第3話 千華さんは少し不思議ちゃんらしい【R−指定】
あの日、ぶつかりオジさんから彼女を助けてから連絡先を交換し合った俺達は、何度か連絡をし合って、一緒に食事を繰り返して——そしてお付き合いすることとなった。
そう、俺のようなダサ男にも優しい彼女、
あの日、彼女は好きな幼馴染に彼女ができたと振られ、失望のドン底に落とされていたらしい。
ダサ男でモテない俺からしてみれば、こんな可愛い子をキープして、どこのラノベの主人公だと僻んだほどだ。
大きな黒目がちな瞳に長いまつ毛。整った小顔に柔らかい身体付き。大きくもないが触り心地のいいCカップの胸元とか、全部が理想的で、ジッと見つめられると緊張のあまりに心臓が止まりそうになるから困って仕方がなかった。
「千華さん、あの……俺、漫画を読んでるんだけど」
「うん、知ってる。でも私は甘えたくて」
甘えてくるのは大いに構わないのだが、問題は甘え方だ。
まるで猫のように股の間に潜り込んで、腰にしがみつかれて平気な男がいたら見てみたい。特に太ももの辺りに押し付けられた胸の谷間が目の毒だ。
いや、それだけではない。彼女の行動一つ一つがあざとくて心臓に悪い。
「崇さん、髪が伸びてきたね。また切ってあげようか?」
真っ直ぐに見つめるツリ目の猫目が挑発するように見上げてくる。思わず生唾を飲み込む甘えっぷりに、ふと
アイツは甘えるどころが、抱き合った記憶ですら皆無だったな。
(あぁ、永吉さん……寝取ってくれてありがとうございます! きっと俺から別れを告げることはできなかったから、今では感謝しかない)
どうせ俺なんてと自暴自棄気味だったけれど、千華さんと出逢ってからは少し自信が持てるようになった。
彼女に釣り合う男になりたいと、髪型やファッションなども全部一新した(というよりも、彼女に言われるがままに切られたのだが……)
ただ、こんな可愛い高嶺の花である彼女と俺が付き合えたのには一つの理由があった。
普通の人よりも空気が読めない不思議ちゃん。
回りから疎外されがちだった彼女は、中々親しい友達が出来なかったらしい。その為、俺のようなダサ男にも千華さんのような美少女と付き合うチャンスが巡ってきたのだ。
「……崇さん。明日は仕事、おやすみ?」
「明日は夜勤だから、夕方からだよ」
特別老人ホームに勤務している俺は、週に数日ほど夜勤のシフトが入る。
だが、彼女が知りたいのはそう言うことではない。
多少の夜更かしをしても、大丈夫か否か。
「……今日はエッチしてもいい?」
「きょ、今日は——」
思わず口籠もる。
彼女と付き合ってから半年経つが、週三、四のペースで行為を行なっている。
しかも濃い。いや、単に俺の前戯が長いだけかもしれないが、一回行うと相当な体力を消耗する。
——分かっている、贅沢な悩みだと言うことは。
たった一回の執拗な前戯を行ったせいで「ネチネチ執拗ムッツリ野郎」の称号を与えられた俺からしたら、女神のような存在なのだが。
人間とは不思議なものだ。
あまりにも幸せすぎると悪いことが起きるんじゃないかと不安になってしまうのだから。
「それじゃ、今日は一回だけにしよ?」
いつの間にか下半身を密着させるように跨がっていた千華さん。勝気に笑った唇が近付いて、そのまま貪るように求めてきた。
柔らかい唇、そして舌の感触が興奮を誘う。
こうなってしまったら、もう抗うことは無理だ。所詮、俺もエッチに好奇心旺盛な年頃なのだ。
大きめのTシャツを脱ぎ捨て、ブラジャー姿で腰をよがらせて盛る彼女を目前に、もう限界寸前だった。
肩に掛かっていたブラ紐を外して包んでいた胸元に露わにして、手の平一杯柔らかい感触を堪能した。そしてそのまま、溺れるように情事に更けていった。
「あー……俺って奴は、何でこう理性が持たないんだろう」
一通りの行為を済ませ、賢者タイムを迎えた俺は嘆きながら天井を仰いだ。
ヤッてしまったことに後悔はない。
ないのだが、あまりにもチョロ過ぎる自分が情けない。
「私はスゴく幸せだよ? だって崇さんのことが大好きだから」
俺も千華さんのことが大好きなので幸せでいっぱいです。
いや、そういうことじゃなくて……。
幸福量保存の法則ではないが、あまりにも幸せ過ぎると失った時の喪失感が大き過ぎて不安なのだ。
過去に元カノを寝取られた経験がある俺にとって、千華さんの存在は掛け替えがないと同時に不安要素でもあるのだ。
そして、こう言う時の悪い予感は大抵当たる——……。
人生とはそう言うものなのだ。
———……★
「だから幸せになりすぎないように気をつけないといけないけど……自重しないといけないけど(抗えない……!)」
「……? 変な崇さん」
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