第12話 そうだ、コイツはそういう女だった……!
「私達ってちゃんと別れていなかったし、田中くんもまだ私のことが好きなんでしょう? 久しぶりに会って気付いたの。私、あなたのことが好き!」
あまりにも突飛な行動に、雪世以外は思考がショートして固まってしまった。
コイツ、今まで散々ネチネチ前戯野郎として蔑んでいたくせに⁉︎
「ゆ、雪世? お前、頭がおかしくなったのか? コイツは田中だぞ? お前がこっ酷く貶して捨てた、あの田中だぞ?」
「丈太郎、ゴメンね? 私、田中くんのことが忘れられなかったの!」
いやいや、俺に対して微塵の恋慕も申し訳なさも感じていなかっただろう?
ダメだ、コイツと話していると頭がバグりそうだ。頼みの綱だった慎司さんなんてフリーズしたままワナワナと震えている。
「——いや、頭おかし過ぎるだろう? 結婚報告のマウント取りに来ておいて」
後先考えず有能な悪役令嬢に婚約破棄を言い渡す頭の悪い王子並に狂っている。しかもコイツ、自ら浮気をして別れたことを忘れているのか?
「丈太郎と関係を持ったのは田中くんに嫉妬して欲しかったからだよ? 雪世は俺の彼女だって怒って欲しかったんだもん!」
いや、それは人間としておかしい。
絶対に嘘だ。
コイツ、俺の見た目がマシになったから乗り換えようとしているだけなんだ。
「いやいや、俺……彼女いるから。今更ヨリを戻そうなんて、引くわ……ドン引きだよ」
「はァ? 私のことを好きなのに彼女がいるってどういう意味? 浮気? 浮気してるの?」
浮気して俺を捨てた奴が怒るなよ!
どうしよう、あまりにも次元の違う思考回路に脳が破壊されてしまう。
誰か助けて、この女、頭がおかしい!
「ゆ、雪世! とりあえず帰ろう! 田中、慎司、迷惑を掛けたな!」
「待ってよ、丈太郎! 私はまだ田中くんと話が!」
「今のお前はただの
去っていった台風並の災難に、俺達は涙目になりながら顔を見合わせた。
「お、女って恐ェー……! あの女だけなの? それとも女は皆、あんな感じなのか⁉︎」
「雪世が特別変だと思いたい……! 千華さんも不思議ちゃんではあるけど、キ◯ガイではないはずだ!」
「羽織ちゃんも違うはず! っていうかさ、お前どうすんの? このままじゃヤバいんじゃないか?」
慎司さんの言うとおりだ。このままでは雪世に復縁を迫られ続けてしまう。自分のことを棚に上げて。
「そんなことより、もし雪世が千華ちゃんの存在を知ったら手を出してきそうで恐くないか? あの女なら千華ちゃんを監禁して乱暴しかねなくない?」
そう言われれば、そうかもしれない。
くっ、こんなことなら永吉先輩達に会わなければよかった。やはり触らぬ神に祟りなしだ。
俺は頭を抱えながら、どうするべきか真剣に悩んだ。悩んで悩んで悩み果てたが、結局良い案は思いつかないまま無情な時間だけが過ぎていった……。
———……★
「ただいまー。永吉先輩の聞き込みに行ってきたよー……って、うわぁ! どうしたの、二人とも!」
屍体のように横たわる俺達を見て、羽織さん達はびっくりして腰を抜かしそうになった。
「いや、実は二人が出て行った後、永吉先輩と元カノが来てさ……」
「え?」
一部始終を千華さん達に話した。
マウント取りに来たくせに、何故か婚約破棄を宣言してキ◯ガイな発言を繰り返して去っていった最悪最低なカップルの話を。
「えー……、ネチネチ執拗前戯野郎って貶していたくせに、イケメンになった途端彼女面してきたとか最低じゃん。崇さん、どうしてもっとちゃんと言ってやってくれなかったの? 俺には千華っていう可愛い彼女がいるってさー」
「あまりにも突拍子もない行動に思考が破壊されていたんだよ。千華さんのことを話して千華さんが危険な目に遭うのも怖かったし」
「そりゃ、そうだけどさー……。けど崇さんは千華の彼氏なんだよ? もっとしっかりして欲しかったなー」
羽織さんの言い分はもっともだが、俺の心境も察してほしい。
すると、口を固く閉ざしていた千華さんが立ち上がって、そのままギュッと抱きついてきた。まるで駄々を捏ねて甘える子供のような行動に、一同は驚きを隠せなかった。
「ち、千華さん? 急にどうした?」
「——渡さないもん」
「え?」
「崇さんは私の彼氏だもん。いくら元カノでも絶対に渡さない。私、雪世さんと戦うから!」
「な——っ! (可愛い、天使過ぎる‼︎)」
こうして俺の脳は、両極端な刺激によって破壊寸前まで追い詰められてしまった。
———……★
「キチ◯イの後の癒し……!(ただし不思議ちゃんな模様)」
5月22日付、★ありがとうございます!
らす様・@hisuisyoku様・@Ryuukun様・@NoahCha様・@murasamedayo様・ゴブゴブ様・@kenndama様・@hachisuhachi様
次回はちょい甘回♡
ざまぁも大事だけど、甘々もね✨
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