佳代子への手紙

「清水さん、お二人を宜しくお願いします、それでは、私はこれで失礼します、2日間どうもありがとうございました。明日、お気を着けて大阪にお戻りください。」




添乗員は、2人にお別れの挨拶をした、2人も・・・




「あっ!こちらこそ、大変お世話になりました、どうもありがとうございます!」





その後、屋台の店員、清水は・・・




「よく、おいでなすった。まだ早いけど、もう店を開けるんで、入ってくだせぇ!」




「あっ!はい!お世話になります!」




2人は、屋台の席に着いた。





「これが、今回の写真ですわぁ!・・・あっ!これはコピーしたもんですぁ!是非、持って帰ってくだせぇ!」




見せられた写真、モノクロだが、やや赤茶けたような、かなり古そうな写真だった。




「佳代子さん、おそらくここに写っているのが、そうだと思うんじゃが・・!」




店員に示された写真をよく見ると、確かに佳代子にそっくりな女性が、かなり古そうな写真でわかりにくかったのだが・・・。




「あっ!これ!私だわ!やっぱり私、あの炭鉱にタイムスリップしていたんだわ!信じられない!」



佳代子と母親はかなり驚いた、さらに店員の清水は・・・



「あと!これは、あっし(私)の祖母が、佳代子さんに当てた手紙だと思うんだが!・・・あっ!これもコピーやけ!持って帰ってくだせぇ!」




佳代子はその手紙を受けとり、お礼を言って、早速、開いてみた・・・そこには・・・



『佳代子さん、あなたどこへ行ってしまったんでしょうか?、もし、またタイムスリップなどで、あなたの時代に戻れたのなら、それは幸いです。・・・7月13日土曜日、あの日、炭鉱内で大きな爆発がおこって、あなたが巻き込まれてしまったと聞いたあの後の事は覚えていません、おそらく、私はショックで気を失って倒れていたのでしょう、気がついたときは、医務室のベッドに寝かされていたわ。・・・鉄男さんも仕事中で、あの爆発に巻き込まれたものの、幸い軽傷で済んだわ、でもあなたが爆発に巻き込まれたと聞いて、負傷した身体で、泣き叫びながら、あなたを必死で探し回っていたわ、報せを聞いて駆け付けた佳江さんも、あなたの名前をひたすら呼び続けていたの!でも、あなたは見つからなかった、遺体すら見つけられなかったわ。鉄男さん、佳江さんに、「佳子ちゃんが帰ってきてくれた!」と大喜びした矢先の事故で、また、あなたを失ってしまったショックは、佳子ちゃんを亡くしたとき以上のショックだったと思うわ。・・・佳代子さん、また良かったら、鉄男さんの所に戻ってきて欲しいわ、でも、それはもう叶わないわね。もしあなたの時代に戻っていたら、母親を大事にしてあげてくださいね。そして、お幸せにね。

・・・・清水靖子より・・・』




この手紙を読んだ佳代子は、涙ぐんで・・・




「どうも、ありがとうございます!」



「佳代子、大丈夫?」



母親も、やや涙ぐんでいた、それを見た店員の清水も、涙ぐんでいた、そして、早速2人に料理を提供し始めた。



「・・・今日は、天麩羅でいかがですか?いろいろ用意しております!」




「あっ!はい!」




返事を貰った店員の清水は早速調理和を始めた。





「明太子の天麩羅ですぁ!」




博多名物の明太子を天麩羅にしたようだ、その後・・・




「穴子の天麩羅に、下足もどうぞ!」



いろんな種類の天麩羅が出てきた。・・・2人は食べながら。



「堺の『天ぷら、大吉』を思い出すわ、よく食べに行ったものね!」




最後には、蛤の味噌汁が・・・




「あらっ!『大吉』と、同じだわね!」




「あっ!お母さん!貝殻を床に落とさないでよ!」



「あっ!そうね!大吉じゃないから!」




それを聞いた店員の清水は・・・



「へっ!・・その大吉さん、ったあ!味噌汁の貝殻、床に捨ててもいいんですかい?」




「ええ!ですから!もう足元は、捨てた貝殻がイッパイでもう足の踏み場も無いって感じですね!」




「うへぇ!それはかなり大変そうだ!申し訳ねえが、うちはそれは勘弁して欲しいですぁ!」



「あっ!は・・・はい!わかってます!」




2人はやや慌てた様子だった。そして・・・



「どうも!御馳走様でした!・・スミマセン!こちら!戴いて帰ります!どうもありがとうございました!・・・まさか、お孫さんと会えるとは思わなかったです、凄い偶然ですね!」




「こちらこそ!あまりお役に立てなくて、申し訳ねえです!よく探して、この程度位しか出来なくて・・・」



「あっ!いえ!十分やっていただきました、ありがとうございました!」




「気をつけて、大阪にお帰りくだせぃ!いい旅を」



「あっ!ありがとうございました!」




2人は、その後ホテルに戻り、一服した後、入浴して、就寝した、博多での最後の夜を過ごした。



いよいよ翌日、大阪に戻るのだった。

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