第26話 激甘なご褒美を……【甘々】

 こうして永吉夫妻(正しくは夫婦ではないのだが)の毒牙から逃れる事ができた俺達は、自分達を労う為に、ちょっとした旅行に行くこととなった。


 海が一望できるオーシャンビュー。

 しかもそこそこ良い部屋だ。


「ことの発端は俺にある……。せめてもの償いだ! 千華ちゃんと一緒に楽しんでくれ!」

「慎司さん、ありがとうございます! 遠慮なく頂きます!」


 こうして近場のリゾートホテルをプレゼントしてもらったのだ。

 そう、元々慎司さんの発言がなければ、こんなことにはならなかったのだ。便乗した俺も悪いのだが、慎司さんの悪ふざけは度が過ぎていた。


「でもそんな慎司さんだけど、一つ朗報があったみたい。羽織ちゃんとは何も進展しなかったけど、透子さんとはいい感じになったみたいだよ?」


 ブハッと、思わず口に含んでいたビールを吐き出してしまった。


 嘘だろう、あの慎司さんと透子さんが⁉︎


「一緒に動画を作っている最中に、少しずつ惹かれあったみたい。世の中って何が起こるか分からないね」

「それは予想だにしていなかった展開だよ……」


 お互い我の強い者同士。少しでも幸せが続いて欲しいと願うばかりだ。


「でも、案外そういうカップルが長続きするんだと思うよ?」

「千華さんの言うとおりだね。俺もそう思うことにするよ」


 白と黒をベースにした部屋造り。大きな窓からは映画のワンシーンのように美しいサンセットが海を橙に染めながら沈みかけている。

 キラキラと光る波の輝きが眩しくて幻想的だ。


 ビールを片手に眺めている俺に、千華さんは寄り添うように手を添えて、そのまま顎のラインに唇を押し当ててきた。


「えへへー……、崇さん、大好き」

「俺も、千華さんのこと世界で一番好きだよ」


 絡み合っていた指先を上げ、そのまま口付けをして、ゆっくりと身体を絡ませていった。


 旅はまだまだこれからだというのに、俺達は互いを欲して止まなかった。


 ソファに押し倒して、そのまま貪るように求め合って。甘い時間を堪能しあった。



 ———……★



 それからホテル自慢の露天風呂を楽しんだり、ホテルの海鮮料理を堪能したり、久々に充実した時間を過ごしていた。


 こんな素敵な旅をプレゼントしてくれた慎司さんには、とびきりのお土産を用意しなければならない。

 せっかくなら透子さんとお揃いのご当地キーホルダーでも買って帰ろうか。


『小学生じゃねーんだから、ふざけんな! 地酒だ地酒!』


 ——うん、リアルに慎司さんの会話が浮かぶあたり、俺はもう末期なのかもしれない。


 そしてお世話になった羽織さんにも、千華さんはたくさんのお土産を購入してした。


「羽織ちゃんと一緒にお菓子パーティーするんだ。崇さんも一緒に参加する?」

「え、俺もいいん? せっかくの女子会なのに」

「崇さんならいいよ。羽織ちゃんも崇さんとゆっくり話してみたいって言ってたし♡」


 ずっと荒んだ状況だったせいで忘れていたけれど、久々に可愛い千華さんに触れて、心が穏やかな気持ちになった。

 お土産を買い終えたら、また一緒にイチャイチャしたい……。


「あー、これからもずっと千華さんとこうしていたいな」

「うん、私も。崇さん、これからもよろしくお願いいたします♡」


 こうしてやっと手に入れた平穏な日常だったが、俺はすっかり忘れていた。



 そう、俺は問題を呼び寄せる不幸体質。

 自らが立てたフラグの存在に、まだ気付いていなかった。



 ———……★


ちなみに、先中では執筆いたしませんでしたが、永吉と雪世は仕事もクビになり、結婚式のキャンセル料も借金に。

家族からも白い目で見られ、引きこもりすら許されない状況に。


その後、雪世は風俗になるけれど客と本番で金をもらっていた為、違反でクビに。しかも性病になって哀れな人生を送ることに……。

そして永吉はアル中になって、酔った勢いで半グレに喧嘩を売って、その後の所在は不明に……。

取り巻き二人も、会社をクビになり、誰からも相手にされない人生を送ることとなったとか……。


皆様、悪いことをしたらしっぺ返しを喰らってしまいます。人に優しく正しくいきましょう……!

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