが多いほどだったし。

 それくらい、エヌルは信用できる。


 そう思っての発言だったのだが、


「あ、は、はい~」


 なんか、また赤面していた。

 どうもエヌル、稀に俺に対して赤面するんだが。

 これはあれか? 親に褒められて嬉しい的なあれなのか? まぁ、一応これでも親みたいなもんだしなー。


 ……そういや、プレイヤーが作成したNPCって年齢とかも普通に設定できたが、創り出す前の設定ってどうなってるんだろうな?


 一応、こっちが作れはしたが。


「もちろん、エヌルならわたしを守ってくれるわよね?」

「それはもちろんですよ~! アリス様をお守りすることは、我がロビンウェイクにおいては最も重要なことですので~」

「いえ重要なの、わたしが定めた方針なのだけれど……」


 だが、NPCたちはそう言う認識なのだろう。

 嬉しいけどね。


「何を言いますか~。アリス様がいなくなれば、我がロビンウェイクは消滅も同然ですよ~! ですので、アリス様を守らなければいけないのです~!」

「そ、そうなの」


 まぁ、一応俺総帥だしなぁ……。

 そう言う意味では、エヌルの言う事は間違いではない。

 なるほど、合ってはいる。

 別に死ぬ気はないけども。


「まあいいわ。とりあえず、今日はここで一休み。もし何かあれば……対処はお願い」

「殺しは~?」

「んー、相手がよっぽどのクズじゃない限りはダメね」


 マジで胸糞レベルのクソ野郎だったら全然殺してもいいが、そうじゃない場合が怖い。

 後は、そいつを生かした後に起こる損害を考え場合、だな。

 正直、根っからの悪人は改心するなんてことはまずない。

 そんなことができるとすりゃ、記憶を消して教会に入れるくらいじゃないかね。


「では、原則は生かす方向にしますね~」

「えぇ、お願い」

「お任せください~!」


 ま、こいつは数日間寝ずに動けるなんて超人だ。

 一睡できないくらいは問題ないと思うが……。


「ごめんなさいね、寝ずの番になってしまうかもしれないけれど……」

「問題ありませんよ~。私たちにとって、アリス様こそが生きる意味ですので~」

「それは重いわ」


 重い忠誠は地味にきついわ……。




 宿屋に備え付けの酒場を利用して、夕食を摂る。

 幸いというか、その酒場の料理はかなり美味く、思わず追加注文をしてしまったほどだ。

 この体、色々な理由で多く食べないとマジでまずいから、結構食費がかさみそうなところが厄介である。

 うーん、ここはもう種族的な部分が問題だからなぁ。

 どうしようもない。


 そう結論付けて、俺たちはさっさと部屋に引き上げ、明日のことについて話し合う。

 話し合う、とは言ってもさほどやることはなくて、明日の予定を軽く決める程度だ。


 別に、どっかの街を襲う計画とか、道中のチンピラの対応の仕方、なんてのは特に話していない。

 少なくとも、この近辺には警戒しなければならないほどの強者ってのはまずいない。

 それについては俺の感知系スキルによって把握済みだし、仮にその感知を潜り抜けるようなスキルを持っていたとしても、エヌルの感知は特殊で、それすらも見破る。

 故に、特に警戒する必要はないのだ。


 なので、とりあえずは想定外のアクシデントが起こらない限りは特に気にする必要はない、という結論に着地するわけで。

 となれば、話し合いはほどほどに、二人仲良く雑談をする。

 特に俺が気になっている、エヌルたちの一年間のこととかな。


 それはもう面白い話が多かった。

 中でも興味を惹かれたのは、組織が消えた後のことだろうな。

 いや、どうも正確には消えたわけではないらしい。


 プレイヤー全員が消え、その代わり組織の基地とNPCが残った、と言うべきか。

 つまり、あくまで消えたのはプレイヤーだけであり、組織自体は形として残っているようだ。

 その中でも、いくつかの組織はある程度の活動をしているらしいが……それでも、やっていることは、陣地の運営だったり、小さな活動程度だったりらしいので、イグラスは消えたと説明したようだ。


 たしかに、特に問題が起こるようなことがないのなら、俺だって実質消えた扱いをするかもしれない。

 とはいえ、さすがにそれだけというのも問題なので、情報収集は欠かしていないとのこと。

 いやはや、有能なおじいちゃんはいいねぇ。


 その他だと何があったかな……たしか、この世界における最大の宗教内部が、ちょいとごたついてるとか。


 これ、正直もうちょい情報が欲しい所だ。

 というのも、俺たちが拠点にしている例の基地がある国、つまりこの国『グラント聖王国』には、その宗教の総本山とも言うべき場所が存在しているのだ。

 ということは、だ。


 そのごたごたの範囲が広がった場合、俺たちの方にも問題が降りかかってくる可能性がある、ということだな。

 うーん、めんどい。


 めんどいが……今のところは何もしない、が正解だ。

 下手に動いて巻き込まれでもしたら厄介以外の何物でもないし。

 というわけで、この話は保留と相成った。

 それ以外は特になく、本当に他愛のないことばかりだ。

 そうして話している内に夜も更けて行き、俺は就寝となった。




「……さて~」


 アリスが寝息を立て始めたところを確認したエヌルは、いつものぽわぽわ~っとした笑みのまま、外を見据える。

 そこには夜闇に包まれた街しかないのだが、エヌルはそこにいる者を見逃さなかった。


「『――』」


 ぽつり、と小さく何かを呟くと、エヌルの姿が掻き消えた。

 それは、外からこちらを見ていた者からすると、まさに異常事態。

 いきなり部屋の中から人が一人消えた。

 しかも、寝ている主人と思しき美しく、どんな者でも見惚れてしまうほどに可愛らしい少女を残して。

 従者としては失格と言える行動にしか見えない。


(まさか、見捨てたのか?)


