Happiness destiny

あおてん

6月6日 陽射しがそこまで強くなかった記憶

異国の6月、雲ひとつとない、キャンパスに青一色を塗りたくった空の下、気温はその時期にしてはやや低いような、走っても気持ちいいくらいの温度。

走りながら目線の先が捉えているのは視界いっぱいに生きている向日葵畑。

何故かは分からないけど絶対にそこにいると確信している自分は、一番最初の友達に会いに行く。


しばらく向日葵畑の中を掻き分けて進んで、そこに一番の友達が居た。

「わざわざ走って来たのかい?息を切らしてまでボクに会いに来るというのは嬉しいけどね。」

白髪の子供が振り向く。

改めて視ても一際目立つ紫色の目、華奢な体型で少年か少女かも分からない。少女が着るようなフリルが付いたメイドのような服装、少し背を意識してるのか、暗黒よりも黒い厚底の皮のブーツを履いている。

(負けず嫌いなこともあったからかな)

さらに正面から見ればインナーカラーに青色がかかっているのがわかる。

思わず見とれてしまうその全体像に僕は言おうとした言葉が出てこなかった。

「いいよ。「「分かる」」から。キミを責めたりはしないさ。今日はここで遊ぼうよ、暑くないし何だか良い日になりそうだ。」

息を整え、考えていた言葉を吐く。

「姫様が中々解放してくれなくて…遅れちゃってごめん」

「「「分かる」」と言っただろう?あの姫も困ったものだ、幼い子供に食事の準備をさせるなんて…」

というか準備どころか、料理も作らされてるんだけどさ。

「でもエスカルゴの調理法とか学べたんだよ!またひとつ美味しい料理が作れるようになったんだ!」

「キミはこと料理に関しては目を輝かせるね…少し嫉妬を感じてしまうよ」

そう言って一番の友達は微笑する。

「ロランにも今度ご馳走してあげるね!もっと毎日が楽しくなるから!」

自信たっぷりに僕が言うと一番の友達は嬉しそうに向日葵畑を見ながら口を開く。

「それは嬉しいな!キミの作る料理は格別だからね。ボクの知っている知識も織り交ぜれば素敵な料理がもっと作れるようになるよ」

「ほんと!?さっすがロランは博識だね〜!僕の知らないこといっぱい知っててすごい!」

「そんなに褒めても何も出ないよ。ただキミが幸せであって欲しいからボクも知識をつけるんだ。」

今思えば、何でこの時こんな質問をしたんだろうと不思議でしょうがない。

薄れた記憶の中で唯一はっきりしている会話だった。

「僕の「「幸せ」」ってなあに?」

その時の一番の友達が一瞬何処か、寂しそうな顔をしたのを目に焼き付いている。

「キミの幸せはね…ボクの幸せでもあるんだ、運命に負けないようにキミを守らないとね」

この会話の意味を当時の僕は全く分からなかったし、今でも完全には分かってない。

「完全には」と感じるのは少し思い当たることがあるからだ。

僕に何かしろの予兆があるのを伝えたかったんだと思う。

向日葵畑の中で二人は遊ぶ。

気持ちのいい陽射しを浴びて、「僕ら/ボクら」はたくさん笑った。

たくさんかけっこをした。

暗黒の時間になる前まで時間を費やして、帰ったら姫様にものすごく怒られて。

この瞬間にも運命は進んでいて、たくさんの命が幸せを求めているのだろう。

でも僕は違うようで。

幸せは巡って運命を呼んで、結末には僕が死ぬ。そういう、幸せの、運命だ。






不可能の茨の道はまだまだこれから。


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