花びらの一枚いちまいは月を削ったように白いのに、重ねれば仄かに色づく。
それは花街にいる女たちが男たちを釣る一夜の恋のさまのよう。
闇の中に咲いて散る寂しい桜。
風に舞う花となって高瀬川に流れ去り、女たちを後に遺して時に消えた、血潮熱き若き志士たち。
彼らにとって京の都は竜宮のようなものだっただろう。
心浮きたつままに倒幕派も佐幕派も、提灯で飾られた夢の里、島原遊郭へ通ったのだ。
腕を振りほどいて若い隊士が立ち去るのを、遊女たちは見送った。
弟のような兄のような彼らが斬りむすんで死んでいくのを、涼しい朝風の中に耳にした。
興味を惹かれた方は、本編『月の夜 雨の朝 新選組藤堂平助恋物語』へ是非。
新選組から離反し、御陵衛士となった今牛若こと藤堂平助を中心としたダブルヒロインものですが、どちらの女性も甲乙つけがたく、いいですよ。