第28話 青ざめる通話履歴……!
甘くて官能的なひと時を終えた俺達は、千華さんの通話履歴をを見てゾッとした。
「繋がってた……? え、いつ?」
もしかして俺が強引に押し倒した時だろうか?
非通知の相手が誰かも分かっていないのに、とんでもない失態だ。
一時間前の俺、戻ることができるのならしっかりスマホを机の上に置いてから致しなさいと忠告してやりたい。
「………別に気を使わなくてもいいよ。仮に元カレが掛けてきたとしても、今の私には関係ないし」
「でも、もしパン屋の男が元カレだとしたら、奴はまだ千華さんに未練を持っているし」
「私にはもう関係ないの。だからいいんだよ」
彼との関係は終わったとニュアンスを纏って、爽やかな笑顔で言い切った千華さんがこの上なく綺麗で可愛らしかった。
「俺が元カレの立場だったら、絶対によりを戻すって死力を尽くす……! 千華さんを手放したくない」
ある意味、同情を覚えるよ、春樹さん。
「え、あ……でもさ、崇さんと春樹じゃ全然違うよ? 春樹は他の女の子と遊んでばかりだったけど、崇さんは私のことを大事にしてくれているでしょ? 私も崇さんと一緒にいる為に頑張り続けるよ? おじいちゃん、おばあちゃんになっても一緒にいたいもんね」
「千華さん……!」
こんな嬉しい言葉をもらって、自分は幸せ者だ。だが、時折もやっとしてしまうのは、呼び方のせいだろうか?
俺のことは崇さん、元カレのことは春樹。
俺も千華さんと呼んでいるから一緒なのだけれども、モヤっとする。
だが目の前で無垢に微笑む千華さんを見たら、こんな嫉妬は微塵子レベルだと捨て去ることができる。
今の千華さんの彼氏は俺なんだ。
俺が千華さんを幸せにしてあげなければならないのだ。
できることなら元カレよりも、彼女の喜ぶことをしてあげて「崇さんと付き合ってよかった♡」と満足してもらいたい。
その為には敵のことをもっと知りたい。
しかし千華さんから春樹さんのことを聞くのは何か違う気がして、仕方なく強力な味方に助言を頼むことにした。
———……★
「え、春樹から連絡が来た? いつ⁉︎」
「多分だよ、多分! ほら、春樹の番号を着信拒否にしたから、それで非通知でかけてきたんだと思う」
「それにしたって、今更何の用なのよ。アイツ、赤江との赤ちゃんがいなかったっけ?」
「うーん、まぁ。最後に見た時には堕した後っぽかったけどね」
後日、春樹さんのことを相談するために、羽織さんを家に招待したのだった。
あわよくば彼女から春樹さんの話も聞きたいと思ったのだが、二人のトークに入ることができず傍観者に徹することしかできなかった。
「まぁ、いいんだけどね。千華、アンタもやっと春樹と縁が切れたんだから、絶対に再会したらダメよ?」
羽織さんにここまで言われる春樹さん、一体どんな人間なのだろう?
「春樹? あぁ、アイツはね……誰にでもいい顔をする八方美人タイプ。そのくせに甘え上手で面倒くさくて、私は苦手なタイプだったなぁ。ねぇ、崇さん。しっかりと千華のことを守ってあげてね? アイツは自分のことを棚に上げて、独占欲を主張するような我儘野郎だったから」
「そうなんだ……そうは見えなかったけどな」
「一見、いい奴そうに見えるけど、実際はかなりのヤンデレ野郎よ。千華も何回痛い目にあったか……」
羽織さんは千華さんに気を配って、肝心な部分を隠して言葉を選びながら説明してくれた。
もしかしたら何があったのか詳しく聞いていた方がいいのかもしれない。
俺の知らない事実を羽織さんは伝えたいけれど、千華さんに遠慮しているように伺えた。
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