四章 終焉
「……さて、貴方は冷静な判断が出来ますか? その結界を超えない限りはこちらから手出ししませんが」
「…………俺も貴様に挑みたいが、ここは引かせてもらう」
「賢明です。私のエクスクルージョンからは誰も逃れられない」
エリカが残した情報は充分に価値のあるものだった。
奴らは俺達が気軽に挑んでいい存在ではないという事。その力をこの目で確かめ生きて帰る事が出来るのは幸運だろう。
エリカがいなければあの技で消されていたのは俺だった。
ここで感情的になってはいけない。エリカが言葉にしたように、俺は俺の役目を果たすしかない。これ以上の深追いは更に不幸な存在を増やしてしまう。
大切な存在を犠牲にしておきながらも身体は理性のままに動き、そんな自分に嫌気が差す。
だが諦め背を向けた瞬間だった。
突然ドス黒い魔力の輝きが辺りを照らす。
「っ…………!?」
「ぐううぅっ!」
驚き振り向いた時には見慣れた魔力の照射がルシスを飲み込んでいた。
「くっ、一体どういう――」
「――貫け」
そしてルシスの右から魔導砲を放っていたはずの彼女は、一瞬で背後へと移動しあの大剣を構えていた。
「ヴィクトリアス!」
右手にドス黒い魔力を収束させるエリカは人間に嫌悪される己の魔力を嫌っていた。
だが俺の目には彼女の放つ黒い輝きが希望の光に見えた。
--------
ヴィクトリアスが地面を破壊する轟音が周囲へと響く。
ルシスにはギリギリで回避されたが、別にヴィクトリアスによる突きは外してもいい。
あたしの本命はコレだ。
「きゃああぁぁっ!!」
上へと回避してしまったルシスに予め準備しておいた魔導砲を撃ち込む。これで彼女の体力はもう残ってないと流石に思いたい。
だが未開の遺跡の守護者なだけあってルシスはまだ倒れなかった。
「ほんとタフ過ぎ。あたし魔導砲四発も当てて殺せなかったの初めてなんだけど。あんたはあたしの初めてどんどん更新するわね」
魔王やミラも強かったが、厄介さで言えばこいつの方が上だ。
聖力による圧倒的防御力とオールレンジ攻撃。対処するにはヴィクトリアスとリーテン・デューダが必要だから過去のあたしでは聖剣があっても対応出来るか分からない。
だがその二つだけではあのエクスクルージョンに対応出来ない。あたし一人じゃ勝てない相手なのは間違いないだろう。
「はぁはぁ……光栄ですねぇ、貴女のような人間にそう言ってもらえるのは。ですが私も初めてですよ。この技からから抜け出した人間は!」
そう言いルシスは右手をかざす。すると複数の黄色い光があたしの周囲へと生まれた。エクスクルージョンだ。
厄介な事にその範囲は広くあたしの速さでもかわせるものではなかった。
「…………」
「抜けられるものならもう一度抜けてみてください。一瞬で帰ってきたわけではないんですから、あの空間で貴女の体内にダメージは蓄積してるはずです」
ルシスの言う通りあたしの身体は戻ってきた時重かった。理屈は分からないが体内が壊されていたのは間違いないだろう。
でももう関係ない。最低限の回復は出来るのだから。
「エクスクルージョン!」
もう一度あたしの視界が変わろうとした瞬間、あたしは転移魔法を唱えた。厄介で腹の立つ男の力を借りながら。
「ちっ……流石に警戒してたか」
一瞬でルシスの背後に回り込んだあたしは彼女を斬り上げようとした。だが二度目は分かりやすかったようでホーリービットに防がれてしまった。
「はぁはぁ、やはり転移魔法ですか。私の聖力を前に、それも聖剣なしでよく魔法を使えますね」
「そうよ、ただ転移魔法を使っただけ。何故かこの空間の外には座標指定出来なかったけど」
「ふんっ、言ったでしょう。そこの結界はこの世界のルールのようなものだと。私達の戦いはどちらかが倒れるまで終わらないんです」