 思わずそんな楽観的なことを考え、同時に悪意ある笑みを浮かべるその存在は、次の瞬間その甘い考えを即座に捨てることとなる。


「一体、どのような用件でしょうか~?」

「――ッ!?」


 男は運がよかった。

 声が聞こえた瞬間、すぐにその声の存在から大きく距離を取ったのだから。


 そして、その行動をした直後、自分がさっきまで立っていた場所には、綺麗に切断された石材と地面に根元まで突き刺さったナイフだった。

 突如現れたエヌルに冷や汗を流しながら、男は目の前のメイド服を着たエルフを見据える。



「お、驚いた……一体どういう仕掛けだ? いきなり現れやがって」

「ふふ、私の得意スキルですよ~。まぁ、そうぽんぽんと使えるような物ではありませんが~」


 ツイてる、男はそう思った。

 今しがた突如として表れたメイド女は、先ほどの正体不明の謎行動をするスキルが、そう何度も使える物ではないとバラしたのだから。

 実際、エヌルが先ほど使用したスキルは、エヌルの言葉通り、そう何度も使える物ではない。

 MP――すなわち、魔力を消費するのだ。

 その量、最大量の三分の一という、かなりの量だ。


 しかも、アサシンとして、様々な攻撃手段が必要になる職業についている以上、エヌルはMPもそれなりに上げている。

 しかし、どんなにMPがあっても三分の一も使用することになるので、結局は三回程度しか使用できない。

 が、それすなわち、後二度は使用できるという事でもあるのだが……。


「さて、と~……。まずは、お話をしましょうか~」


(しめた!)


 男は、エヌルが会話から始めようとしたことに、自身の幸運を重ねて喜ぶ。


(見たところ、この女は奇襲メイン……つまり、さっきの攻撃を外した時点で、直接的な近接戦は苦手だろう)


 そう結論付け、暗闇で顔が見えないフードの中で、男は口端を吊り上げる。

 上手くやれば、二つ手に入る、と。

 しかし、その考えは間違いである。

 そして、この後この男は間違いを犯すことになる。


「まずは、そうですね~。最も重要なことをお聞きしましょうか~」

「……なんだ」


 男はいつでも攻撃をしかけられるよう、準備を始める。

 まずは毒の準備、そしてそれを自身が得意とする投擲術に用いるナイフに垂らす。

 毒は強力であり、よほどの耐性がなければ、まず間違いなく相手を昏倒させられる。

 そしてこの毒は少量で問題ない。

 あとは、油断しているところを、そう企てる男。


 反対に、エヌルは恐ろしいほどにいつも通りであり、ぽわぽわ~っとした笑みのままだ。

 普通なら、その時点で何かを感じるはずだが、エヌルのそれはあまりにも自然体過ぎて、男はなんらおかしいと思えなかった。

 そして、この時に逃げていればまだマシだったのだろうと、男は後悔する。


「我々を~……いいえ、アリス様を狙った理由はなぜでしょうか~?」

「はっ、そんなもん、あいつらが失敗した存在なら、さらにその上がでなきゃだろ? で、俺はしばらく後をつけてたわけよ」

「……それで、目的は~?」

「は? そんなもん、売買に決まってんだろ? いやぁ、お前もイイナァ。そのスタイルと言い、顔と言い……。それに、あのガキも十分すぎるほどそういう趣味の奴らに合いそうだがなぁ?」


 ひゃははは! と、下卑た笑いと共に、ある種エヌル――というより、ロビンウェイクに所属する者であれば、ブチギレ案件と呼ばれるほどの逆鱗になる言葉を吐いた。


 直後、エヌルの様子は一変する。


「――アァ? テメェ、ウチのお嬢に何ふざけた真似してくれようとしてンだ、アアァァァ!?」


 さきほどまでの、ぽわぽわ~っとした笑みはいずこへ、と言わんばかりに、眼光鋭く、怒り心頭といった表情で、かなり荒くなった口調へと変貌するエヌルがそこにはいた。


「なっ――!?」


 突然変貌したエヌルに、男の表情は驚愕に彩られ、そして動くことを忘れていた。

 そして、その隙がまさに致命的とも言える状況へと繋がる。


「――テメェはボコす」

「は――? がァっ!?」


 次の瞬間、男の目の前にエヌルが出現、何かを言ったと認識した直後、男はエヌルのハイキックを顔面に受けて吹っ飛んでいた。

 男は幸い……ではなく、あえて何もないところにエヌルが蹴り飛ばしたことで、地面に衝突した際のダメージを受けずに済む。

 あまりの衝撃と痛みに、意識が飛びそうになったが、男はすぐに体勢を立て直し、なんとか着地する。


(な、なんだ今の……!? 全く見えなかった……いや、それ以前に今、スキル使ってなかったよな? じゃ、じゃあ……純粋な身体能力、なのかっ!?)


