炭鉱節と殉職した父親

鉄雄はさらに佳代子に聞いた。





「ああ!後!聞きてえ事がもう一つ有ってな・・・佳代子さん、炭鉱節を結構気に入っていたようだが!よく聞いていたのか?」





「あっ!はい!幼い頃に父親に連れていって貰ってた、夏祭りの盆踊りの時に、よく流れていたので!・・」




「盆踊り、へえ!、炭鉱節も盆踊りの時に流れるんかい?結構有名になってんだな!・・・それで、炭鉱節を、気に入ったんだね!」




「は・・はい!まあ!聞いているうちに、馴染んできて・・・つい、鼻唄等で口ずさむ事も・・・!」




「なるほど!まあ!盆踊りで、よくこの炭鉱節が流れるとはな・・!」



「はあ!・・・盆踊りの定番の曲に、なっているみたいで・・・」



「・・・で、親父さんに、よく連れていって貰って・・・か!・・・親父さん、突然、お前さんが、こんなとこに来て、・・・まあ!突然居なくなって、驚いているだろうよ、まるで神隠しのようだろうから!・・・それに、お袋さんも、かなり心配しているだろうよ!」




「父は、私がまだ10歳位の時に、仕事場での事故で亡くなりました。」




「ええっ!?おやっさん、亡くなったのかい?仕事場で・・・殉職したのかい?」




「は・・はい!仕事場だった工場が、爆発事故を起こして、もうほぼ即死だったようで・・・」




「ヒャー!そいつは大変だったな!・・・工場って、炭鉱か何かの、工場だったのか?」




「い・・いえ!普通の、機械の部品加工の工場だったんですが、溜まっていたメタンガスが、引火して爆発事故を起こした・・・と!」




それを聞いた鉄雄は・・・




「・・・・そ・・・そうか?、そいつは大変だったん・・だな!・・・まあ!この炭鉱所も変わりねえ、いつ爆発事故が起きるか分かんねえし、いつ、隧道が崩れるか分かんねえ。・・・聞いた話だがな!10数年前に、・・・まだ大正ってときにな、小さな爆発事故があってな、まあ!幸い死者は出なかったんだが、数人の負傷者が出てしもたんだ、はっきり言って、危険と隣り合わせの仕事だ!・・・まあ!まだこの炭鉱は他所に比べりゃあ、安全な方だよ!」



「・・・・・・!」




佳代子は、黙り込んで、鉄雄の話を聞いていた、佳江も、その隣で・・・鉄雄の話を聞いていた。




「まあ!ひょっとしたら、これも何かの縁かも知れねえ!・・・お袋さんには、申し訳無いんだろうけど!・・・死んだ佳子が、お前さんを、ここに呼び寄せた・・・かも知れねえよ!、佳江もズーット佳子の事ばかりで悩んでいた様だ!・・・佳代子さんよ!・・・あんたが良ければ、ここに一緒に住んでくれねえか?・・・俺も佳江も、あんたを見た時ゃあ、佳子が帰ってきてくれたと思ったんだがな!」




「えっ・・・!?」




佳代子は、驚いた。



もう、現代に戻れなくなったのか?、と思ってしまった。そして・・・。




「お父さん、お母さん、・・・わ・・・私をよろしくお願いします!」



佳代子は、涙ぐんで、鉄雄と佳江に頭を下げた・・・。







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