となると結界の外にいるミラから魔力を補給するのはどちらにせよ無理か。なんて甘えた考えが出てくる自分に腹が立つ。
まっ、与えられた魔力がいつ無くなるかも分からないし恐怖を感じるのも当たり前か。
「一つ聞かせてください」
「なに?」
「どうやって魔法を唱えているんです? 最初からしなかった理由は? 力を隠していたんですか?」
ルシスからの質問は一つではなかった。
これまでの冷静な彼女らしくないその雰囲気にあたしはつい呆れて返してしまう。
「……どこが一つよ」
「すみません、気に入った相手の事は知りたいので」
「はぁ、あそこに飛ばされてから気づいたのよ。あたしの中に眠るもう一人の魔力に」
真っ暗なあの空間であたしは一度全てを諦めてしまった。
けど胸に残る気に入らない男の魔力があたしに語りかけてきたんだ。
貴様の力はその程度か? これくらいで諦めるのか? といつもの生意気な上から目線で。
そんな事言われたら見せつけるしかないじゃない。弟やミラにされた事をあたしもやり返して、あたしの方が上だと分からせるしかないじゃない。
何よりこのネックレスの持ち主にもう一度会うために。
「もう一人?」
「そっ、前に貧血だった時に渡された魔力がうるさくてね。だからその魔力を使ってやったってわけ。そいつは妨害結界の中でも魔法を使える特別な魔力を持ってるから、それをあたしなりにアレンジしてあんたの聖力を無効化した」
「……は、ははっ、なんですその荒業は。益々エリカに興味が湧きましたよ」
「あたしは負けた気分だけどね。そいつの力がなかったらあんたに負けてたんだから。これじゃ怠慢じゃないもの。でも、プライド捨てたからには勝たせてもらうわよ!」
少し感情的に斬りかかるあたしをルシスはギリギリのところで防ぐ。互いに疲労が溜まっていると分かる状況だ。
ここで確実に勝つには……やるしかないか。
「だからと言って勝てる保証はないでしょう」
「聖力尽きかけてるあんたになら勝てる」
「それは舐めすぎで……なっ……!?」
もう一度ヴィクトリアスの最大出力でルシスの背後に回り込んだあたしは、彼女の後頭部を蹴り飛ばした。魔導砲を溜める動作を見せていなかったからこそ通った選択肢だろう。
一度目は魔導砲で致命傷を与えていたのだから、少しでも溜める動きを見せればあの動きを警戒されていた可能性がある。
「これであたしの勝ちよ!」
そう言いあたしは隙だらけのルシスに全力でヴィクトリアスを投げつけた。魔力タンクが増設されたヴィクトリアスならあたしの手を離れてもその破壊力は衰えない。それどころか魔力で更に加速していく。
咄嗟の思いつきだが体勢を崩しながら斬るよりは、投げて加速させた方が聖力による防御を貫通出来るという判断だ。
そして今ルシスに触れ全てが終わる。そうなる瞬間だった。
「最後に焦りましたね!」
ルシスは転移しあたしの背後に現れていた。
「勝ちを急いであの剣を手放したのは――」
「――勝ちを急いだのはあんたでしょ」
あたしが振り向いた時にはルシスにヴィクトリアスが突き刺さっていた。剣を振り下ろそうとしていたところを、転移させたヴィクトリアスに上から襲われたのだろう。ご愁傷様だ。
「なん……でっ……」
「悪いけど話す時間はないわ。さよならルシス」
そう言いあたしは魔導砲を撃ち下ろす。
聖力を切らした彼女は防ぎきれず、ヴィクトリアス共々撃ち終えた頃には消滅していた。
だが警戒は緩めない。ここで緩めれば何かあった時に悔やむからだ。
そう考えていると、あの硬い結界が消えた。という事は……。
「エリカっ! 無事か!」
「よゆー……とは言えないわね。ごめん、治してくれない? あとミラの魔力も欲しい」
普段は見せないような表情で走ってくるミラが少しおかしかった。どうにか強がりたかったが、ボロボロの衣装ではそれも出来そうにない。
