第56話 どうする? 一緒に住む?
こうして擬似初体験を済ませた俺達だったが、ホテルに入る時と出る時では完全に立場が逆転してしまった。
強気でヤンデレ気質満載だと思っていた真魚ちゃんは、実は虚勢を張っていただけの弱々な女の子だったこと。
そして俺も、救いようもないド変態だと思っていたけれど、実はイヤイヤ言っている女の子をイジメたい願望のあるドドドド変態だったこと。
あれぇ? 俺、悪化してない?
でもさ、結局俺の性癖を曲げたのは真魚だったんだから、彼女の在り方で変わってしまうのも仕方ないことのように思えた。
だってさ、目の前の子が可愛くて仕方ない。俺の腕をギュッと掴んで離さない真魚が愛しくて愛しくて堪らないのだ。
「——真魚ちゃん、俺達って付き合ってるってことでいいのかな?」
「え、え⁉︎」
その「え⁉︎」は、どっちのリアクション?
あれだけ嫌いって口にしていたけど、今はこうしてベッタリくっついて、本音が分かりにくいんだよ!
恐る恐る上目で見つめて、唇をアヒル口に尖らせて呟いた。
「慎司くんは……私のこと、好き?」
「え、今更?」
あれぇー? 俺って真魚ちゃんに好きって言ってない? もしかして何も言ってない? たくさん好きとか口にしていた気がするんだけど、気のせいだった?
「——ううん、言ってた。言ってたけど、その……言って欲しいのォ……!」
「言ってほしいって何を?」
「私のことが好きで好きで堪らないって! 今すぐ跪き、床に額を擦らせながら懇願して欲しい!」
そんな求愛されて、君はときめくの⁉︎
いやだ、そんな必死過ぎる男、俺なら嫌だけど、これはきっと彼女なりの
「すぐに強がる真魚ちゃんって可愛いよね。好き好き、めちゃくちゃ好き。だからさ、今度はもう俺の前から勝手にいなくならないで?」
更に唇を尖らせて、若干不服そうではあったものの、彼女は小さく頷いて擦り寄ってきた。
「慎司くんがそこまで言うなら……仕方ないから一緒に住んであげるわ」
「ふぇ……⁉︎」
え、待って、真魚ちゃん? 今、何て?
「ずっとずっと一緒にいてあげるから、光栄に思いなさい?」
「いやいや、展開早いし! 俺の家、ワンルームだから広くないし! ベッドもシングルだよ?」
「そんなの関係ないわ。私は近くに慎司くんがいればそれでいいんだから」
この子、ヤンデレでもメンヘラでもなく、ただのポンコツか?
けどダメだ、そんな彼女が可愛いと思ってしまっている自分がいる! 弱いんだよ、ギャップに……!
「慎司くん、これからはずっと、ずーっとそばにいてあげるから安心していいわよ?」
「意味分かんない。何が安心なんだ? 一番の危険因子は間違いなく真魚ちゃんだと思うんだけど?」
そしてまたしても八重歯を見せて無邪気に笑って。
「大好きよ、慎司くん。これからあなたに特製の首輪をつけてあげる。私の旦那様っていう特別な存在よ」
さっきまであんなに弱々しくニャンニャン鳴いていたくせに生意気な。
でもそんな真魚ちゃんの一面を、俺しか知らないんだと思うと優越感が込み上がる。うん、悪くない。
「んじゃ、真魚ちゃんには特別なリードを買ってあげないとね。これからジュエリー店へ行って、一緒に指輪を選ぼうか?」
「あら、慎司くんにしては気が利くじゃない? さすが私が見込んだ旦那様」
こうして俺達はハッピーエンドに向かって歩き出した。
———……★
「………え? マジすか? 0日交際?」
「うん、成り行きでね。あと俺、自分がドMだと思っていたけど、違ったみたいだしさー。危ないね、自分の性癖を誤って認識していると!」
「いや、慎司さんの性癖なんて一ミリも興味ないし!」
って言いながらも、ちゃんと最後まで話を聞いてくれる崇には感謝しかない。
え、ちなみにあれからできるようになったかって?
まぁ、それなりに回数を重ねれば、ね?
相変わらず強気な態度で俺のことを必死に振り回そうとしているが、その行動に愛を感じながら。俺達はそれなりに上手く過ごしていると思う。
「今度、崇と千華ちゃんにも紹介するよ。俺の奥さんとも仲良くしてやってよ」
「え、俺……刺されたりしないですよね? 慎司さんの話を聞いていると不安になってきたんですけど」
「刺さねぇよ! 人の奥さんをなんだと思ってんだよ、この野郎!」
———……★ END
最後までお読み頂き、ありがとうございました! いや、慎司さんの話、当初は書く予定じゃなかったんですが、別の新作書いていた時に「……ん、この主人公、慎司さんっぽくない? 微妙にヘタレっぽいところとか」って思って、それからは真魚のようなSっ気のある元カノが慎司の奥さん像にハマってしまって、ついつい今作を書いてしまいました。
人気なヤンデレ彼女ジャンルですが、個人的にギャップが最高だと私は思っています。ツンデレみたいなモノですかね?
っていうか、やっぱり彼氏や旦那に甘々な部分が見せられる子が大好きなので、真魚ちゃんも詰めが甘くなったなと反省しております。
個人的には殉教様が描かれたドロドロな展開が好きでした。二次創作、ありがとうございます✨ でも私よりも面白い展開を発揮されるのでどうしようとハラハラしております💦
では、また次の執筆が終わったらこうかいいたしますのでよろしくお願いいたします!
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました✨
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