9月に入って

佳代子も学校が始まった。




「おはよう」



教室に入ってきた佳代子。




「佳代子、大丈夫?熱中症で倒れたんだってね!」



友達の一人が佳代子に駆け寄ってきた。




「あっ!うん!もう大丈夫よ、ありがとう!」



キーンコーンカーンコーン!



チャイムが鳴り、先生が入ってきた、




「起立・・・礼・・・着席」




「みんな、久しぶりだな、夏休みはどうだった?」





「すっごく暑かったけど、楽しかったです!」



生徒の一人が答えた。





「おお!それはよかった!・・・ああ!それより、○○君(佳代子の名字)、君、熱中症で倒れたそうだな、大丈夫か?」



「あっ!はい!もう大丈夫です!・・御迷惑お掛けしてすみませんでした!」



「おお!そうか!それはよかった!このところ、危険な暑さが続いているからな、この先も残暑がまだまだ続きそうだから、みんなも気を付けるように!」



この日は始業式で、授業はなく、午前中に下校した。




その日の夜、佳代子は出来るだけ速く就寝した、しかし、夜明け前、佳代子は暑さによって、目を覚ました。



「ま・・・まだこんな時間、なのに暑いわね!」



そんな中・・・




「・・・・ちゃん!・・・か・・ちゃん!」




「えっ?」




佳代子は、かすかに誰かに呼ばれた気がした。



「佳代子ちゃん!」




「だ・・・誰?」




声のする方に目をやった・・・





見てみると、部屋の中に3人の人陰が。




「きゃっ!」



佳代子は驚き、目を伏せた、しかし、また、人陰の方に目を向けた、そこに居たのは・・・



「えっ!て・・・鉄男さん・・・それに佳子さん、あっ!靖子さん・・・えっ!また私、タイムスリップしてしまったの?」



それを聞いた、部屋に居た番頭の女将さんらしき女性は、「いいえ!」と言うかのように、首を横に振った、よく見ると、自分の部屋だった。




「佳代子ちゃん、よかったわ!あなたの時代に戻れたのね・・・本当によかった!あなたが居なくなって、寂しかったけど、もういいわ!あなたは、これからこっちで、お母さんと助け合って活きていくのよ・・・ありがとう!」



その後、今度は鉄男と、思われる男性が・・・。



「佳代子さん、すまなかったな、あんなところに連れてきて、おそらく死んだ佳子が、よく似ていた君を、俺たちの所へ呼び込んだんだろ!・・佳子が死んでから、しばらく俺たちはもう活きる術も無くしてな、それを感じた佳子が俺たちを元気付けようと、佳代子さんを、俺たちの所へ呼び寄せたに違いない、本当にすまない!あの爆発で、酷い目にも遇わせてしまったな、痛かっただろ、すまないことをしたよ!」



その後、今度は佳江と思われる女性が・・・



「佳代子ちゃん、ありがとね!・・佳子が戻ってきたと思って、一時嬉しかったけど、佳代子ちゃんに酷いことをしてしまったわね!・・・ホントにごめんなさいね!これからは、あなたのこの世界で、お母さんと幸せにね!」




その後、部屋に現れた3人は、佳代子にお別れをするかのように、スーッと消えてしまった。




「ハッ!」



佳代子は、今、目が覚めたかのように、気づいた。




あわててカーテンを開けて外を見た、朝焼けに照らされた昭和山が目に入った、どうやらタイムスリップはしていなかったようだ。




「夢だったの?」




そう言いながら、まだ早いものの、起きて、学校に行く支度をした。




それからしばらくして、母親も起きてきた。




「あら!佳代子、今朝は早いわね!」




「えっ!うん!・・あまりにも暑くって、目が覚めたの!」




「クーラーぐらい付けても風邪引かないと思うわよ、無理しないで!」




「う・・・うん!じゃ!行ってきます!」




「ええ!もう学校に行くの?まだ早いんじゃないの?」



「散歩しながら行くわ!」



「そう!気を付けて!もう朝から暑いからね!」



「うん!解ってる!」




佳代子は、首にタオルを撒いて家を出た。




昭和山のある千島公園を散策するかのように、佳代子は歩き回った、もう蝉の鳴き声はない。




こうして佳代子の学校生活が始まり・・・日時が経ち、9月中旬には、中秋の名月が・・・




17日、中秋の名月・・・が、満月ではなかったと言う。どうやら、翌日の18日に満月になると言う。




佳代子達は、風呂上がりに窓を開けて、名月を眺めた。




「月が大きく見えるわね、でも最近、月にいろんな名前がついているわね、スーパームーンやウルフムーンなんて名前もあるわね、後、つい最近知ったんだけど、ストロベリームーンってのもあるわね!・・・ちょっとややこしいわね!」



母親は、月を眺めながら佳代子に話した、佳代子は、月を眺めていて、炭鉱節のことを思い出したようだ。




「♪︎月が・・・出た・・・出ーた!・・・月が・・出た・・・・♪︎あの山・・・の上に・・・出た・・・♪︎」




佳代子は呟くような声で、炭鉱節を熱唱した。



「まあ!この子ったら!」




その後は窓を閉め、2人とも、また早く就寝した。

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