「っ……はぁ、本当によかった。よくやったぞ、エリカ」
「なんでこんな時まで上から目線なわけ? ありがとうございますエリカ様、じゃないの?」
「魅了かけるぞ」
「ちょ、今それはダメよ!」
少し調子に乗ると絶対に逆らえない手段であたしは黙らされる。こんなに疲労した状態でミラの精神魔法を防ぐ自信はない。
そんな事を考えていると、周囲の雰囲気が少し変わった。
「……私の完敗です。おめでとうございます、貴女の勝ちです」
周囲に彼女の聖力は感じられないが、部屋のどこかからそんな声が聞こえてきた。
「あんたまだ生きてるわけ?」
「肉体は滅んでるので生きてると言えるかは分かりませんが、私の意思を伝える事は可能ですね」
「不思議な存在ね。それで秘宝は?」
分かってはいたが彼女は不滅の存在のようだ。まぁ、あたしの身体に秘宝を埋め込んだ奴にも負けてるわけだし、そりゃそうなんだけど。
「今差し上げますよ。でもその前に聞かせてください」
「なぁに?」
「どうやってあんな一瞬で私の転移先を把握したんですか? そもそも最後の隙はわざとでしたか? このまま帰られたら悔しくて眠れません」
どういうわけか声だけになった彼女は少し明るく感じられた。なんていうか、マリーに近いわがままさを感じさせる。
いや流石にそれは失礼か。
「あたし対転移魔法は得意なのよ。どこに出てきていつやり返せばいいのかはなんとなく分かってね。あんたも転移魔法を使えると想定しててよかったわ」
「ふぅん……では次は? 私は完全に背後へとおびき出されたんですか?」
……なんか、ここに入った時とは違いちょっと幼い雰囲気が伝わってくる。負けず嫌いで幼いガキのようだ。
変わったヤツ。そう感じながらもあたしはルシスの質問に答える。
「少し違うわ。あの隙は今のあたしでは必ず生まれるもので、わざとではない。けどあんたならその隙を逃しはしないと信じていた。だから後はあんたの動きに合わせてヴィクトリアスを転移させるだけ」
「……なるほど、意図的ではないにしろ釣られてしまったわけですか。流石ですね勇者様」
「あたしは元勇者よ。むしろ当時を思い出したくない」
今でも反吐が出る。あんな国さっさと魔物に滅ぼされてしまえ。
「それは失礼しました」
「別にいいわ。それより――」
「――わかってますよ、秘宝ですよね」
この時あたしは彼女の態度に少しイラッとした。確かにあたしは秘宝目当てで来たが、今言おうとした事はそれではない。
「それもあるけど、言いたかったのはそれじゃない」
「へ?」
「あんたも戦うのが嫌いじゃないなら、またやりましょ。今度はどっちかが滅ぶまでやるような危ないのじゃなく、楽しいやつね。あんた相手なら魔導砲本気で撃てるし」
また秘宝のやり取りで本気の殺し合いをしてもいいが、正直ここでは心臓に悪い。あっちは不滅だがあたしは肉体が滅ぶとそこで終わりだし。
……ん? いや、あたし今何を思って……。
「……………………」
「…………」
「何だこの間は」
何故かルシスは返事をせず、あたしは自身の心変わりに困惑していた。そんな気まずい空気に一言入れたのはミラだった。
「あっ、いえ……変な事を言われたもので……とりあえず、秘宝を差し上げますね」
ルシスがそう言うとあたしの前に黄色く輝く宝石のような物が現れた。なんとなく直感で分かる。これはとんでもない代物だと。
「……ありがと、ルシス」
「エリカが強かっただけです。ですが秘宝の扱いには気をつけてください。生き返った人が幸せになれるのかどうか、真剣に考えてくださいね。世の中には知らない方がいい事や死んだ方が楽になれる事ばかりなんですから」
彼女の言葉には思い当たる節しかなかった。忘れたい過去を思い出して、蘇った当時は生きる事が嫌になってたっけ。
