第23話 やっぱりクズはクズ。救いようなんて1ミリもない
千華視点……★
どうしてこうなったかは分からない。
その日は、既に崇さんが出勤していたので、一人でバイト先へと向かう予定だったのだけれども、家を出て間もない時に知らない男達に囲まれて、行き手を塞がれてしまったのだ。
ううん、違う。
知らない男ではなかった。
ただ、直接面と向かって対峙したのは初めてだった。
「君、田中崇の彼女……?」
黒パーカーに深く被った黒帽子。そしてマスクとサングラス。怪しさ満点だけれども、隠しきれないプクプク太郎感。そして取り巻き男子、二名。きっと池野さんと小井田さんだろうと安易に予測できた。
そもそも私が崇さんの彼女なら、何だっていうのだろう?
「そうだとしたら何ですか?」
強気な言葉遣いに、永吉達は少したじろいでいた。
いくら裏路地に連れ込まれて、三名の男性に囲まれているからって、女性が皆怯えて怖気つくと思ったら大間違いだ。
「言っておきますけど、私が崇さんの正式な彼女で婚約者ですから、今更しゃしゃり出られても困ります! あなたも自分の婚約者の手綱くらいしっかり握っていて下さいよ、永吉さん!」
「なっ、何で俺の名前を⁉︎」
いくら変装して犯罪者の真似事をしても、丸っとお見通しなのだ!
「あなたの彼女さんのせいで、すっごい迷惑を被っているんですからね? もし責任転嫁で崇さんに慰謝料請求なんてするつもりでしたら、逆に私があなた達を訴えますよ? そもそも本来だったら崇さんに関わってほしくなかったんですから……。あなた達、一体自分達がどんな酷いことをしたか理解していますか? 崇さんに彼女を紹介しておきながら寝取るとか、人間のクズですからね? 分かっているんですか?」
言いたいことは山程溜まっていた。言っても言ってもキリがない。だが、何だか様子がおかしい。
もっと反論したり、怒りを露わにしてくると思っていたが、男達はモジモジしてばかりで何もしてこなかった。
「な、永吉さん! 田中の彼女、可愛すぎませんか⁉︎ こんなに可愛いなんて聞いてないんですけど!」
「ししし、知らねぇよ! 俺だって彼女がいるっていことしか聞いてなかったし!」
「雪世ちゃん、自分よりもブスの高飛車女だって言っていたけど、どう考えても雪世ちゃんの方が格下だし!」
「おい、小井田! 人の彼女をディスるな! 雪世もそれなりに可愛いだろうが!」
若干前屈み気味に股間を押さえているのが気になったが、どうやら彼らにとって想定外なことが起きているらしい。
本来だったら結婚式当日に慎司さんと透子さんに復讐を頼もうと思っていたのだが、この際だから言いたいことは全部言わせてもらおう。
「永吉さん! 言わせてもらいますが、あなたがバカにして見下している崇さんは、永吉さんが思っている百倍も千倍も素晴らしい人なんですからね!」
「は、はい……!」
「でもだからと言って、人の彼氏を自分のものだって言ってくるのは人間としておかしいです。しかも自分から蔑んで別れたくせに。自分にも結婚前提の婚約者がいるのに、他の人の彼氏を欲しがるのも頭がおかしいです。あなたからも彼女さんにしっかり言って下さい」
永吉さんは顔を真っ赤にしなの言葉に耳を傾けていた。
ううん、違う。傾けているんじゃない。
これは——怒りでプルプル震えているだけだ!
「——るさい、ぅるさい、うるさいうるさい‼︎」
感情のまま両手を前に突き出した永吉の掌が、私の肩に辺り、そのまま倒れ込んでしまった。バランスを崩した私は、そのまま池野に倒れ込んでしまった。
「何も知らないくせい! 大体な、雪世は崇よりも俺を選んだんだ! あんたがいくら田中を褒めちぎったところで、アイツよりも俺の方が上なんだ!」
「——意味が分からない。アンタよりも崇さんが下のはずないよ。見た目の内面も全部、崇さんの方が素晴らしいから!」
「嘘だ、嘘だ! 俺の方がずっと偉いんだ! そんな言うならあなたに俺の良さを伝えてやる! 俺はな、アイツよりも大きなブツを持っているんだからな!」
そう言って腰をグイっと突き出して——……きもっ!
たじろぐ私の自由を奪おうと、永吉は池野達に指示を出し、私の手足と口を縛り上げようとしてきた。
「やだ、ヤメテ!」
「きっとお前も、俺のデカい宝刀を味わったら、もう田中なんかで満足できなくなるはずだ。天国を見せてやるから、一緒にホテルに行こうぜ?」
「行かない! 死んでも行かない‼︎」
「とりあえず、こんなところで大声を出されても困るから、近くの貸し倉庫へと移動するぞ!」
そして私の抵抗は虚しく、車に連れ込まれて監禁されてしまったのだった。
———……★
※ 永吉達の行動はれっきとした犯罪行為です。くれぐれもこんな人生を不意にするような行為は行わないようにお願いいたします。
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