これまでの経緯(いきさつ)

夕食を御馳走になった佳代子・・・そして。




「さてと、佳代子さん、まずは自己紹介だ、ワシは鉄雄だ・・・で・・こっちが、妻の佳江。娘の佳子も、佳江の名前から佳子にしたんだ」




佳代子は、名前を聞いて覚えた様だ。



「て・・鉄雄さん、佳江さん・・・!、御馳走様でした!」




「ああ!・・・じゃあ、あんたは何処から来たのか、なぜここに来たのか、話してくれないか?・・・まあ!そんなに堅くならずにな、分かる範囲で気軽に話してくれ!」





「あっ!はい!わ・・私は、大阪の大正と言う所から・・・」




「大阪・・・か!、聞いたこと有るな、たしか、天下の台所と言われてたんだろ?・・・結構遠い所から・・・。ああ!そんな所から、この場所に・・・どうやって?」




「わ・・・私もよく分からないですが、自分の部屋で・・・突然、気分が悪くなったと思ったら、・・・部屋に・・よ・・・佳江さんに似た人が・・・あの!・・・!」




それを聞いた、佳江は・・・




「そう言えば、私、変わった夢を見たような気が・・・、突然、知らない人の部屋に・・・気がついたら、つっ立ってて、そう言えばあなたと一瞬目が合ったわ、あなた悲鳴をあげた途端、私、目が覚めたんだけど・・・不思議な夢だったわね!」




佳代子は驚いた顔をした。・・・鉄雄は。





「う~ん!全く信じられんがな!・・・で、その後は?」




「その後は・・・・記憶が無くて・・・おそらく、部屋の中で倒れたんだと・・・気がつけば、倒れていたことに気づいたんだけど、部屋が・・・なんだか自分の部屋じゃないような気がして、・・・今までにない、キツい臭いが・・・」




「キツい臭いって、鉱山の臭いか?」




「ええ!石炭を燃やしたかのような・・・それで、窓を開けてみたら、いつもの景色じゃないことに気がついて・・・いつも目にしている、昭和山でないような感じで・・・」




「昭和山?お前さんの家の前に・・・その、昭和山と言う山があるのか?」



「は・・はい!」




「そう言えば!聞いたところ、ぼた山に向かってフラフラ歩いて行ったと言っていたが。」




「ぼた山?・・・あの山、ぼた山って言うんですか?」





「なんだ、ぼた山って知らなかったのか、あの山はな、う~ん、なんて言ったらいいかな?・・・石炭を採掘する時は、かなり地下深く掘ってな、まあ、そのときに出る残土等を、積み上げて、ああいう山になっていくんだよ・・・、そうやって出来た山をぼた山って言うんだよ・・・ほれ!砂や土を積んでいくと山の様になっていくだろ・・・。」






ぼた山の事を聞いた佳代子は・・・




「あっ!」




昭和山の事で、聞いた話を思い出した。




「そう言えば、家の前の昭和山も、同じ様な山です・・・」



それを聞いた鉄雄は・・・。




「へえ!、お前さんの家も、炭鉱の街だったのか?」




「あっ!いえ、あの山は、地下鉄の工事で出た土砂を積み上げて出来た山だと、聞いたことがあって!」




「ち・・・地下鉄?、なんだそれ、地下に鉄が埋まっているのか?」




「えっ!?」




佳代子は動揺した・・・、そう言えば、この時はまだ地下鉄すら無かったはずだった・・・。





どう説明をすれば良いか分からなかった。



とりあえず・・・




「地下にトンネルが有って、そこを、鉄道が・・・!」



それを聞いた鉄雄は驚いた。





「ト・・・トンネル??、何だそれ?・・・・かーっ!それにしても、すごいな!トンネルって何だか知らねえが・・・、お前さんの時代は、地下にも鉄道が走っているのかい?・・・ああ!そう言えば、聞いた話だが、今年、この九州と本州だったかな、隧道で結ぶと言う話が持ち上がってな・・・どうなるんだろうね!すごいことになりそうだよ!」




「ず・・・・ずいどう???隧道って何ですか??」



「ああ!隧道、・・・知らねえか?まあ炭鉱の中にも、いっぱい有るんだがな・・・ひょっとして、トンネルって、隧道のことなんじゃねえのか?・・・地下に、隧道を掘って・・・何だっけ?地下鉄・・・だったか?・・・地下の隧道に鉄道が走るって、すげえな!・・・大したもんだよ!」




それを聞いた佳代子も、何となく分かった気がしてきた。




「でっ!その・・・昭和山?そのすぐ側にお前さん住んでいるのか?・・・たしかに、その・・・昭和山?聞いていたら、ぼた山・・・だな!・・・それで、あのぼた山を昭和山だと思って、近づいていったのか?」




「・・・・・は・・・はい!」




「う~ん!なるほどな!たしかに、突然、知らねえ所に来ちまったわけだ、お前さんも、おかしくなるよな、俺だっていまだに信じられんよ!」



「・・・・・・」



佳代子は、何も言えなかった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る