でもどういうわけかあたしは死ぬ事を恐れ、拒むようになってしまった。この戦いでそれがよく理解出来た。
そんな変化がいいのか悪いのか、あたしにはよく分からない。
だから今のあたしがメリアを蘇らせるのは、もしかしたらただのエゴなのかもしれない。
だってあいつは、最後に仲間に見捨てられていたんだから。そんな姿が今になって自分と被る。
「…………ええ、忠告ありがと」
「いえ、それが私の役目ですから」
「それじゃあね、また会いましょ」
自分の行いが本当に正しいのかどうかも分からないまま、あたしは別れを告げ部屋から出た。
「……メリアは、生き返って不幸になったりしないかな」
「何を今更迷う。あいつなら泣いて貴様に感謝しながら抱きついてくるだろ」
「流石にそこまではしないでしょ」
ミラは断定するように言うが、あたしにはその自信がない。仲間に裏切られるのって結構くるのよね。
「賭けるか? あいつが抱きついてきたら血を貰うぞ」
「いいわよ、その代わりあたしが勝ったらヴィクトリアスもう一度作ってね」
得意気に提案するミラは吸血鬼らしく血を要求してきた。彼に血を吸われるのは嫌だが、憑き物が落ちたように笑うミラにならいいと感じてしまう。
メリアがいなくなってからは普段の表情見せなくなったもんなぁ。
「ああ、そういえば壊れてしまったな。誰かさんの手によって」
「あたしを責めないでよ。流石に余裕がなかったしやれる時に仕留めたかった」
「あの状況ならあれが正解だろう。責める気はない」
ミラがそう言った瞬間だった。
「っ……」
突然足の力が抜けあたしは倒れそうになってしまった。
幸いミラが支えてくれたおかげで倒れなかったが、思っていたより疲弊しているようだ。
「大丈夫か?」
「……ごめん、足の力抜けた」
「転移で帰ろう。フィアナスタと俺の家、どちらのベッドが希望だ?」
冷静に考えればすぐに帰るべきだった。
だがこの時のあたしは他にしたいことがあったんだ。この場でミラと、二人だけで話したかった。
「……ミラの背中」
「は?」
「この際だからゆっくり景色見ていこうよ。ロマンってやつ? だからおぶって」
普段ならこんなお願いはまずしない。というか恥ずかしい。
けど、この時はそんなのがどうでもよく思えるくらいの欲が出た。説明は出来ないが、求めたくなった。
「……頭でも打ったか?」
「それ以上のダメージを受けた。あたしの方が活躍したんだから従え」
今だけはこの男でも素直に従うだろう。我ながらそれだけの働きはした。
「分かったよ。まさか貴様に風情を感じる心があったとはな」
「今くらいはね。勝利に浸らせて」
「ロマンを語るなら言葉を選べ」
そう言いミラはあたしを背負って歩き始める。素直な彼は珍しく、おかげで気分がいい。
それにしても……あはは、こいつ背中でかいなぁ。そりゃ力負けするわけだ。
そんな事を感じながらあたしは星域を眺めていた。
暗い氷の世界を星の輝きだけが照らしている。ダンジョン内だというのに、本当に不思議な光景だ。
「ねぇ、ミラ」
「なんだ?」
「ありがとね」
「何がだ」
「生きる理由をくれて」
伝えた後ミラからの反応はなかった。だからあたしは言葉を継ぐ。
「久しぶりなんだぁ。あんなに落ち込んで、焦って、でも今はこうして秘宝を手にして安堵してる。そのどれもが久しぶりで、あたしは今生きてるんだって実感するの。全部ミラのおかげだよ」
あの時ミラがあたしを拾ってくれなければ、ここまでたどり着けなかった。悲しむ事すらなく絶望の中に居続けた。
たとえ一度大切な人を失ったとしても、こんな晴れやかな気持ちになれるのなら今の方が断然いい。それだけのやり遂げた感覚がある。
その、メリアには申し訳ないが……。
