第104話 戦いの始まり

 生徒会のみんなで国境の拠点に来た俺達だったけど、早々に問題が発生した。

 なんでも、拠点の中にいきなり悪魔が出現して、騎士に襲い掛かろうとしたんだとか。


 けれど、そんな展開を完璧に読み切っていた父さんの慧眼によって、被害なくそれを乗り切ったらしい。


「ガランド・レンジャー……ずっと話に聞くばかりだったけれど、こうして自分が関わる事件でその活躍ぶりを聞くと、本当に凄まじい傑物だね。一体どうやって悪魔の出現を予知したんだ?」


「父さんなら、悪魔が異界を移動する気配も感じ取れるんだろう。俺もまだまだ修行が足りないな」


 父さんの活躍に驚いているクロウへ、俺は当然だとばかりに頷いた。

 全幅の信頼を見せる俺に、クロウはやや呆れ顔で肩を竦める。


「これほどの男が長らく埋もれていたと思うと、我が国の人材発掘方法を少し考え直した方がいいかもしれないね。ともかく、彼のお陰で敵の狙いも分かった、今後は拠点内にもしっかりと監視の目を置かれるだろう」


「そうは言いますが、どう考えても手が足りないのでは……?」


 クロウの言葉に、ティルティが懸念を示す。


 ただでさえ、悪魔に乗っ取られた帝国がどう動くか分からないこともあって、出せる人員は全て帝国方面の監視に割かれているんだ。

 そんなところで、拠点内にまで監視の目を向けるとなると、人なんていくらいても足りないだろうな。


「ああ、だから僕らも保険ではなく、本格的にこの戦いに力を貸すことになりそうだ。配置の方はこちらで決めておいたから、それぞれ向かってくれ」


 そう言って、クロウは俺達の配置を記した紙をその場で広げる。


 どうやら、基本的に二人一組で行動するみたいだ。


 まず、クロウとライクが騎士達との連携と俺達との連絡要員になるために残る。

 それ以外は、ルイスとログロイ、スフィアとティルティ、俺とシルリアで分かれることになっていた。


 その配分に、ティルティがやや不満そうに口を開く。


「連携を考えるなら私と兄さんが一番だと思いますけど」


「それはそうかもしれないが、戦える人員とサポート要員で組みたいのと、この中で最大戦力のソルドにはシルリアの"眼"を付けたいというのがある。二人はこれまでも協力した経験があるし、組めば一番広い範囲をカバーしてくれるだろうからね」


「むぅ……仕方ないですね」


 クロウとしては、ルイス、スフィア、それに俺がメインになって、ログロイ、ティルティ、シルリアがサポートする形で考えているみたいだ。


 それでいえば、転移系の闇魔法を使えるティルティと、広い範囲を観測できる千里眼を使えるシルリアでは、シルリアの方が俺が二人一組で動くのは理に適ってると思う。


 転移だけなら、俺には《天姫空閃》があるしな。


「シルリア、よろしくな。スフィアも、ティルティのこと頼んだぞ」


「ん、任せて」


「師匠の分まで、私も頑張りますね」


 俺の言葉を受けて、二人の少女が揃って頷く。


 続けて、ティルティも俺のところにやって来た。


「仕方ないので、今回はシルリアに譲りますけど……兄さんのパートナーは私だけですからね」


「そ、そうか」


 なぜか顔を寄せて圧をかけてくるティルティに、俺はたじろぐ。


 戸惑うばかりの俺に、ティルティはその表情を少し不安そうなものへ変える。


「私にとっても、兄さんだけですから。訳の分からない悪魔なんかじゃなく」


「ティルティ……?」


「なんでもないです」


 スッと距離を取ったティルティに、どう声をかけるべきか少し迷う。


 何とか口を開こうとして……けれど、状況はそれを許してくれなかった。


「ソルド、私達が行く予定のところで悪魔が出た。苦戦してるみたいだから、援護行こう」


「ああ、そうだな……」


 シルリアの言葉に頷いた俺は、その場を後にする。


 ティルティのことが気がかりだけど、今はまず悪魔をどうにかしないと……!

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