「ン? なんだテメェ。随分アホ面晒してンなァオイ。今ので終わりってか?」


 別人の如き立ち振る舞い、言動や行動に、男の中から混乱が抜けきらない。

 だが、今すぐに逃げないとまずいことだけは理解した。

 そうでなければ、自分は死ぬ、そう悟った故に。


「くっ――!」


 そう思ったら男はすぐに動く。

 煙幕を使用して、辺り一帯を白い煙で満たす。

 今は夜。であれば、煙幕の効果はかなり高い。


 それに、男にはどんな状況下でも、ある程度の空間把握能力を得られるスキルを所持している。

 これだけあれば逃げ切れるし、なんだったらあのガキも攫える、そう考えた男だったが、それはやはりと言うべきか、不発に終わる。


「まァ、その選択は間違ってねェけどよォ……私相手じゃ間違いだな」

「は? ごぶっ!?」


 いつの間にか近くに表れた人影に、殴り倒されたからだ。


「フンッ。お嬢が気に留めてねェくれェだから、弱っちいと思ってたがよォ……まさか、ここまでの雑魚たァなァ」


 雑魚、そう言われた男だが、少なくとも今まで一度も言われてきたことはない言葉だった。

 少なくとも、一般的な基準で言えばこの男は強い方である。

 気配を消すスキルも高い効果で発動できるし、奇襲も得意、さらには毒物の扱いにも慣れ、近接戦闘も得意ではないが、そこらの騎士や冒険者程度じゃ話にならないほどだ。


 だがしかし、その男が自分の全てを持ってしても勝てる気がしないと思わせる存在が現れた。

 非常に怖い表情を浮かべ、いつでも動けるように臨戦態勢にしているメイド。


 そもそも、エルフの攻撃力じゃねぇ、と男は心の中で吐き捨てる。


 エヌルはハイエルフと呼ばれる種族で、本来は魔法系がやたらめったらに強い種族だ。

 その反面、身体能力面はそこまで高くなく、強いて言えば速度が高い程度。


 だが、エヌルはどちらかというと体術面が優れており、実際バカ強い。

 この世界においては、身体能力が優れた種族がいくつかいるが、その種族たちと殴り合いになっても問題なく勝てる程度には強い。


 実際は、アリスがそう言う風に設計した面もあるが、エヌル的には自身をそこまで強くしてくれたアリスの設計通りに動くのが好きなので、魔法職じゃなかったりする。


 ……だが、別段魔法が弱いという事は一切なく、下手な魔法職よりも普通に強いので、かなり理不尽な存在と化しているが。


「くっ、これなら、どうだっ!」


 ビュンッ! と男は用意していた毒を塗ったナイフを目にも止まらぬ速さで、エヌルに向かって投擲する。

 それはエヌルの心臓部目掛けて飛んでいくが……。

 パシッ。


「なんだ。この程度か」


 ナイフは指二本で摘ままれ、胸部よりもほんの数センチ手前で止まっていた。


「は……?」

「投擲術はまぁまぁだな。毒物は……ほう? なかなかイイ毒じゃねェの。自分で調合ってとこか?」

「あぁそうだよ……ちなみにそれは、触っただけでもアウトだぜぇ?」


 掴むことは想定済みと言わんばかりに、男はにやりと笑う。

 これで何とかなる……そう思ったが。


「生憎と、私に毒物は効かねェ」


 呆れ混じりに、エヌルはそう告げた。


「……なに?」

「毒物は効かねェっつったンだよ。もとより、私はアサシン。お嬢の側近であり、外じゃァ警護を任されンだよ。警護する奴が毒でやられるようじゃァ、役者不足ってモンだろうが」


 くるくると、先ほど使用したナイフを回してはキャッチするという、手慰み程度に遊びながら、エヌルは自身のことを話す。

 ちなみにこれ、『毒無効』ではなく、『猛毒無効』という、毒耐性の上位互換どころか、超上位互換である。

 つまり、毒物がマジで効かなくなる。

 入手方法はクッソめんどくさいが、アリスはこれをなんとかしてエヌルに搭載した。

 尚、当然のようにアリスも所持していたり。


「さて、私もそろそろお嬢ンとこに戻ンなきゃなンねェンで、ここいらでテメェの意識、刈り取るぞ」

「なにを――ごはぁっ!?」


 ドゴンッ!


 と、そんな轟音と共に、エヌルのかかと落としが見事に男の鳩尾に決まり、男はそこで意識を手放した。


「ふぅ……これで、問題ありませんね~」


 先ほどまでの怖い表情は消え、もとのぽわぽわ~っとした笑顔に戻ったエヌルは、男を適当に縛ると、そのまま引きずって行った。

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