LAST 崇・千華……ご褒美ハッピーライフ編
第47話 思い返せば色々あった……
春樹さんと赤江さんの騒動から数年後。
半身不随になって不自由になった春樹さんだったが、一人でも車椅子があれば生活ができる程度まで回復できた。
これも全部、献身的に支えてくれた赤江さんのおかげだろう。
あんなにも小物感が満載だった彼も、今では腰が低くなり、柔らかい物腰で接するようになったので、人間は変わることができるのだと勉強になったものだ。
「本当に千華と崇さんには感謝しても尽きないというか……。二人のおかげで目が覚めて、今の生活があるってもんです」
車椅子に乗った春樹さん。そしてそれを押す赤江さんと、彼の膝にちょこんと座る一人の女の子。
そう、二人は無事に子供を授かることができたのだ。
名前は
性格はともかく、外面完璧美男美女の春樹さんと赤江さんの子らしく、とても可愛くて天使のようにニコニコと笑顔を振りまいていた。
「下世話なことを聞くけど、春樹さんってその……デキるんですか?」
「うーん、デキないことはないけど、完全受け身で任せる感じになるから微妙かな? 妊活自体は人工授精とかでなんとかなったけど。色々と赤江に申し訳なく感じるんだよね」
「何をおっしゃっているんですか。私は全然気にしていないと言ってるじゃないですか。むしろ浮気の心配がないので安心してますわ」
憑き物が取れたかのように晴々とした表情の赤江さん。もうすっかり母親の顔になっていた。
「それにしても、千華さんの旦那様も素敵ですわね」
お世辞と分かっていても、つい照れてしまう。デレデレと情けない顔で笑っていると、ギロっと鋭い目で睨まれてしまった。
「もう、崇さんったら、そんな鼻の下を伸ばして情けないんだから。ねぇ、
「うん、ママすきー!」
そう、あの時に妊娠した子も、すっかり大きくなって三歳になっていた。なんと花笑ちゃんと同じ学年なのだ。
あんなに縁を切りたいと願っていたというのに、今ではこうして家族ぐるみの関係に落ち着いているのだから、人生というものはどうなるか分からないものだと考えさせられる。
ちなみに羽織さんはまだ春樹さんと赤江さんの所業を許してはおらず、話題に上がるたびに不機嫌になって怒り散らしている(それが正常な反応なのかもしれない)
「そういや、春樹さんは仕事は何をしてるん?」
「あー……今は一応在宅の仕事を少しね。ネットでアパレル関係とかしてるけど、中々だよ。ほとんどを赤江に任せている感じ。その分花笑の送り迎えとか家事はするようにしてるけど。それができるのも全部、崇さんが世話を焼いてくれたおかげだよ」
「いや、俺は介護関係の仕事をしているから詳しかっただけで」
事故の際に下りた保険金や手当てなどを頭金に、バイアフリーに特化した家を建設し、二人で花笑ちゃんが楽しく過ごせるように徹底したのだ。
「実際、赤江だけじゃなくて崇さんの助けがなかったら、俺はあのまま鬱になって死んでたと思うし。何度も死のうと包丁を首筋に当ててたなぁ」
「死ななくて良かったな。二人のもとにきてくれた花笑ちゃんに感謝しなきゃ」
公園で楽しそうに戯れる母子達の姿を見つめながら、春樹さんは涙ぐみながら空を仰いだ。
「——今更だけど、堕してしまった子供も……早まらなければ良かったな。空で元気よく遊んでくれればいいんだけど」
「そうだね……。聞いた話だけど、天使になった子供は思い出してもらえるだけで、愛されていると嬉しくなるそうだよ。だからこれから先も、空に向かって笑ってやればいいよ」
きっと、あの白い雲の上から手を振って笑っていてくれているに違いない。
「パパー! おなかしゅいた」
「パンパン、たべるー」
空には天使、目の前には愛する妻と子供達。
ボロボロと涙を流す春樹さんにティッシュを渡して、俺は車椅子を押し始めた。
「そう言えば……崇さん達の結婚式ももうすぐなんだよな? 本当に俺達も参列してもいいのかな?」
「もちろんだよ。特に花笑ちゃんには啓太と一緒にリングガールを頼む予定なんだから。それにあの時のことを申し訳思っているなら、ちゃんと俺と千華さんの幸せな姿を見届けてやって。そして見習って? 今度は赤江さんと花笑ちゃんを幸せにするんだって」
「ははっ、言うねー崇さんも。………うん、祝福するよ、だって崇さんは俺の尊敬する先輩だからね」
晴々とした青空の下——……俺達は歩み出した。明るい未来と、幸せを願いながら。
———……★
【 完 】
って言いたいけれど、もう少しだけ続きます(笑)結婚式と、慎司さんや透子さん、羽織さん達を描きたいです。
あー、でも結婚式、皆で参列するなら修羅場が起きるかもw 羽織無双、起きるのか⁉︎
ちなみにこの回、うるっときながら書いちゃいましたw 崇、お前さぁ……! 泣かせないてくれー!
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