第36話 おま……っ! マジかよ⁉︎
それからの数ヶ月は怒涛の日々だった。
お互いのご両親に挨拶をして、新居を探したり。職場に関しては色々と大変だったが、引っ越しならば仕方ないと渋々了承してもらえたものだ。
一先ず籍も入れて、千華さんは田中千華となったが、未だにむず痒しさが込み上がって消えてくれない。
「いや、お前……っ! それマジかよ⁉︎」
「こんな嘘を慎司さんに吐いて何の意味があるんですか?」
「うん、そうだよね! 無意味だと思うよ、そんな嘘! でもさー、急展開にも程がある! え、挙式は? 披露宴はしないん?」
「それは後日、きちんと準備をして行います。念の為に千華さんの元カレが復縁を迫ってきた時に法的に訴えられるように夫婦になっていた方がいいかなと思って」
夫婦——……そう、俺と千華さんは夫婦になったのだ。そう思うと感慨深くなる。
「マジかー、本気で結婚するとは思ってなかったわ。え、良かったん? まだ交際して一年位だったよな?」
しかも千華さん20歳、まだ楽しいことはこれから沢山経験するはずだった年齢と言っても過言ではない。
俺は千華さん以上の人に出会えると思っていないし、彼女を守る為なら戸籍の一つや二つ構わない。
「俺の両親もスゴい喜んでくれたんで、親孝行できて良かったです。それに千華さんのご両親も。正直、彼女の親御さんはまだ春樹さんとお付き合いしていると思っていたみたいなんで、かなり驚いていましたが」
ピクっと慎司さんの耳が動いた。
「千華ちゃんの親御さんは、交際していたことを知ってたん?」
幼馴染として共に育ってきた千華さんと春樹さん。当然、親公認の関係だろうと思っていたら案の定だった。
「だから俺は、自分たちがどれだけ仲が良くて楽しく過ごしているかを伝えてきました。春樹さんのご家族の耳にも届いたらいいんですけどね」
ニッコリと笑みを浮かべる俺に、慎司さんはガタガタと震えながら後退りしていた。
「この確信犯! 鬼ィ‼︎ そんなん俺の知ってる崇じゃない!」
「えぇー、良い子ちゃんのままじゃ愛する人は守れないんですよ」
自分さえ我慢すればいいって考えは、永吉達に関わった時に捨てた。自己犠牲したところで分かってくれれば良いのだが、世の中いい人ばかりではないのだ。
「大事な元カノが他の男と結婚するって、どんな気分なんですかね? 俺は雪世のことなんてどうでもよかったんですけど、春樹さんは相当未練抱えていると思うし」
「あとあの女、赤江だね。あいつも相当な狂人だったけど」
大好きな春樹さんと楽しく過ごすために、千華さんに復縁を迫った赤江さん。
彼女自身、妊娠して堕した過去があるにも関わらず、春樹さんに固執するのは何故なのだろう?
それに一度だけ会ったことのある春樹さん。
彼に関しても分からないことだらけだ。
「結婚したって話を耳にした時、簡単に諦めるかな? それとも何か手を打ってくるだろうか」
「どうだろうね。これで縁が切れたら一番いいんだけど、簡単に諦めるようなやつにも見えないし」
その際は永吉達の時みたいにならないように心掛けなくては。もう千華さんが苦しむ様子を見たくない。
———……★
「結婚、結婚……いいなぁ、崇は」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます