第9話 N・Y・Z作戦、発動!

 ——とはいえ、個人的にはザマァなんてしている暇があったら、可愛い彼女とイチャイチャしていたいものなのだが、それは俺だけなのだろうか?


「だってヤラレっぱなしって悔しくないか? 俺は悔しい! あのプクプク太郎の泣き面を拝みたいんだ!」

「そりゃ、俺も拝みたいけど……何をすればいいんだろう?」


 きっとおつむもお股も緩い二人のことだから、少し突っつけば埃はいくらでも出そうだが、不貞をスクリーンに映し出して暴露——っていうのは、逆に結婚式を妨害したと慰謝料を請求されかねない。


 案外、ザマァを成立させるのにはリスクも生じるのだ。


「とりあえずお前一人じゃ仕方ないから、千華ちゃんにも協力を頼もう。『N・Y・Z作戦』だ!」

「NYZ? 何すか、それ」

「N(永吉)Y(雪世)Z(ザマァ)作戦の略」


 ——聞かなきゃよかった。


 とはいえ、この作戦に千華さんの協力は必要不可欠である。助けて欲しいとお願いしたら二つ返事で了承、更に強力な助っ人がいるので声を掛けてみると言ってくれたのだ。今からその子に連絡をするから4人で集まろうと発案してくれた。


 ———……★


「ハジメマシテ、千華の友達の木村きむら羽織はおりです。今回は元カノを寝取られた彼氏さんの復讐をお手伝いして欲しいと頼まれたんですが、間違いないですか?」


 ショートカットの勝気な美少女は、出会い頭に壮絶なインパクトをぶち撒けてきた。


 間違ってないけど、間違えてはいないけど……!


「オブラード! 千華さん、寝取られたって、何で知ってるん⁉︎」


 俺にとって人生最大の汚点なのに、その情報を千華さんの友達が知っていることがおかしい!

 すると慎司さんと一緒に手を合わせて、テヘペロと舌を出して謝ってきた。


「ゴメンナサイ、詳細は全部慎司さんから聞いちゃいました」

「だって、親友の名誉のためなんだよ。許せ、崇」


 誰が許すかよ、この野郎……!

 仮に千華さんは許すことはできても、腐れ外道の慎司さんは許し難い。


「だが、こうなってしまった以上は話さないといけなかっただろう? 嫌な思い出を自ら白状するよりも俺から説明していたほうがいいじゃないか」

「その心遣いは感謝するけど、問題は話した内容なんだよ。慎司さんのことだから余計なことを話していそうで恐いんすよ!」

「大丈夫! お前がネチネチ粘着エロ野郎だったせいで寝取られたって話したから!」

「ソレだよ、ソレ! 俺が恐れていたのはそう言うところ!」

「大丈夫、崇さん! 私はそんなネチネチ粘着質なところが好きだよ!」


 だぁぁぁ! 俺はどんなモチベーションとスタンスでいればにいんだよ!


 頭を抱えて嘆いていると、新顔の羽織さんが同情した表情でポンっと肩を叩いてきた。


「心境察するよ、崇さん。私はアンタみたいなお人好しが嫌な思いをしているのが許せなくてね。うんうん、こんな美味しいシチュエーション、滅多に遭遇できない! 皆で盛大にザマァをお見舞いしてやろう!」

「おい、美味しい言ってるじゃん! お前も馬鹿にしてるだろう、羽織さんよォ!」


 こうして当事者である俺を置いてけぼりに、他のメンバーは和気藹々と作戦を練り出した。


「そもそも崇さんは元カノさんを寝取られて悲しくなかったんですか? 普通は許せないって逆上しそうなのに」


 昔の状況を知らない羽織さんは、率直な疑問をぶつけてきた。


「えー……、その時は俺よりも永吉先輩の方が男として魅力的だったから、心変わりしても仕方ないかなと思っていて」

「こんなイケメンなのに? その永吉って奴、そんなにイケメンなの?」

「いやいや、アイツはもうプクプクと幸せ太りをした性悪野郎だよ」


「???」


 千華さんと羽織さんの頭上にクエスチョンマークが浮かんでいた。


「えー、その雪世さんって人は、ブサ専? もしくはデブ専?」


 全ての事情を把握している慎司さんは、堪えきれずにブハッと吹き出した。


「アハハハハ! いやいや、当時はそれなりに頼りになる男だったんだよ、永吉も! 後輩にも慕われていて、俺様な性格も男らしいと言われていたと思うよ? 今は少し残念な奴だけど」


 俺も千華さんと出逢って、多少はマトモになったが、雪世と付き合っていた当時は酷いダサ男だった。だから浮気をされても仕方ないと諦めていたものだ。


 それで終わっていれば何てこともなかったのだが、昔の驕りのままマウントを取ろうとした結果、彼らは俺たちの反感を買ってしまったのだ。


「んじゃー、私と千華は永吉先輩と雪世さんについて調べてみるね。おそらく崇さんにマウントを取るくらいだから、もっと悪どいことをしてそうな気がするし」


 こうして永吉先輩たちの結婚式に向けて、俺達は着々と情報を集めることにした。


———……★


「それより千華さん。羽織さんにはどう説明したん? 場合によってはちょーっと説教が必要かと」

「え? 私はそのー……慎司さんに言われた通りに話しただけでー」

「慎司さん! 本当勘弁してくださいよ! 千賀さんに振られたら元の子もないんですからね!」

「うむ………」

「(ダメだ、コイツ……! 自分に彼女がいないから、同じ所まで引き摺り込もうとしてるな)」



5月19日付、★ありがとうございます!

@dred2914様・菩提樹様・@50shin様・@Gplus様・@TETU0323-2様・@249877kuyams様・@brasileiro様・鳴神 灯夜様


慎司先輩、酷いけど憎めないキャラ。

私は好きです(笑)


それにしても、ありえない凡ミスしてました。最初、DAIG○さんみたいな作戦言っていた慎司さん。【MYZ作戦】って言っていたけど、永吉はNじゃ……っ!


崇もツッコミいれろォー! って、公開1分前に気付きました。もちろん間に合ってません(笑)

申し訳ございませんでしたm(_ _)m💦

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