「俺は環境を整えただけだ。フィアナスタの連中は良い奴ばかりだっただろ? あそこの家は皆貴様を望んでいたからな」
「うん。ミスミなんてあたしを意識して髪と目の色変えてたからね? あたしはその色気に入ってないって言うか悩んだけど、流石に小っ恥ずかしくてやめた」
一度しか顔を合わせていないフィアナスタ家長男のミスミ。彼の印象はあれしかないが、悪い人ではないように感じられた。
「はははっ、正体を明かす時は俺がいる時にしてくれよ。普段冷静なあいつが赤面する姿は気になるからな」
「性格わっる。まぁあんたらしいけど」
笑いながら歩き続けるミラの背は少しだけ揺れて心地がいい。
適度な疲労や眠気、達成感が口を軽くするのか、気がつけばあたしは普段話さない事ばかりを口にしていた。
「あたしさ、これからもフィアナスタにいていいのかな」
「あれだけ望まれて何を言ってるんだ。めんどくさい女だな」
うるさいな、それくらい自覚してる。そう思いながらもあたしの口は止まらない。
「今くらい弱音吐かせてよ。それに力を持つミラなら分かるでしょ。自分がダメだった時にお前でダメだったなら仕方ないと言われるあの感覚」
「……ああ、分かる」
何かを感じ取ってくれたのか、ミラは茶化す事なく話を聞いてくれそうだ
「あたしアレ怖いんだ。期待に応えられなかった自分が嫌になるし、これからは期待されなくなるのかなって思うと、自分の価値を見失う。一度失敗した自分はもう不要なのかなって、考えてしまうの。フィアナスタ家の皆はそんな事思わないだろうに」
うん、きっと思わない。でもね、どうしてかそれも辛かった。怒ってくれた方が気が楽になるのかもって初めて思った。
「失敗しない奴なんていない。だから気にするな。と言いたいが、気にするだろうな貴様は」
「そうだね、多分。ミラみたいに堂々としてたいよ」
そう言うとミラは首を横に振った。あたしから見たらずっと堂々としていて生意気なんだけどな。
「残念だが俺もエリカと同じだ。責任に囚われ焦り、一人で奴に挑もうとしていた。エリカでなければ勝てなかっただろうにな」
「謙遜でしょそれ。ミラは強いよ。ムカつくくらい」
「そうじゃない。俺はエリカが思っているほど強くないという事だ。貴様が本当は臆病な一人の女の子であるように、俺も一人では弱い存在だ。今回それが身に染みたよ。ありがとなエリカ」
表情は見えないミラだが、その言葉だけであたしはなんとなく察しがついた。
互いに余裕はなかったな。心のどこかに潜む恐怖を紛らわすように戦っていた。
そんなあたしが、一番漏らしちゃいけない本音を話せるのは、多分ここだけ。
「……あたしが臆病な女の子になれるの、あんたの前だけよ」
「俺も部下にこんな本音は話さん。不安にさせたくないからな」
「あはは、理由もあたしと同じだ。じゃあさ……」
離れた所を歩いているように感じていたミラだが、ここにきて隣にいるように感じられた。だから自然と口が動く。
「あたしがミラの弱いとこ支えるから、足りないとこはよろしくね?」
「…………」
耳元でしっかりと伝えたはずなのだが、ミラからの反応はなかった。
何故だろう。そう考えていうちに視界が少しピンク色にボヤけ始める。
「ってあれぇ……やば、ミラがめっちゃ色っぽく見えてきた……首えっ……うっ……」
普段とは違う光景に困惑しながらもあたしはミラの髪と肌に目を奪われていた。
ずるいのよ、この金髪。濃くて、カッコよくて、ずるい。
肌もあたしと違って血管が浮き出てたりして、何故かそれに目を奪われる。
そしてそんな事を感じていると、少しずつあたしの眠気が大きくなる。
「……卑怯な女だ」
最後にミラの呟きが聞こえたような気がしたが、その時には既に瞼を下ろしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます